お料理説明・背景
今回は『イタリア好き』本誌vol.2プーリア特集にて取材に訪れたマンマのレシピをご紹介。
イタリアの踵(かかと)、プーリア州の州都バーリにも近く、深いブルーの海が印象的なポリニャーノ・ア・マーレという小さな港町。あの「ヴォラーレ」を歌った国民的歌手ドメニコ・モドューニョの出身地でもあり、日本人には宇多田ヒカルが挙式をした場所として知られたところだ。
吸い込まれそうな青い海は、厳しい審査基準の“バンディエラ・ブルー”の称号を与えられていて、飛び込みの大会も開かれる。取材の時(かれこれ10年前のことだが)には若い子供たちが高い岸壁からいとも簡単に海へ飛び込んでいて、とても気持ちよさそうだった。僕も気持ちは一緒に思い切って飛び込みたかったが、「水着だったらー」と言いながら、正直なところ尻込みしていた。
クレシェンツァさん(以下エンツァさん)は、この町に暮らし、週末は一族が集まり別荘での時間を楽しむという。エンツァさんや姉のルクレッツィアさんが腕をふるって、プーリアらしい料理を山ほどごちそうしてくれた。野菜を中心にたくさんの前菜が並ぶのもプーリアの食卓の特徴だ。野菜のグリルにズッキーニのトルタ、フィオーリ・ディ・ズッカのフライ、コッツェのオーブン焼きなどがテーブル一杯に並んだ。
庭では野菜や果実を育てている。毎年7月の終わりになると、家族総出でトマトを収穫して、約300kgのトマトを煮込んで1年分のトマトソースを作りストックしている。そのソースは家族の好物料理となっていつも食卓にあがるのだ。
今回はそのトマトソースを使った料理の中でもプーリアだけではなく南イタリア全般で食べられている「パルミジャーナ・ディ・メランザーネ」を紹介。この料理を語る時、なんでこの名前なのかが必ず話題になるが、諸説ありどれも真偽が定かではないので、ここではあまり多くを語らないでおこう。(説についてはマンマのレシピvol.18カンパーニア州のナスのパルミジャーナ(有料)の回で書かれているので、気になる方は読まれるべし) とにかく、ナスの季節になればナスの料理が毎日のように食卓に載る、その中でもポピュラーな料理がこれだ。
エンツァさんは、ナスに小麦粉と卵を絡ませて一度揚げ焼きしてから、それを重ねていくしっかり系。「家族の為に料理を作ることが自分の幸せ」と言うエンツァさん、幼い時に母親を亡くしたせいか私の味をしっかり子供や孫に伝えたい気持ちが強いのだと。材料はできるだけ、包丁やまな板を使わないで手でちぎって入れるようにしている。分量や味付けは、何度も繰り返し作るうちにいちばんいい味付けになって、それがマンマの味になると。家族好みの味付けは、マンマエンツァの愛情の証なのだ。
文:イタリア好き編集長 マッシモ 写真:萬田康文
材料
パルミジャーナ・ディ・メランザーネ(4人分)
・ナス | 4本 | |
---|---|---|
・トマトソース | 約200cc | |
・モッツァレラチーズ | 200g | お好みの量で調整 |
・モルタデッラハム | 100g | お好みの量で調整 |
・パルミジャーノ・レッジャーノ | 適量 | |
・卵 | 1個 | |
・小麦粉 | 適量 | |
・エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル | 適量 | |
・バジル | 2~3枚 |
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作り方
- マンマは自家製のトマトソースを使うが、代用として、濃縮トマトソースまたは水煮缶に塩を加え15~30分ほど煮込み、バジルの葉を加えて1分ほどしてから火を止めてソースを作っておく。
- ナスは皮をむいて、縦に3mm程度の厚さに切る。(写真a 参照)
- 2を小麦粉、卵の順で付ける。(写真b 参照)
- 3をフライパンに多めのエクストラ・ヴァージン・オリーヴオイルを入れて揚げるように焼く。(写真c 参照)
- 耐熱容器にトマトソースを引き、その上に3を並べ、モッツァレラチーズ、モルタデッラハムをナイフで千切るように適当な大きさに切りながら載せ、おろしたパルミジャーノ・レッジャーノを振る。これを3回繰り返す。(写真d 参照)
- 最後にトマトソースをかけ、おろしたパルミジャーノ・レッジャーノを振りかけたら、180℃に予熱したオーブンで約20分焼く。(温度、焼き時間はチーズの溶け具合、焦げ具合で調整してください)(写真e 参照)