お料理説明・背景
クリスマス、年越し、そしてエピファニア(1月6日)が過ぎたイタリアでは、ツリーが撤去され、徐々にルミナリエも縮小し、キラキラムードが終わっていく。スーパーに行けば、パンドーロやパネットーネが安売りされ、真冬の寒い現実に引き戻されるような感覚が寂しくもある1月。かと思いきや、次に待っているのがカーニバル! ヨーロッパには、クリスマスとパスクアの間を埋める、にぎやかなお祭りが2月にもあるのだ。
名前は違うが、カーニバルの起源となる仮装イベントは紀元前から存在していたといい、貴族も奴隷も身分を隠して楽しめたそう。それをキリスト教がカーニバルとして移動祝日のパスクアと関連づけたため、それに合わせてカーニバルの日程も毎年変わるようになっている。パスクアの40日前(日曜を除く)の火曜日がカーニバル終了日となるよう設定され、その前の木曜日から6日間が最高潮の期間。今年はパスクアが4月17日なので、2月24日(木)~3月1日(火)がそれに当たる。
なお、日本語で「謝肉祭」と訳されるカーニバル。イタリア語でも「カルネヴァーレ」、と肉を意味する「カルネ」という言葉が含まれているように、「たらふく食べよう!」という期間にもなっている。カーニバル終了後の水曜日からキリストの復活するパスクアまでの1か月半、「肉断ち」をしていたキリスト教徒たちにとっては、対照的な期間なのだ。もっとも、今日では金曜日のみ肉を食べない食習慣が根付いている印象だ。
さて、イベントとしてはヴェネツィアのカーニバルが世界的に有名な一方、イタリア各地にもそれぞれに伝統的な行事が存在し、ヴェローナのそれも500年前から続いている。旧市街でパレードが行われる金曜日には、概ねコムーネ(自治体)ごとにチームとなり、有志たちによって造られた派手なフロート車の出来栄えが競われる。さらに、仮装した住民たちが行列をなして進んでいき、毎年市民から選出されるニョッキの王様が登場。その日のヴェローナの食卓はニョッキと決まっている。
そう、伝統行事があれば、伝統料理や伝統菓子が欠かせないイタリア。ヴェネツィアの「フリッテッレ」(写真)も人気だが、今回紹介する「ガラーニ」もその一つ。年明けにもなると、パスティッチェリアやスーパーの商品棚にどんどん並び始め、カーニバルへと向かっていく雰囲気が町中に漂い出す。
実は本来の名前は「キアッケレ」らしいのだが、ヴェネトでは「ガラーニ」として親しまれる他、ピエモンテは「ブジエ」、トスカーナは「チェンチ」、ウンブリアやラツィオは「フラッペ」と地域差はキリがない。しかしながら、形や大きさの違いはあれ、サクサクと軽く、食べ出したら止まらないのは同じだ。
多くの行事を言い訳に(?)食べ過ぎとなる真冬も終わり、パスクアまでのカウントダウンが始まると、いつのまにか春のポカポカ陽気が感じられてくる。「ガラーニ」はそんな春を待つお菓子でもある。
週末や休暇を利用してアルト・アディジェ地方へ赴き、アルプスの麓町ヴィピテーノを拠点に、山登りやキャンプ、キノコ狩りなどのアウトドアを楽しむかたわら、フリーライターや日本語教師としても活動する。 東京のテレビ局で報道記者を務めていた2011年、オペラにはまって渡伊。カンパーニア州に1年留学の間、イタリア中を旅してその大自然や地域ごとに異なる文化、心豊かな暮らしに魅了される。数年後、イタリア人との結婚を機にヴェローナへと移住。 ガイドブックには載っていないような小さな町を巡り、ローカルな生活に浸るのが好き。インスタグラム(@yukino.it)で「旅と山の記録」を発信中。
作り方
- ボウルに小麦粉と卵を入れて混ぜ始め、牛乳とグラッパをゆっくり流し入れながら、混ぜ続ける。(写真a 参照)
- 溶かしたバターを少量残して加え、さらに塩も入れて混ぜ続ける。(写真b 参照)
- 細かくすりおろしたレモンの皮と砂糖も一緒に混ぜ合わせる。(写真c 参照)
- 生地がある程度まとまったらボウルから麺台の上に移し、適宜、小麦粉をまぶしながら手でこねる。(写真d 参照)
- 生地がしっかりと一塊になったら、半分に切って2つに分ける。(写真e 参照)
- 小麦粉をまぶしながら生地をそれぞれ麺棒で伸ばす。このとき、少し伸ばしたら、麺棒に生地を巻き付けて90度方向を変え、また麺棒で丁寧に伸ばしていく。この手順を繰り返す。(写真f 参照)
- 2つの生地をだいたい同じ大きさ(30cmほど)にし、片方にバターを塗って、そのバター面の上にもう1つの生地を重ね合わせる。(写真g,h 参照)
- ⑥の要領で、⑦の生地をどんどん伸ばしていき、生地の下に手を入れて透き通るほどに薄くする。(写真i,j,k 参照)
- ギザギザのパスタカッターを用い、生地を適当なひし形に切る。その際、布を下に敷いて、台が傷まないようにする。(ひし形の真ん中に切れ目を入れると揚げたときに膨らみやすいが、この工程は省いても良い)。(写真l,m 参照)
- 揚げ油を熱し、その中にカットした生地を1つ、試しに落としてみる。浮き上がってきたら、準備完了。(写真n 参照)
- 生地を2分ほど、少し茶色に色づく程度に揚げていく。(写真o 参照)
- 揚がったら、できるだけ油を切ってキッチンペーパーの上に載せ、すぐに粉糖をかける。(写真p 参照)