お料理説明・背景
イタリアのクリスマス菓子と言えば、ミラノのパネットーネやヴェローナのパンドーロが有名ですが、ジェノヴァではクリスマス菓子といえば「パンドルチェ・ジェノヴェーゼ」。クリスマスの食卓の最後を華やかに飾る存在で、ジェノヴァのクリスマスの隠れた主役、と言っても過言ではありません。
船旅での長期保存に適したお菓子だったと言われていて、日持ちがよいため観光客に人気のお土産で、市内では年中購入することが可能です。クリスマスが近づく11月中頃からは、販売数が一気にあがるため、お菓子屋さんやパン屋さんのショーケースに山のように積まれ始めます。店内では、「何日までに大きいサイズを3つお願いね」など、予約注文をする人々の声を耳にします。
12月に開かれるクリスマスマーケットでは、隣町の有名店のものや、変わり種の珍しいものが販売され、家に既に用意してあるにも関わらず、皆さんついつい何個も買ってしまうそうです。というのも、クリスマスから1月6日のベファーナの祭日までの長いクリスマス休暇中に、親戚や友人と集まってテーブルを囲む機会がたくさんあるので、日持ちのいいパンドルチェは幾つあっても重宝するそうです。
パンドルチェ・ジェノヴェーゼにはアルト(高い)とバッソ(低い)の2種類があります。アルトは発酵させるためふわふわで柔らかく、バッソはサクサクした食感です。味は同じで食感が異なり、人によってアルト派とバッソ派に好みが分かれます。ちなみにアルトは発酵の工程が必要なため作業時間が長くなります。短時間で簡単に出来て、失敗の少ないバッソを好んで作るマンマの方が多く見受けられます。今回マンマがご紹介するレシピも、このバッソとなります。
若い頃から友達や職場の同僚や常連さんたちと、レシピの交換をするのが楽しみだったイネスさん。毎年おいしいパンドルチェをお裾分けしてくれていた知り合いから作り方を教わったのだそう。お店で買ったパンドルチェもおいしいですが、手作りはとても喜ばれるので、毎年何個も焼くそうです。
ところで、イギリスやアメリカにはジェノア・ケーキ(Genoa Cake)というお菓子があるのをご存知でしょうか。日本の輸入食品店などでも見かけますが、ジェノア・ケーキはパウンドケーキ型をしています。これはパンドルチェが海を渡り、少し姿を変えて広まったものです。パンドルチェ・ジェノヴェーゼ誕生の由来の一つに、アンドレア・ドーリア(ジェノヴァ共和国の名家出身で神聖ローマ帝国の海軍総督)が街のシンボルとなるようなお菓子を作るために、ジェノヴァの菓子職人たちに呼びかけてコンクールを行ったという説があります。これが真実ならば、ジェノヴァの名前を海外へ広めようとした彼の思惑は成功したと言えるでしょう。
2011年よりジェノヴァ在住。音楽院を卒業後、演奏活動の傍らフリーライター、旅行コーディネート、通訳などを務める。演奏会などでリグーリア州各地を周り、それぞれの街の文化や風景に魅了される。ジェノヴァ近郊の街を散策したり、骨董市巡りが休日の楽しみ。 山と海に囲まれたリグーリア州の四季折々の情報をご紹介いたします。Instagramはこちらから
作り方
- 無塩バターは常温に戻しておく。
- 材料Bをボウルに合わせ、ふるいにかけておく。
下ごしらえ
作り方
- 大きめのボウルを用意し、常温に戻した無塩バターと砂糖を混ぜる。(泡立て器ではなくヘラでよい)(写真a 参照)
- 1に卵を加えて混ぜた後、はちみつを加えてよく混ぜる。(写真b 参照)
- 2にオレンジフラワーウォーターを加えて混ぜる。(写真c 参照)
- ふるいにかけておいた材料Bを、3の生地に3~4回に分けながら少しずつ加え、混ぜていく。(写真d 参照)
- 台や大きめのまな板に粉をふり、4の生地を両手でよくこねる。小麦粉を少しずつ振りかけながら、生地が一つにまとまる(手にくっつかなくなる)までこねる。柔らかさの目安は指の跡が付く程度。(写真e 参照)
- 5に材料Cを加え、生地全体にまんべなく行きわたるように混ぜる。(生地を軽く伸ばして、2つに折りたたみ、さらに2つに折りたたみ……とするときれいにまとまる)。(写真f,g 参照)
- 生地を2つに切り分け、丸く整えたら表面を手のひらで押して平らにする。(写真h 参照)
- 上部にナイフで三角の切り目を入れる。(写真i 参照)
- 160度に温めておいたオーブンで約40分焼く。時々天板の前後を逆にして焼きムラを防ぐ。焼き色が付くのが早く、焦げてしまいそうな場合は、途中でアルミホイルを被せたり、天板の位置を一段下げるとよい。(写真j 参照)
- 竹串などで中まで焼けたか確かめ、生地がくっついてこなければ、そのまま木製のまな板の上で一晩冷まして完成。時間をおくとしっとりする。(写真k 参照)