お料理説明・背景
オルティーカ(イラクサ)はイタリア全土の野原に生育している野草で、古代ローマ人の時代から食用されていたそうだが、今のイタリアではそれほど一般的な食品ではない。春には市場で見かけたり、ゆでたものをキューブ型にして冷凍したものが店や通販で売られていることもあるが、どこにでもあるわけではなく、どちらかというとニッチーな食材だ。
だが、鉄分やビタミンを豊富に含んでいることから栄養価の面でも、また野生のものが多く生息していることから食糧不足対策の面からも、最近では健康志向派や環境派の人たちを中心に再び話題になり始めている。さらに、一般的ではない食材ゆえに、常に珍しい食材を探す一流シェフたちの間でも注目が集まっているのだとか。
そんなオルティーカだが、ハーブに詳しく、野生の草や花をよく料理に使っていた母の影響で、ミカエラは小さいときからよく食べていたと言う。そして母と一緒に彼女も小さい頃からオルティーカ摘みに出かけていたのだとか。ファッションデザイナー兼テーラーとして活躍しているミカエラは、料理においても自分で手作りするのが大好き。生活の拠点はミラノだが、週末には田舎に食材探しに行くこともよくある。
「オルティーカは生命力の強い野草なので、田舎に行けば至る所に生えているわよ。でもゆでると量が減ってしまうから、かなりの量を採らないとダメだけど。素手で触るとかぶれるから、採集する時は必ず手袋をするのをお忘れなく」とミカエラ。毎年春にはオルティーカ摘みに出かけるが、採れる時期は限られているので、一度にたくさん採っておいて、ゆでて小分けにして冷凍しておくのだそうだ。「味はちょっと苦みがある程度であまりくせはなく、ホウレンソウの味を濃くしたような感じ。私は新鮮な葉はフライに、ゆでて冷凍保存したものはリゾットやラビオリの具として使っているわ」。
その中でも今日はリゾットをご紹介。手袋をして扱わねばならないオルティーカの下準備はちょっと面倒だが、それさえやってしまえばあとは簡単。米をオリーヴオイルでじっくり炒めてからワインを加え、バター、オルティーカと合わせた後、ブイヨンを少しずつ入れながら米が水分を吸うまで煮て、最後にパルミジャーノを入れる。お皿に盛ってからレモンの皮を擦ったものをリゾットに添えて香り付けするのがミカエラ流。シンプルな料理に、ちょっとした彩りやひねりを加えることで味も見た目も引き立たせるところに、イタリア人らしい小さなクリエーションが見える。
大学卒業後、雑誌編集者として活動後、イタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、カルチャー、食、旅、デザイン&インテリアなどの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。 TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントのオーガナイズやPR、企業カタログ作成やプレスリリースの翻訳なども行う。料理学校を経営していた母のもとで学んだ経験を活かし、ミラノの料理学校で講師としても活動中。 Instagram(@mikitanaka0909)
作り方
下ごしらえ
- オルティーカは柔らかい葉だけを選んで、丁寧に洗う。塩を入れて沸騰した湯に入れて15分間ゆでる。(写真a 参照)
*新鮮なオルティーカが採れる時期は生で使用。みじん切りして、エシャロットと一緒に炒める。