お料理説明・背景
パスクアと呼ばれるイースターのある週の1週間で、イタリア人の消費する卵の量はなんと4億個にも及ぶそうです。イースターで食される卵料理といえば、ちょうどこの時期に旬を迎えるアスパラガスを使ったフリッタータ、シンプルにゆでる朝食用のゆで卵などいろいろありますが、やはり一際目をひくのは『パスクアの王冠』と呼ばれているものでしょう。
王冠の形をしたパン生地の中に、豪快に卵の殻ごと埋め込みながら焼き上げています。 イタリアに来た当初、初めて卵入りの王冠を目にした時にはその豪快さに本当に驚いたものです。使用する卵は、シンプルにそのまま埋め込んで焼き上げる場合もあれば、カラフルに色付けをするケースもあります。味も甘いものからケークサレのように塩気のあるものまでと、さまざまです。
アンナリータも、『パスクアの王冠』は復活祭に外せない必須メニューだと言います。でも彼女のレシピは卵なし! 敷地内にはたくさんの鶏を飼っているというのに、です。 「どんなに洗っても衛生的に気になってしまうのよ!」と笑いながら話していました。そんな彼女の王冠は、この時期に旬を迎えるグリーンピースとパンチェッタ、そしてタマネギで仕上げます。「味の決め手はやっぱりグリーンピースと隠し味のパルミジャーノ・レッジャーノ!」そう断言していたアンナリータさん。
イタリアのグリーンピースはとても肉厚なだけではなく、驚くような甘さを含みます。この甘さが、パンチェッタの塩気ととてもよいコントラストをなすのです。ゆっくりと発酵させたパン生地の中に、甘さたっぷりのグリーンピースとパンチェッタを詰め込みます。その後さらに生地を発酵させ、じっくりと焼き上げていくのです。
家中にえも言われぬよい香りが漂い、自然に家族が集まってきていました。 「いつもなら、パスクエッタの休日にこれを持ってピクニックに行くんだけどね」と少し残念そうな顔をしながら言っていたのは、アンナリータの長男フランチェスコ。今年も残念ながら、コロナウイルスによりピクニックもお預け。それでも食卓にこの一皿が上がっただけで、食前酒が進んでいたのは間違いないでしょう。
日系航空会社にて国際線CAを12年、その間2年程フィレンツェに料理留学したのを機に料理の世界に目覚める。イタリア料理以外にも懐石料理、ヴェトナム料理を学ぶ。2008年に渡伊。コルドンブ ルーでの非常勤講師を経て、自宅でイタリア家庭料理教室を主宰中。 野菜ソムリエ、現在はイタリアワインソムリエ取得中。 Instagram(@roma_italy_tsugumi)
作り方
- 生地を作る。大きなボウルに2種類の小麦粉、卵、牛乳、粉糖、ドライイーストを入れ混ぜ合わせる。(写真a 参照)
- 生地がまとまったら塩を加え、台の上に取り出し、生地の表面がすべすべの状態になるまでしっかりとこねる。(写真b 参照)
- ボウルの底にさっとオイルを塗り(分量外)、丸めた生地を入れたら、体積が2倍に膨らむまで2時間ほど発酵させる。(写真c 参照)
- 生地を発酵させている間にリピエーノを作る。タマネギを薄切りにする(写真d 参照)
- フライパンにオリーヴオイルを入れ、タマネギをいためる。半透明になったら、パンチェッタを加える。(写真e 参照)
- パンチェッタに火が通ったら、グリーンピースも加えて火が通るでまで適宜お湯を足しながら煮込む。塩・コショウで味を調えたらボウルに移す。(写真f 参照)
- 粗熱が取れたら、パルミジャーノ・レッジャーノを加え混ぜ合わせる。(写真g 参照)
- 一次発酵が終わったら、リピエーノを包んでいく。指先に小麦粉をつけ、ボウルの縁から指を入れながら生地を台の上に取り出す。(写真h 参照)
- 麺棒を使って5mmの厚さに伸ばし、20cm×40cmの長方形になるように形を整える。(写真i 参照)
- 細長い二等辺三角形が7つになるようにナイフで切る。(写真j 参照)
- 二等辺三角形の辺の長さが短い部分の端をそれぞれくっつけるようにしながら、円を描くように生地を形成する。(写真k 参照)
- リピエーノをまんべんなく載せる。(写真l 参照)
- タコの足のような先の部分を内側に折り込み、長すぎる場合はカットし、生地と生地の間の補正に使用しながらきれいな円になるように形成したら、つや出し用卵液をハケで生地の表面にまんべんなくぬる。(写真m 参照)
- 180度のオーブンで約30分、きれいな焼き色がつくまで焼く。途中、焼き色がつきすぎる場合は、アルミホイルでおおって焦げないようにしながら焼き上げる。