マンマのレシピ

マンマの紹介

  • リナ・シンベーニ(Lina Simbeni)さん
  • ヴェネト州ヴェローナ在住
  • 【得意料理】手打ちの生パスタ(タリアテッレ、トルテリーニ、ラザニアなど小麦粉から生地を作るのが好き)

お料理説明・背景

ピッツォッケリはロンバルディア州のパスタ。ではあるが、スイスと国境を接するアルプスの渓谷、ヴァルテッリーナの伝統料理で他の地域ではあまり見かけない。何と言っても、そば粉を使用するのが特徴的で、仕上がりも正にそばのようなグレーになる。山岳地帯で気温が低いこの土地はそばの栽培に適しているらしい。16世紀半ばに初めてイタリアでそばの栽培を始めた地だと記録に残っており、ピッツォッケリ以外にもラビオリやニョッキ、ポレンタにドルチェまで、そば粉を使うレシピが他地域よりも豊富である。
日本のように長く細いそば麺ではなく、平たく短く切って形作られるこのピッツォッケリは、何も付けずに味見するとやはり、そばの香りがお口に広がるが、バターやチーズを入れて仕上げればイタリアンな味わいとなるから面白い。

麺台にもなる特注テーブル遡ること30年以上前、リナが家族旅行でこの谷の山村グロージオを訪れたとき、初めて本場のピッツォッケリを食べて感動したのだそう。手打ちパスタが得意なリナでも、それまでこれは作ったことがなく、地元のマンマたちにレシピを聞いて回ったという。なんとも、昔ながらのイタリアらしく微笑ましい光景が目に浮かぶものだ。

麺台にもなる特注テーブルさて、そば粉と小麦粉をしっかりとこね合わせたら、リナは1mもの麺棒を両手に構え、素早い手つきでいとも簡単そうに生地を伸ばしていく。ある程度伸ばしたら、麺棒に生地をくるっと巻き付け、90度方向を変える。これを何度も何度も繰り返し、1㎜ほどの厚さになるまで綺麗に生地を伸ばす技は、まるで職人のように見事である。テーブルは特注品で、麺台としても使えるようにコーティングされたリナのお気に入りだ。

「自分なりの改良を加えていくうちにどこまでがオリジナルレシピかわからなくなっちゃったけど、それぞれのマンマの味があるのが当然よね。」とリナ。教わったレシピはもう手元にはないので、少しアレンジが効いているのもご愛嬌。

市場で売られるサボイキャベツとはいえ、ベースの具材には変わりない。特に定番として欠かせないのがちれぢれのサボイキャベツ。生でよく食べられる普通のキャベツと比べ、煮込んだり炒めたりするのに適し、火を通すことで甘みが増すサボイキャベツは、リナいわく「普通のキャベツとは全くの別物」サラダよりも付け合わせ向きの種類である。さらに重要なのがチーズ。ヴァルテッリーナ名産のカゼーラやビットという名のチーズがあればベストだが、別のチーズで代用する場合はしっかりとろける柔らかめのものを使用したい。
「サボイキャベツが出てくるとピッツォッケリを思い出して、無性に食べたくなるのよ」 サボイキャベツが旬を迎える秋から冬にピッタリのピッツォッケリ。少々、手間もかかるので、日曜日のランチや夕食会向きの一皿である。

レポート:新宅 裕子(Yuko Shintaku)
週末や休暇を利用してアルト・アディジェ地方へ赴き、アルプスの麓町ヴィピテーノを拠点に、山登りやキャンプ、キノコ狩りなどのアウトドアを楽しむかたわら、フリーライターや日本語教師としても活動する。 東京のテレビ局で報道記者を務めていた2011年、オペラにはまって渡伊。カンパーニア州に1年留学の間、イタリア中を旅してその大自然や地域ごとに異なる文化、心豊かな暮らしに魅了される。数年後、イタリア人との結婚を機にヴェローナへと移住。 ガイドブックには載っていないような小さな町を巡り、ローカルな生活に浸るのが好き。インスタグラム(@yukino.it)で「旅と山の記録」を発信中。

材料

ピッツォッケリ(4人分)

・そば粉300g
・小麦粉150g
・卵2個
・サボイキャベツ300g
・ジャガイモ300g
・ニンニク3~4片お好みで
・とろけるチーズ300gカゼーラ/ビットなど。とろける柔らかめのチーズで代用可
・グラナ・パダーノ100g
・有塩バター100g
・セージ10枚程度
・コショウ適量
・塩適量パスタの塩茹で用

作り方

  1. パスタを作る。ボウルにそば粉と小麦粉を入れ、卵も加えて混ぜ合わせる。(写真a 参照)
  2. 牛乳をゆっくり流し入れながら、混ぜ続ける。(写真b 参照)
  3. 生地が重くなってきたら、小麦粉を付けた手で5分間しっかりとこねる。(写真c,d 参照)
  4. 表面がなめらかになったら生地を丸めて布地をかぶせ20分ほど寝かせる。(写真e 参照)
  5. 生地を寝かせている間に他の具材を準備。ジャガイモは皮を剥いてサイコロ状に切り、サボイキャベツは粗い千切りにする。(写真f,g 参照)
  6. ニンニクは細かく切り、バターとセージを入れた小さな鍋でいためておく。(バターが薄茶色になるまで加熱する。)(写真h 参照)
  7. 寝かせておいた生地を、小麦粉をまぶしながら麺棒で薄く伸ばす。ある程度伸ばしたら、麺棒に生地を巻き付けて90度方向を変え、また麺棒で丁寧に伸ばしていく。厚さ1㎜ほどになるまで何度も繰り返す。(写真i 参照)
  8. ピザカッターを用い、パスタ生地を適度な大きさに切る。切ったらくっつかないように、少しずつ離しておく。(写真j 参照)
  9. 鍋にたっぷりの水と塩を適量入れ、サイコロ状に切ったジャガイモを茹で始め、その2分後にサボイキャベツの千切りも加えてさらに5分茹でる。(写真k 参照)
  10. さらにパスタも投入して茹で、6分後にザルに上げる。(写真l 参照)
  11. 大きなオーブン皿に野菜とパスタを敷き、コショウを適量振りかけたら、削った2種類のチーズを載せる。その上にまた茹でた野菜とパスタ、コショウ、チーズの順で重ねていき数層にする。(写真m 参照)
  12. 全部載せ終わったら、6のニンニク、バター、セージを上から回しかける。(写真n 参照)
  13. 180度に予熱したオーブンに入れ、10分後、チーズがとろけたら出来上がり。(写真o 参照)
  • a. ボウルに粉と卵を入れ混ぜる
  • b. 牛乳を流しいれながら混ぜる
  • c. 生地を手でまとめていく
  • d. 5分ほどしっかりこねる
  • e. 生地を丸めて20分ほど寝かす
  • f. ジャガイモをサイコロ状に切る
  • g. サボイキャベツを太めの千切りにする
  • h. ニンニク、バター、セージをいためる
  • i. 生地を1mmほどになるまで伸ばす
  • j. 生地を適度な大きさに切る
  • k. 野菜を順番に加えて茹でる
  • l. パスタも鍋に投入して茹でる
  • m. オーブン皿に何回かに分けて入れ、チーズとの層を作る
  • n. 最後にニンニク、バター、セージのソースを回しかける
  • o. 180度のオーブンで10分加熱する

お料理ポイント

生地を伸ばす際はくっついて破れないように細心の注意を払ってね。今回はオーブンに入れて仕上げたからパスタの茹で具合は若干硬めだったけれど、オーブンの工程は省いてもOK。その際は、パスタを1分ほど長く茹でて野菜と一緒にザルに上げ、鍋に戻してコショウやチーズ、ニンニク、バター、セージを混ぜ合わせて召し上がれ。