マンマのレシピ

マンマの紹介

  • マティルデ・サンティーニ(Matilde Santini)さんとエレナ・コンティ(Erena Conti )さん
  • トスカーナ州シエナ在住
  • 【得意料理】パテ・ディ・フェガト、トルタ・ジュリオ

お料理説明・背景

野菜のうま味をしっかり閉じ込めたおいしいこのレシピは、マティルデさんのおばあちゃんでエレナさんのお母さん、フィオレンツァさんから受け継いだものだ。時代は戦後間もない1950年代、インフラを整備する仕事をしていた旦那さんについてイタリア各地を回っていたフィオレンツァさん。女性が旅すること自体がまだ珍しかった頃、バイタリティ溢れる彼女は、長持に身の回りの道具を詰めて、軽やかに夫について回っていた。だいたい半年ごとの転勤で各地を移動する生活、しかもまだインフラが整っていないような僻地での仕事は大変なことも多かっただろう。しかしまだ若く新婚で子供もいなかった当時のフィオレンツァさんは、知らない土地で過ごす苦労よりも、新しい土地で知らないものに出会うことに知的好奇心をときめかせて過ごしていたようで、本当に楽しかったわと、後に娘のエレナさんにもよく話して聞かせてくれたのだそう。

エレナさんと孫のマティルデさんさて、北から南へとイタリア各地を巡った中で、彼女が最も気に入ったのがシチリア。美しい景色とおいしい食事に加え、何より、大らかで心温かいシチリアの人々の人柄が大好きになった理由だ。多くの友人ができたシチリアには、その後も何度も遊びに行ったりと、ずっと交流を保ち続けていたそうだ。シチリアでの楽しい生活の中で、おいしい郷土料理に出会うたび、友人にレシピを教わっていたというフィオレンツァさん。おいしいで済ませず、しっかり知ろうとする点が、今ジャーナリストをしている娘のエレナさんに通ずるものがあるように思うが、その時彼女が習得したレシピもエレナさんへ、そしてその娘のマティルデさんへとしっかり受け継がれている。

フィオレンツァさんが家族へと繋いだレシピの一つがこちらの野菜炒め。パレルモの親友から教わったカポナータ(シチリアの野菜炒め)がベースとなっているが、大きな違いが一つ、それはナスを揚げないこと。油を多く使うシチリア料理は、夏の暑いシチリアには体力を補うためにぴったりでも、やっぱり重くて食べずらいからと、フィオレンツァさんが出身地であるトスカーナ流に改良したレシピだ。揚げるのではなく、ナスを先に炒めることで、火の通り具合が違う他の野菜とのバランスを取りつつ、ナスに油を吸わせない分、他の野菜のうま味がしっかりとしみ込むのだ。

ミスター・チップスまた、野菜を均等に小さめに切ることで、それぞれの食材の味が一つにまとまっておいしくなるとおばあちゃんからコツを教わったのだけど、切るのがちょっと大変だったのと孫のマティルデさん。『ミスター・チップス』を使うとナスもセロリも均等の大きさで、さいの目にあっという間に切れて便利だと、サクサクと野菜を切っていく。作ってすぐもおいしいけど、翌日はさらに味がなじんでおいしいのよ、とエレナさん。また、パスタに具として和えたり、メイン料理のソース代わりに付け合わせたりとアレンジもできて便利だと教えてくれた。

ただの野菜炒めと侮ることなかれ、フィオレンツァさんの細やかな工夫が光るこのレシピは、野菜を最高においしい一皿へと昇格させる。

レポート:藤原 亮子(Ryoko Fujiwara)
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。

材料

フィオレンツァおばあちゃんの野菜炒め (4人分)

・ナス500~600g
・セロリ400g
・タマネギ中2個
・ミニトマト500g
・オリーヴ・ヴェルデ200g種を抜いた緑のオリーヴ
・カッペリ大2
・バジル12~13枚
・松の実大2
・オリーヴオイル適量
・塩適量
【ソース】適量
・濃縮トマトペースト40g
・きび糖大1
・白ワインビネガー60ml

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作り方

下ごしらえ

  1. 松の実をフライパンでほんのり色づくまで乾煎りしておく。(写真a 参照)
  2. ソースの材料を混ぜ合わせておく。

作り方

  1. ナスをミスター・チップスでさいの目に切る。(写真b 参照)
  2. フライパンにオリーヴオイルを入れ、ナスを中火で炒める。(写真c 参照)
  3. ナスに火が通ったら、別容器に取り出しておく。(写真d 参照)
  4. タマネギをみじん切りに、セロリをミスター・チップスでさいの目に切る。(写真e 参照)
  5. フライパンにオリーヴオイルを入れ、タマネギを炒める。(写真f 参照)
  6. タマネギがしんなりしてきたらセロリを加え混ぜ合わせ、弱火に落とし、蓋をして5分ほど火を通す。(写真g 参照)
  7. ミニトマトを四つ切りにカットし、6に加える。(写真h 参照)
  8. 続けて、カッペリ、オリーヴ、松の実、それからバジルを手でちぎりながら6に加え、3のナスも加え中火で炒め合わせる。(写真i,j,k 参照)
  9. 8にソースを混ぜ合わせ、塩を振って味を整える。(写真l 参照)
  10. 蓋をして弱火で約10分ほど火を通したら、皿に移し粗熱をとる。(写真m,n 参照)
  • a. 松の実を乾煎りする
  • b. ナスをさいの目に切る
  • c. ナスを炒める
  • d. 別の容器に取り出しておく
  • e. タマネギ、セロリを切る
  • f. タマネギを炒める
  • g. セロリを加え蓋をして火を通す
  • h. ミニトマトをカットして加える
  • i. カッペリ、オリーヴを加える
  • j. バジルをちぎりながら加える
  • k. ナスを加え炒める
  • l. 混ぜ合わせたソースを加える
  • m. 蓋をして弱火で10分ほど火を通す
  • n. 皿に移して粗熱をとる

お料理ポイント

松の実は乾煎りすることで実から油分が出て、風味が増すので大切な行程。少し色づいてツヤが出てきたら煎り上がりのサイン。セロリは火を通すことで甘みが出るので、甘いほうが好みであれば増やすといい。バジルは手でちぎったほうが香りがよく出るので、炒め合わせる直前に手でちぎって加えるとよい。