〈料理本プレゼント〉春のイタリア~白アスパラとカラブリアのマンマを訪ねて

22年続くイタリア料理教室の絶賛レシピを集約した料理研究家・大島節子さんの『一生ものイタリアン』が発売されました。今回は発売を記念して3名様に本書をプレゼントいたします。
著者の大島さんが訪れた春のイタリア探訪記と合わせてご覧ください。

白アスパラを求めて

イタリアの5月は白アスパラが旬の時季。白アスパラで有名なバッサーノ・デル・グラッパに行ってみたい……そんな漠然とした計画を頭の中に描いたまま何年かが過ぎたある年の5月、チャンスは突然やってきた。
ヴェネツィアに行くたびにお世話になっているロベルタ先生にメールで、ホワイトアスパラの料理を習いたいことと、ヴァサーノ・デル・グラッパに行きたいと思っている旨を伝えて実現した。
イタリアに行くと毎回必ず市場に行ってみる。そして、その時季の旬を見つけるとなぜだかとても安心する。この季節のベネト州はやっぱりアスパラだった。


いよいよアスパラ料理&大切なお出汁!
ロベルタの家へ着くと一緒に夕飯の準備を始めた。大きなお鍋でアスパラを軟らかめにゆでて、20個以上の卵もゆでて、アンティパスト兼メイン料理として大皿に盛り付けた。
その後、リゾットを作ったのだけれど、その日私は、ロベルタを心底がっかりさせる失敗をしてしまったのである。台所に行き、洗い物をしながらふと無意識にアスパラのゆで汁を捨ててしまった。これが大失敗だったのである!!
このお湯は、アスパラのリゾットに使う出汁の役目をするお湯で、大切な出汁だったのである。そのことに気づいたロベルタは、怒りたいけど怒れないような、赤い顔になっているのに冷静になろうとしているような、そして少し悲しそうな顔をして、ヴァ・ベーネ(大丈夫だから)を繰り返し、蒼白になった私の顔を見てからは「ノンティプレオクパーレ(心配しなくていいから)」を繰り返した。このアクシデントがあってから、私はホワイトアスパラのゆで汁は、現在に至るまで絶対に捨てないようになった。
アンティパスト兼メイン料理として大皿に
ゆで卵をフォークで細かくつぶしてアスパラと
さて、いよいよセコンド(メイン)は、白アスパラとゆで卵がテーブルの真ん中に置かれた。各自、自分のお皿にアスパラとゆで卵を取り、ゆで卵をフォークで細かくつぶす。
ひたすら卵をつぶす単純作業は、童心にかえって、なぜか一体感が生まれて楽しい時間なのである。そして、卵とアスパラに、自分好みで塩と少しのビネガーとオリーブオイルを回しかけて絡めて頬張る。
この料理は量を少なくすればアンティパストとして、量を多くすればメインになる簡単で楽しく便利な郷土料理。この日はアンティパスト兼セコンド(メイン)となった。おいしいベネトのスプマンテをお供に。

バッサーノ・デル・グラッパで収穫見学
翌日、食後に飲む蒸留酒グラッパの産地としても有名なバッサーノ・デル・グラッパへローカル線で向かった。降り立った時、駅前は本当に何もないところで、知名度に比べて意外に感じ、大きなスーツケースを引いて、呆然と立ちすくんでしまったが、バールで甘いパンとカフェで元気を出してシニョーラに尋ねると、八百屋さんを紹介してくれ、さらにその紹介で市場の事務所の人が農家へ案内してくれた。
畑に着くとビニールシートで覆われた畝が見えた。収穫は、デリケートなホワイトアスパラを傷つけないように、こてのような形状をした専用器具で周りから少しずつ丁寧に堀っていく。土は粘土質ではなく、さらさらとしていた。ふっと白アスパラの穂先が現われた。周りから掘り起こしながらアスパラを引き上げて土の上にそっと置いた。一本ずつ丁寧に土の中からそっと引き上げるのだ。
収穫後はすぐに水に浸けて、汚れを落とし、鮮度を保つ。その後、束ねる道具を使って、しなやかな若柳の枝で縛る。その後、DOP(保護原産地呼称のこと)と認証されるために、組合工房へ行って登録商標のタグを付けてもらう。これには、重さ、色、形、長さ、香りを確認する品質チェックを受けて合格することが必要となる。これではれてバッサーノのアスパラと名乗ることができるのだ。
帰り際、チェントロ近くの眺めの良いトラットリアを見つけて、遅めの昼食。勿論、この時期にしかないバッサーノの白アスパラ料理を堪能した。白アスパラのほのかな香り、食感、バッサーノの空気を感じながら。ほんとうにおいしかった。

カラブリア州にて、クルスキを使った「ソラマメのミネストラ」

次の春旅は、2019年、教室20周年の記念にイタリアマンマの料理レッスンを組み込んだ教室旅行。以前、カラブリアへ一人研修旅行した際はンドゥイヤ、ロザマリーナなどの独特な食材に興味を持ったが、今回はクルスキという調味料の使い方を教わった。
クルスキは赤ピーマンを乾燥させたもので、細かく刻んだり挽いたりして調味料に使う。油で揚げてそのまま食べたりもする。カラブリア州に住む料理上手なアニータさんの話では、生まれる前から台所にあったと言っていた。日本では有名になっていないのが不思議なくらい、カラブリアにはなくてはならない調味料なのである。

クルスキとアニータさんと友人といっしょに
クルスキ×ソラマメ=ソラマメのミネストラ
日本のものと比べて小ぶりなソラマメをみんなで鞘から取り出し終わるとミネストラの材料がそろった。
まず自家製パンチェッタとタマネギを炒める。この時に忘れてならないのがクルスキ。一緒に炒めて香りが立ったところで野菜のブロード、ジャガイモ、小さなチューブという意味のトゥベッティという管状のショートパスタを入れ柔らかくなったらソラマメを入れて煮る。
カラブリアにある必須調味料「クルスキ」を使ったソラマメのミネストラは絶品だった。
クルスキが気に入って帰国してからも赤ピーマンを天日に干したり、オーブンで乾燥させたりして試作した。似たようなものができて、その後我が家の冷凍庫にも常備するようになった。
クルスキ用の赤ピーマン、左手前2つのパプリカは不向き
乾燥するとパリパリになる
天日乾燥は忙しい現代人には難しいが、オーブンを使えば、ドライトマトのように、手作りすることもできる。

22年続くイタリア料理教室の絶賛レシピ
『一生ものイタリアン』を3名様にプレゼント

『一生ものイタリアン』
大島節子(著)
主婦と生活社
本書は「おうちイタリアン」のおいしさ!手軽さ!保存性!を伝えるレシピ本です。おなじみのパスタはもちろん、イタリアレストランでよく食べるメニュー、お店やテレビで見たりして名前は知っているけれど家では作ったことがない、ややハードルが高いレシピ……などの人気イタリアンを、自分の得意料理=「一生ものレシピ」にできる料理本。
イタリアの食卓にならって、アンティパスト、プリモ、セコンド、ドルチェの順に85品。とことん「定番」にこだわった本場イタリアの作り方がわかるだけでなく、料理名の由来や食材選びのコツも学べる解説つきです。


■プレゼント応募概要■
プレゼント『一生ものイタリアン』 3名様
応募期間:~4月7日(金)
応募方法:以下「応募する」をクリック後フォームより
※当選者の方へは、応募締め切り後、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
締め切りました
提供:主婦と生活社