お料理説明・背景
イタリアでは、野菜や果物の「旬」が他のどこよりも尊重されている印象を受けるが、アスパラガスほど旬を感じる野菜はないだろう。春、暖かくなる頃に現れて、2か月もしないうちにいなくなってしまう。
ヴェネト州にはアスパラガスの産地が点在していてヴェローナも例外ではなく、アディジェ川に沿ってアスパラガスの畑が広がり、生産者が連なっている。この一帯の土壌が砂であり、さらっとしていてアスパラガスの栽培に適しているそうだ。
4月にも入ると生産者たちは直売の看板を掲げ、時季の訪れを知らせてくれる。5月中旬を過ぎると終わりを迎えることは、ここの住民の誰もが知っていて、皆「今しかない!」と何度もリピートせずにはいられない。
アスパラガスというと日本では緑色が馴染み深いが、この度紹介するレシピは甘みの強いホワイトアスパラを使用。実は両者の違いは品種ではなく栽培方法にあるというのをご存知だろうか。ホワイトアスパラの畑には常に黒いビニールシートが掛けられていて、つまり日光を当てずに育てられる。そうすることで、葉緑素が作られずに白いまま残るというわけだ。
シンプルに旬を味わうのが得意なイタリアの人たちは、ただホワイトアスパラを丸ごと柔らかくなるまでゆで、塩・コショウ、オリーヴオイルにグラナ・パダーノなどのチーズをたっぷり削りかけて食べる。ジュワッと甘みが口に広がり最高においしいのだが、これではレシピ紹介には物足りないので、今回はリナおすすめの絶品リゾットにしてみよう。 春になると秘密の場所へ野生のアスパラガスを摘みに行き、リゾットを作ってしまうリナにとって、アスパラガスのリゾットは定番だ。
「リゾット用には穂先に近いほうを使うのがおすすめ。」 とリナは言う。ゆでて食べるときには丸ごとのほうが見栄えもするし食べ応えもあるのだが、根元のほうは硬いためリゾット用には向いていないのだ。直売所では折れてしまった短めのアスパラガスのみを割安で買うこともでき、少しお得感もある。 「食材に捨てる部分なんてないのよ」と微笑むリナは、野菜出汁を取るのにアスパラガスの根元(通常、硬くて捨てる部分)も1cmほど切って入れる。また、太いホワイトアスパラは根元に向けて筋が硬くなり、食感が悪くて噛み切れないためピーラーなどで剥いて下処理をするのだが、その皮も出汁に使えるとのことだった。
「白い米にホワイトアスパラだと真っ白になってしまうから、お皿は色のあるものがいいわね。」盛り付け用に、何本か穂先を綺麗に取っておくことも忘れずに。甘みの詰まった白いリゾットで春の味覚を存分に楽しみたい。
週末や休暇を利用してアルト・アディジェ地方へ赴き、アルプスの麓町ヴィピテーノを拠点に、山登りやキャンプ、キノコ狩りなどのアウトドアを楽しむかたわら、フリーライターや日本語教師としても活動する。 東京のテレビ局で報道記者を務めていた2011年、オペラにはまって渡伊。カンパーニア州に1年留学の間、イタリア中を旅してその大自然や地域ごとに異なる文化、心豊かな暮らしに魅了される。数年後、イタリア人との結婚を機にヴェローナへと移住。 ガイドブックには載っていないような小さな町を巡り、ローカルな生活に浸るのが好き。インスタグラム(@yukino.it)で「旅と山の記録」を発信中。
作り方
下ごしらえ
- 野菜で出汁を取る。鍋に分量の水とタマネギ、セロリ、半分に切ったニンジンを入れて煮る。20分ほど経ったら塩で味を調える。リゾット調理中は火を止めずに、常に熱い状態を保つ。(写真a 参照)
- ホワイトアスパラの根元側の硬い部分をピーラーで剥いて筋を取っておく。(写真b 参照)
作り方
- ホワイトアスパラを輪切りにする。その際、綺麗なものを選んで、穂先を5cmほど残しておく。(写真c 参照)
- 鍋にオリーヴオイルを入れてバター(分量の半分)を溶かし、輪切りにしたホワイトアスパラを加えて中火で炒める。(写真d 参照)
- 10分後、ホワイトアスパラの穂先のほうも(2)の鍋に入れる。(写真e 参照)
- さらに白ワインと塩・コショウも加える。(写真f 参照)
- 10分ほどして水分が飛んできたら、出汁をお玉3すくい分ほど追加する。(写真g 参照)
- 5分後、穂先が柔らかくなったのをフォークなどで確認できたら、穂先のみお皿に取り出しておく。(写真h 参照)
- (5)の鍋に米を加えて混ぜ、出汁をひたひたに入れる。(写真i 参照)
- 米が出汁を吸って鍋の中の水分が減ってきたら、再び出汁を加える。この工程を3回ほど繰り返す。(写真j 参照)
- 米を入れてから18分後、残り半分のバターと削ったグラナ・パダーノも混ぜ、塩・コショウで味を調えれば出来上がり。(写真k 参照)