世界トップクラスのピッツァ職人が集まるカプートカップ 3年ぶりの開催! Presented by モンテ物産

日本から出場した唯一のピッツァ職人に密着レポート

ピッツァの聖地と言われるナポリでは、イタリアでも最大級のピッツァイベントPizza Villageが開かれる。
ナポリ民謡で有名な「サンタ・ルチア」港の西側にあるルンゴマーレ地区、ビーチに面して約500mに渡って50もの地元の有名なピッツェリアが出店を構えるもので、イタリア中が楽しみにしているイベントだ。その中の目玉の一つに、世界一のピッツァ職人を決める大会、“カプートカップ”がある。

カプートとはナポリを代表する小麦粉メーカーで、ナポリでは知らない人はいない。ピッツァだけでなくナポリを代表するババというお菓子の材料にもカプートの小麦粉は広く使われており、地元とのつながりの深いメーカーだ。そのカプート社が主催するピッツァの大会“カプートカップ”。コロナの影響で2019年を最後に2年間開催されていなかったが、今年の6月についにナポリに戻ってきた。

会場入り口
6月20、21日に開催された第19回大会は12部門で選手たちが競い合った。中でも注目を集める部門には、伝統的なマリナーラ・マルゲリータで競う【STG部門】、季節の食材を使用したピッツァの【スタジオーネ部門】、コルニチョーネと呼ばれる耳が特に高い現代風のピッツァ【ピッツァ・コンテンポラーネア部門】、さらには生地の早伸ばしや大きさを競う【アクロバット部門】などがある。それぞれの部門ごとに使用するピザ窯が決まっていて、全選手同じ窯、同じ条件で競う。ピッツァの出来はもちろんだが、道具の使い方やその後の片付けまでが審査対象となる。

ピッツァ・コンテンポラーネア 耳の部分に空気がたくさん入っていて高さがある。食感も口どけも軽いのが特徴

通常は会場には入れないが、特別に通訳として選手に同行した筆者目線で大会当日の様子をお届けしたい。

例年と違い出場者には、人数制限の上、事前申し込みに加え、当日にも本申し込みという流れ。受付開始の午前11時前にはすでに何名かのピッツァイオーロ(ピッツァ職人)の姿が。緊張しているかと思いきや、にこやかな雰囲気。一向に進まない受付にもイライラすることなく電話をしたり、友達と談笑したり。中には「今年は日本人少なくない?」と話しかけてくるイタリア人も。それもそのはず、例年は日本から選手団として30名近い参加者が集まるのだが、コロナ禍の今年はたった1人。唯一の参加者となった岐阜県の「ピッツェリア・スパーダ」の白木さんはSTG部門とスタジオーネ部門の2つの種目にエントリー。スタジオーネ部門では、まさかのトップバッター。念入りに開始時間を確認して会場を後にした。

競技前に窯の準備をする審査員
無事に受付も済んだところで、いざ本番に向けての最終準備に入る。まずは、ホテルに戻って正装に着替える。(正装って何、って思った方もいると思うが、ナポリのピッツァイオーロの正装はちゃんと決まっている。)ナポリのピッツァイオーロと言ったら白いパンツ、前掛け、首にはスカーフを巻いて帽子をかぶるのが正装。バシッと戦闘服に身を包みいざ決戦の場に臨む。

2時の開始時間の20分前に会場に着いたらすでに人だかり。まさかと思い会場裏の準備室に入るとせわしなく動く人の気配。大会関係者に聞いたところ、「2時からの予定だったけど、少し早めて開始したのよ。」と涼しい顔。遅れることはあっても早まることはないイタリアでまさかの前倒し。一気に血の気が引いたのは言うまでもない。事情を説明してどうにかならないかと聞くと「全然大丈夫だから、準備ができたら教えてね。」と、ほっとしたのもつかの間、会場からは「白木はいないのか?どこだ?」と叫ぶアナウンスが。バタバタと用意をして会場に向かう。

審査委員には、真剣な面持ちのピッツァ職人がずらりと並ぶ。「それでは始めてください。」審査員の声掛けで競技開始。STG部門のマルゲリータとスタジオーネ部門のピッツァを2枚連続で審査されることになった。白木さんがマルゲリータを運んできたら審査員はするどい眼光で、まずは裏面の焼き色をチェック。にやりと笑った後にぼそっと「ばっちりだね!!」とこぼす。思わずガッツポーズをしようかと思うくらいテンションが上がる。質問は「どこの国から来たの?」、「日本です」と答えて終了。さきほどのつぶやきは何だったのかと思わずにはいられないがそんな暇はない、通訳の私としては、もっと白木さんの事を聞いてほしい!と心の底では思ったが、競技の邪魔にならないようにグッとこらえる。

続いて、スタジオーネ部門のピッツァに取り掛かる。白木さんが選んだ季節の食材は「花ズッキーニ」。リコッタチーズを下地にグリルしたズッキーニを並べ、花ズッキーニを散らし、燻製したモッツァレッラとパンチェッタをのせる。焼き上げた後、最後の仕上げにペコリーノチーズとソレント産のレモンの皮をすりおろして完成。あまりの彩の鮮やかさに会場のインタビュアーも飛んできて「こちらのピッツァの具材は??」と質問。答えるとニコっと微笑みかけていた。その間、審査員たちはピッツァの裏面の焼き色をチェックしている。驚いた様子でぼそっと一言「Preciso」。日本語に訳せば「全く一緒だ」とでもいう感じだろうか。おそらく1枚目のSTG部門のマルゲリータと比較して両方とも焼き色が正確にそして均一に入っていたのだろう。本場のピッツァイオーロがこんな感嘆の声を上げるなんて日本のピッツァイオーロのレベルは本当に高いのだと改めて実感。

焼き上げたピッツァを審査委員席に運ぶ白木さん
白木さんが競技を終え、一緒にバックヤードに退去。「お疲れ様でした!!」と、とりあえず水で乾杯。後は片づけをして夜8時ごろの予定の表彰式で発表される結果を待つのみ。今年は二日間で延べ300人の競技者がいたそうだ。自分の出番が終わったピッツァイオーロたちは他の競技者の実技を見たり、海を眺めながら煙草を吸ったり、はたまたビールを飲んだりと思い思いに表彰式を待つ。
最後の競技はアクロバット部門。ひときわ歓声が大きくなったので見に行くと、なんと14、15歳の子供が競技に参加していた。大人ほどのダイナミックさはなくても子供ならではの柔らかい体を活かしたアピールで大いに会場を沸かせていた。

さて、待ちに待った表彰式。会場の周りには緊張の面持ちの参加者たち。まずはアクロバット部門から発表。入賞者の名前が順々に呼ばれて、その都度歓喜の声が響き渡る。アクロバットの後はピッツァメトロ部門、その次はピッツァフリッタ部門といった感じで各部門の表彰が進む。いよいよスタジオーネ部門。「Secondo premio , KEN SHIRAKI(2位は白木健)!」のアナウンス。感激してうまくできなかったが、ハイタッチ!!トロフィーを片手に男泣きの白木さん。笑顔が素敵だ。

スタジオーネ部門の表彰台 (左)男泣きの白木さん(右)
今話題のピッツァ・コンテンポラーネア部門では、昨年惜しくも2位だったPizzeria Vincenzo Capuanoのヴィンチェンツォ・カプアーノ氏が優勝。実は、今回、白木さんに生地練りの場所を提供してくれたのが彼。お互いの栄光を讃えあって一緒にパチリ。各部門の発表が終わり表彰者全員で記念撮影をして、お祝いのケーキをみんなでほおばり今日一番の笑顔があふれた。最後には大会の主催者でもあるカプート社のアンティモ社長と記念撮影。「来年には日本選手団みんなで来てくれよな。楽しみにしてるよ!!」とうれしい一言。
白木さんとカプア―ノさん
白木さんとカプート社のアンティモ社長
例年に比べれば小規模での開催にはなったが、今からもう来年の開催を楽しみにしているイタリア人たち。「来年は節目になる第20回大会。歴代のチャンピオンを招集して大規模な大会にしたいです!!」との主催者の声。今年はコロナの影響で実施されなかったが、例年は観客席で競技を見ながらピッツァの試食ができるそう。さらには、来年は日本からの参加者も通年に戻り30人を超える日本選手団の参加も期待できるだろう。Pizza Villageはコロナ前の2019年には、10日間で100万人を超える来場者があり、13万枚をこえるピッツァが消費されたイベントだ。イタリア旅行に来る時にピッツァの大会を見よう、なんてことは考えもしなかったと思うが、この時期のナポリでしか味わえないこの興奮だと実感した。世界最大級のピッツァイベントを楽しみにしながら、日本選手団を応援する。これ以上に熱い夏ってあるだろうか。来年の夏はぜひナポリのカプートカップに来てみてはどうだろうか。

モンテ物産
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