『イタリア人の夜は長い…』
レストランでの夕食、
特に友人や親戚、家族と集まる『ここぞ』という機会の夕食は、とてもとても長い。
まず、アペリティーヴォに始まり、前菜からプリモ、セコンド、デザートと食事を楽しみ、エスプレッソで締める。ここまでで大体2時間くらいだが、日本でもこの程度の時間をかけてゆっくり楽しむ方はいるだろう。
イタリア人のおしゃべりが発揮されるのはここからだ。
お腹は十分満たされたが、食事の余韻に浸りながら、まだまだ友人や家族と話しを続けたい…
そんな場面に寄り添ってくれるのが食後酒である。
イタリアには実に多くの食後酒が存在する。特に代表的なものに、ワインを造るときに出たブドウの搾り滓を蒸留して造られる『グラッパ』や、南イタリアでよく飲まれる『リモンチェッロ』、甘口の『ヴィンサント』などがあるが、薬草を漬け込んだリキュール『アマーロ』も欠かせない。
アマーロとは、イタリア語で「苦い」を意味する。数種類以上の薬草をスピリッツに浸して造るのだが、製法や漬け込むハーブの種類・組み合わせによって、色合いも味わいのバランスも全くと言ってよいほど変わるところがおもしろい、イタリアを代表する食後酒のひとつだ。
今回は、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のグラッパメーカー、ノニーノ社が造る『アマーロ・ノニーノ』についてお話ししたい。
<ノニーノ社の歩み>
ノニーノ社は1897年創業の老舗の蒸留所。一種類のブドウ品種の搾り滓から造る「グラッパ・モノヴィティーニョ」をイタリアで初めて造ったことで知られているが、さらに、ブドウの搾り滓を原料に使うのではなく、ブドウをまるごと使って蒸留するアクアヴィーテを生み出したことでも有名だ。
(ノニーノ社の功績については2016年のVENTOで詳しくご紹介しているので、ぜひご一読いただきたい)
2016年12月VENTO グラッパの革命児 ノニーノ 前編
https://italiazuki.com/?p=19145
グラッパ界に偉業ともいえる革命を二度ももたらしたノニーノ社が、初めてアマーロを造ったのは1933年。
実はアマーロ造りの歴史も長いのだ。
3代目社長のアントニオ・ノニーノ氏が手がけた『アマーロ・カルニア』がノニーノ社の初代アマーロなのだが、それは、カルニアと呼ばれるフリウリ北東部の山のエリアから採取したハーブを、なんと、自社のグラッパに浸して造るというものだった。
グラッパの革命児らしく、アマーロ造りでもその個性を発揮したのだろう。
アントニオ氏は残念ながら、第二次世界大戦中の1943年に戦争で亡くなってしまうが、ノニーノ社のアマーロ造りは途絶えることなく、妻のシルヴィアによって引き継がれた。
当時、女性として初めて蒸留所を率いる立場となったシルヴィアが造る『アマーロ・ディ・フリウリ』は、新たにスパイスや植物の根を原料として加えた、より複雑な香りと味わいだったという。
<『アマーロ・ノニーノ』誕生>
そして、初代アマーロの誕生から60年ほど経った1992年、現当主である4代目ベニート&ジャンノーラ夫妻が造ったのが、現在の『アマーロ・ノニーノ』だ。
『アマーロ・ノニーノ』の特徴は、なんといっても、自社で造るアクアヴィーテ“ウーエ”を使用していること。
リムーザン、ネーヴェル産の小樽やシェリー樽で12ヵ月熟成された“ウーエ” をベースに、こだわり抜いたハーブを漬け込むことで、オレンジの皮やビターオレンジマーマレード、タイムやメンソールに、マンゴーなどエキゾチックさも感じられる複雑でエレガントな香りを出している。
そう、『アマーロ・ノニーノ』の味わいは“エレガント”。
アマーロというと、色も味も濃く、ボディが強めという印象をお持ちの方も多いと思うが、『アマーロ・ノニーノ』は透明感があり、味わいにも適度な抜け感があるのが特徴だ。甘さと苦みのバランスが絶妙で、複雑な香りの要素が、繊細に、重層的に感じられるといった印象だ。
<アマーロの楽しみ方>
フリウリのレストランで、『アマーロを…』と注文すると、メーカー名を聞かれることもなく、必ずと言っても良いほど、『アマーロ・ノニーノ』のロックにオレンジピールを添えたものが出てくる。
この地方でアマーロといえばノニーノなのだ。
地元での人気もさることながら、『アマーロ・ノニーノ』は、すでに世界70ヵ国に行き渡っており、中でも、アメリカでの販売が大きく、同社製品中、単品でNo.1の売り上げを誇るそうだ。
グラッパをも上回る人気の裏には、あるカクテルの誕生がきっかけになったという。
2007年にニューヨークの有名なバー「Milk&Honey」のバーテンダー、Mr.Sam Rossが発明したカクテルで、ビター、バーボン、フレッシュレモン果汁と『アマーロ・ノニーノ』を同率で割った、『ペーパープレーン(紙飛行機)』。というカクテルだ。
世界を飛び回っていたこのバーの常連客が、イタリアから『アマーロ・ノニーノ』を持ち込んだことをきっかけに考案されたと言われている。
ノニーノ社を訪問した際にも、ノニーノファミリー6世代目となる広報のフランチェスカさんが『ペーパープレーン』を作ってくれた。
バーボンと、『アマーロ・ノニーノ』に使用される12年熟成のアクアヴィーテ“ウーエ”の樽の香りと深い味わいに、爽やかなレモンの酸味がバランスよく合わさり、心地よい飲み口であった。
このように『アマーロ・ノニーノ』は食後酒としてストレートやロックで飲むだけでなく、様々なカクテルにしても楽しめる。
もうひとつ、ぜひとも試していただきたいカクテルをご紹介しよう。それは、『ジャンノーラ・スタイル』だ。
フランチェスカさんの祖母であり、現在のノニーノ社を経営する3姉妹のお母さん、ジャンノーラさんの名前が付いたこのカクテルは、5clのアマーロ・ノニーノにスライスしたオレンジ、スパークリングワインを加えるというシンプルなものだが、飲んでみると、とても気分を上げてくれる。
常にパワフルで元気なジャンノーラさんのイメージそのものだと感じた。
これまであまり薬草酒を飲んだことがない、なじみがない方にとっても、比較的トライしやすいのではないだろうか。
アクアヴィーテ由来の繊細な香りを存分に感じたい方はぜひストレートで、薬草酒に慣れない方はまずはカクテルで、『アマーロ・ノニーノ』を味わっていただきたい。
イタリアの食後酒文化に触れるきっかけになれば嬉しい限りである。
モンテ物産
http://www.montebussan.co.jp/
★ノニーノ社について詳しくはこちらから↓↓▼
https://www.montebussan.co.jp/wine/nonino.html
レストランでの夕食、
特に友人や親戚、家族と集まる『ここぞ』という機会の夕食は、とてもとても長い。
まず、アペリティーヴォに始まり、前菜からプリモ、セコンド、デザートと食事を楽しみ、エスプレッソで締める。ここまでで大体2時間くらいだが、日本でもこの程度の時間をかけてゆっくり楽しむ方はいるだろう。
イタリア人のおしゃべりが発揮されるのはここからだ。
お腹は十分満たされたが、食事の余韻に浸りながら、まだまだ友人や家族と話しを続けたい…
そんな場面に寄り添ってくれるのが食後酒である。
イタリアには実に多くの食後酒が存在する。特に代表的なものに、ワインを造るときに出たブドウの搾り滓を蒸留して造られる『グラッパ』や、南イタリアでよく飲まれる『リモンチェッロ』、甘口の『ヴィンサント』などがあるが、薬草を漬け込んだリキュール『アマーロ』も欠かせない。
アマーロとは、イタリア語で「苦い」を意味する。数種類以上の薬草をスピリッツに浸して造るのだが、製法や漬け込むハーブの種類・組み合わせによって、色合いも味わいのバランスも全くと言ってよいほど変わるところがおもしろい、イタリアを代表する食後酒のひとつだ。
今回は、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のグラッパメーカー、ノニーノ社が造る『アマーロ・ノニーノ』についてお話ししたい。
ノニーノ社は1897年創業の老舗の蒸留所。一種類のブドウ品種の搾り滓から造る「グラッパ・モノヴィティーニョ」をイタリアで初めて造ったことで知られているが、さらに、ブドウの搾り滓を原料に使うのではなく、ブドウをまるごと使って蒸留するアクアヴィーテを生み出したことでも有名だ。
(ノニーノ社の功績については2016年のVENTOで詳しくご紹介しているので、ぜひご一読いただきたい)
2016年12月VENTO グラッパの革命児 ノニーノ 前編
https://italiazuki.com/?p=19145
グラッパ界に偉業ともいえる革命を二度ももたらしたノニーノ社が、初めてアマーロを造ったのは1933年。
実はアマーロ造りの歴史も長いのだ。
3代目社長のアントニオ・ノニーノ氏が手がけた『アマーロ・カルニア』がノニーノ社の初代アマーロなのだが、それは、カルニアと呼ばれるフリウリ北東部の山のエリアから採取したハーブを、なんと、自社のグラッパに浸して造るというものだった。
グラッパの革命児らしく、アマーロ造りでもその個性を発揮したのだろう。
アントニオ氏は残念ながら、第二次世界大戦中の1943年に戦争で亡くなってしまうが、ノニーノ社のアマーロ造りは途絶えることなく、妻のシルヴィアによって引き継がれた。
当時、女性として初めて蒸留所を率いる立場となったシルヴィアが造る『アマーロ・ディ・フリウリ』は、新たにスパイスや植物の根を原料として加えた、より複雑な香りと味わいだったという。
そして、初代アマーロの誕生から60年ほど経った1992年、現当主である4代目ベニート&ジャンノーラ夫妻が造ったのが、現在の『アマーロ・ノニーノ』だ。
『アマーロ・ノニーノ』の特徴は、なんといっても、自社で造るアクアヴィーテ“ウーエ”を使用していること。
リムーザン、ネーヴェル産の小樽やシェリー樽で12ヵ月熟成された“ウーエ” をベースに、こだわり抜いたハーブを漬け込むことで、オレンジの皮やビターオレンジマーマレード、タイムやメンソールに、マンゴーなどエキゾチックさも感じられる複雑でエレガントな香りを出している。
そう、『アマーロ・ノニーノ』の味わいは“エレガント”。
アマーロというと、色も味も濃く、ボディが強めという印象をお持ちの方も多いと思うが、『アマーロ・ノニーノ』は透明感があり、味わいにも適度な抜け感があるのが特徴だ。甘さと苦みのバランスが絶妙で、複雑な香りの要素が、繊細に、重層的に感じられるといった印象だ。
フリウリのレストランで、『アマーロを…』と注文すると、メーカー名を聞かれることもなく、必ずと言っても良いほど、『アマーロ・ノニーノ』のロックにオレンジピールを添えたものが出てくる。
この地方でアマーロといえばノニーノなのだ。
グラッパをも上回る人気の裏には、あるカクテルの誕生がきっかけになったという。
2007年にニューヨークの有名なバー「Milk&Honey」のバーテンダー、Mr.Sam Rossが発明したカクテルで、ビター、バーボン、フレッシュレモン果汁と『アマーロ・ノニーノ』を同率で割った、『ペーパープレーン(紙飛行機)』。というカクテルだ。
世界を飛び回っていたこのバーの常連客が、イタリアから『アマーロ・ノニーノ』を持ち込んだことをきっかけに考案されたと言われている。
ノニーノ社を訪問した際にも、ノニーノファミリー6世代目となる広報のフランチェスカさんが『ペーパープレーン』を作ってくれた。
バーボンと、『アマーロ・ノニーノ』に使用される12年熟成のアクアヴィーテ“ウーエ”の樽の香りと深い味わいに、爽やかなレモンの酸味がバランスよく合わさり、心地よい飲み口であった。
このように『アマーロ・ノニーノ』は食後酒としてストレートやロックで飲むだけでなく、様々なカクテルにしても楽しめる。
もうひとつ、ぜひとも試していただきたいカクテルをご紹介しよう。それは、『ジャンノーラ・スタイル』だ。
フランチェスカさんの祖母であり、現在のノニーノ社を経営する3姉妹のお母さん、ジャンノーラさんの名前が付いたこのカクテルは、5clのアマーロ・ノニーノにスライスしたオレンジ、スパークリングワインを加えるというシンプルなものだが、飲んでみると、とても気分を上げてくれる。
常にパワフルで元気なジャンノーラさんのイメージそのものだと感じた。
これまであまり薬草酒を飲んだことがない、なじみがない方にとっても、比較的トライしやすいのではないだろうか。
アクアヴィーテ由来の繊細な香りを存分に感じたい方はぜひストレートで、薬草酒に慣れない方はまずはカクテルで、『アマーロ・ノニーノ』を味わっていただきたい。
イタリアの食後酒文化に触れるきっかけになれば嬉しい限りである。
http://www.montebussan.co.jp/
★ノニーノ社について詳しくはこちらから↓↓▼
https://www.montebussan.co.jp/wine/nonino.html