お祝いは「レチョート」で♪紀元前から続く赤の極上デザートワイン
もうすぐクリスマス、ということで町中はキラキラ。多くの人で賑わっている。
しかしながら、コロナウイルスの新たな変異株や感染者数増加を受けて、イタリアでも徐々に規制が強化されている。これからクリスマスにお正月、とホリデーが続くが、おうちで過ごす時間がまた長くなりそうな予感だ。
そうなれば、ワインをしっかり貯えておくのがイタリア流。おうちパーティに備えて、赤ワインの名産地、ヴェローナのヴァルポリチェッラに買い出しに出かけることにした。
一面がブドウ畑となっているこの丘には、大手から小規模まで実に300以上のワイナリーがひしめき合っているが、今回お邪魔したのはヴァルポリチェッラの中でもクラシコと認定されるネグラールの小さな家族経営ワイナリー「フランキーニ」
(商業用にヴァルポリチェッラと呼べる範囲が広げられたため、元祖の地域はクラシコという言葉で区別されている。)
彼らの畑は標高250m~500mの丘の上にあり、水はけの良い好条件の立地で育つブドウが自慢だ。
本誌11月号のコラムでも紹介したように、一部の畑の奥底には古代ローマ邸宅のモザイク床が眠っており、国による発掘調査が始まったばかり。
小さな頃から祖父がブドウを育てるのを見てきたオーナーのジュリアーノは、別の道に進むも、ノスタルジーを感じてブドウの栽培を再開し、最高のワイン造りに励んできた。
ワイナリーとしてのオープンは2008年と新しいが、先祖代々が受け継いできた生業でもあるのだ。
1460年に建てられたこの家には貴重な氷室も残っていて見応えがある。
冬の間に降った雪を保管しておくことで、夏でもひんやり、食糧貯蔵庫として最適だったという小さな地下室は、今やヴィンテージワインの保管庫となっていて上から見ると幻想的なデザインに。
ロゴはここから作られた。
フランキーニのワインは「全て自分たちの目の届く範囲で行いたい」というポリシーの下、年間生産本数はたったの2万5000本と少なく、スーパーなどにも流通していない。
時に十数種類もの品種のブドウを混ぜ合わせ、丁寧に造られる彼らのワインは香り豊かで味わい深く、我が家のお気に入り。
ボトルをまるごと紙で包むユニークなパッケージは、ジュリアーノの祖父が自家用ワインを造っていた時代に新聞紙でくるんでいた伝統を受け継いでいて、光や埃、湿気から守るという実用的な役割もあるらしい。
さて、このヴァルポリチェッラ。格付け最高ランクDOCG(統制保証付原産地呼称)を誇る赤ワイン「アマローネ」の産地としてご存じの方も多いだろう。度数14~16%と強めで、濃ゆいガーネット色が美しい高級ワインである。
アマローネ造りの最大の特徴は、この地域でのみ栽培される土着品種、コルヴィーナやロンディネッラなどのブドウを陰干しし、水分を落とすことでブドウの糖度を凝縮させるアパッシメント製法。この独特の過程を踏まないと、11%程度の軽いワインしかできないそうだ。
昔は吊るして干していたようだが、今では風通しの良い木箱に寝かせるのが主流で、カビが生えないよう毎日のケアが欠かせない。
また、樽熟成が3年以上と長く、ボトリング後にも最低1年は寝かせるという。アマローネとして認められるには、月日のかかるワインなのである。
今でこそヴァルポリチェッラの代名詞のような存在となったアマローネだが、実は造られ始めたのは1930年代、とその歴史は浅い。
ここで疑問が湧く。その前はどんなワインを造っていたのか。
その答えが「レチョート」(Recioto della Valpolicella DOCG)である。上品でまろやかな甘さが際立つ赤のデザートワインで、このヴァルポリチェッラでは、古代ローマ、いや、そのもっともっと前、少なくとも2500年前にはすでに造られていたと言われる歴史的なワインだ。今日においては赤のデザートワインは大変珍しく、あまり知られた存在ではないが、当時のワインと言えば甘口が一般的であった。甘みが足りないときには高価だったハチミツを加えて調整することもあり、高貴な人しか飲めなかったのだとか。
数々の賞を受賞しているフランキーニのレチョート造りでは伝統製法を守り、熟成に樽を使用しない(ワイン造りに樽が使われるようになったのは2世紀。それよりもはるか昔からレチョートは存在していたわけだ。)
食後に楽しむようなデザートワインながら「生魚とも合う」というのがフランキーニからの提案だが、日本の料理人さんからは「テリヤキなどと合わせてみたい」との意見も。ともあれ、度数も12%と低く樽のにおいもないので、赤ワインが強くて渋くて苦手、という人にもぜひ試してもらいたい逸品だ。誕生日や結婚記念日など特別な食事会やクリスマス、贈答用にも向いている。
極上の赤ワインだけに少々値が張るのは悩ましいが、もう少し気軽にこれらのワイン風味を楽しむ方法がヴァルポリチェッラにはある。それが、これまたこの地域特有の「リパッソ」。アマローネとレチョート用に陰干ししたブドウを圧搾した後、そのブドウの搾りかすを他の土着品種ワインと混ぜ合わせて熟成させる製法で、アマローネの風味を感じられる上、比較的お手頃価格なのが嬉しく人気がある。
逆にアマローネでも物足りない!なんて方にはこちら。最高品質のブドウが収穫できた年のみ造られるという、貴重な隠れワインがフランキーニには存在する。このワイン、今年は古代ローマのモザイク床発掘にあやかって、インぺリウム(帝国)と名付けられた。
リパッソにアマローネにレチョートに…
おうちパーティ&クリスマスプレゼント用のワインはこれで仕入れ完了。
来年こそは、コロナウイルスを気にすることなく過ごせる日々が戻ることを願いたい。
Un ringraziamento a
Franchini Agricola
Via Rita Rosani, 18 Località Forlago 1
37024 Negrar di Valpolicella (Verona)
https://www.franchinivini.com/ita/
しかしながら、コロナウイルスの新たな変異株や感染者数増加を受けて、イタリアでも徐々に規制が強化されている。これからクリスマスにお正月、とホリデーが続くが、おうちで過ごす時間がまた長くなりそうな予感だ。
そうなれば、ワインをしっかり貯えておくのがイタリア流。おうちパーティに備えて、赤ワインの名産地、ヴェローナのヴァルポリチェッラに買い出しに出かけることにした。
一面がブドウ畑となっているこの丘には、大手から小規模まで実に300以上のワイナリーがひしめき合っているが、今回お邪魔したのはヴァルポリチェッラの中でもクラシコと認定されるネグラールの小さな家族経営ワイナリー「フランキーニ」
(商業用にヴァルポリチェッラと呼べる範囲が広げられたため、元祖の地域はクラシコという言葉で区別されている。)
彼らの畑は標高250m~500mの丘の上にあり、水はけの良い好条件の立地で育つブドウが自慢だ。
本誌11月号のコラムでも紹介したように、一部の畑の奥底には古代ローマ邸宅のモザイク床が眠っており、国による発掘調査が始まったばかり。
小さな頃から祖父がブドウを育てるのを見てきたオーナーのジュリアーノは、別の道に進むも、ノスタルジーを感じてブドウの栽培を再開し、最高のワイン造りに励んできた。
ワイナリーとしてのオープンは2008年と新しいが、先祖代々が受け継いできた生業でもあるのだ。
1460年に建てられたこの家には貴重な氷室も残っていて見応えがある。
冬の間に降った雪を保管しておくことで、夏でもひんやり、食糧貯蔵庫として最適だったという小さな地下室は、今やヴィンテージワインの保管庫となっていて上から見ると幻想的なデザインに。
ロゴはここから作られた。
フランキーニのワインは「全て自分たちの目の届く範囲で行いたい」というポリシーの下、年間生産本数はたったの2万5000本と少なく、スーパーなどにも流通していない。
時に十数種類もの品種のブドウを混ぜ合わせ、丁寧に造られる彼らのワインは香り豊かで味わい深く、我が家のお気に入り。
ボトルをまるごと紙で包むユニークなパッケージは、ジュリアーノの祖父が自家用ワインを造っていた時代に新聞紙でくるんでいた伝統を受け継いでいて、光や埃、湿気から守るという実用的な役割もあるらしい。
さて、このヴァルポリチェッラ。格付け最高ランクDOCG(統制保証付原産地呼称)を誇る赤ワイン「アマローネ」の産地としてご存じの方も多いだろう。度数14~16%と強めで、濃ゆいガーネット色が美しい高級ワインである。
アマローネ造りの最大の特徴は、この地域でのみ栽培される土着品種、コルヴィーナやロンディネッラなどのブドウを陰干しし、水分を落とすことでブドウの糖度を凝縮させるアパッシメント製法。この独特の過程を踏まないと、11%程度の軽いワインしかできないそうだ。
昔は吊るして干していたようだが、今では風通しの良い木箱に寝かせるのが主流で、カビが生えないよう毎日のケアが欠かせない。
また、樽熟成が3年以上と長く、ボトリング後にも最低1年は寝かせるという。アマローネとして認められるには、月日のかかるワインなのである。
今でこそヴァルポリチェッラの代名詞のような存在となったアマローネだが、実は造られ始めたのは1930年代、とその歴史は浅い。
ここで疑問が湧く。その前はどんなワインを造っていたのか。
その答えが「レチョート」(Recioto della Valpolicella DOCG)である。上品でまろやかな甘さが際立つ赤のデザートワインで、このヴァルポリチェッラでは、古代ローマ、いや、そのもっともっと前、少なくとも2500年前にはすでに造られていたと言われる歴史的なワインだ。今日においては赤のデザートワインは大変珍しく、あまり知られた存在ではないが、当時のワインと言えば甘口が一般的であった。甘みが足りないときには高価だったハチミツを加えて調整することもあり、高貴な人しか飲めなかったのだとか。
数々の賞を受賞しているフランキーニのレチョート造りでは伝統製法を守り、熟成に樽を使用しない(ワイン造りに樽が使われるようになったのは2世紀。それよりもはるか昔からレチョートは存在していたわけだ。)
食後に楽しむようなデザートワインながら「生魚とも合う」というのがフランキーニからの提案だが、日本の料理人さんからは「テリヤキなどと合わせてみたい」との意見も。ともあれ、度数も12%と低く樽のにおいもないので、赤ワインが強くて渋くて苦手、という人にもぜひ試してもらいたい逸品だ。誕生日や結婚記念日など特別な食事会やクリスマス、贈答用にも向いている。
極上の赤ワインだけに少々値が張るのは悩ましいが、もう少し気軽にこれらのワイン風味を楽しむ方法がヴァルポリチェッラにはある。それが、これまたこの地域特有の「リパッソ」。アマローネとレチョート用に陰干ししたブドウを圧搾した後、そのブドウの搾りかすを他の土着品種ワインと混ぜ合わせて熟成させる製法で、アマローネの風味を感じられる上、比較的お手頃価格なのが嬉しく人気がある。
逆にアマローネでも物足りない!なんて方にはこちら。最高品質のブドウが収穫できた年のみ造られるという、貴重な隠れワインがフランキーニには存在する。このワイン、今年は古代ローマのモザイク床発掘にあやかって、インぺリウム(帝国)と名付けられた。
リパッソにアマローネにレチョートに…
おうちパーティ&クリスマスプレゼント用のワインはこれで仕入れ完了。
来年こそは、コロナウイルスを気にすることなく過ごせる日々が戻ることを願いたい。
Un ringraziamento a
Franchini Agricola
Via Rita Rosani, 18 Località Forlago 1
37024 Negrar di Valpolicella (Verona)
https://www.franchinivini.com/ita/