モンテ物産ミラノ駐在員の夏の思い出は、トマトで埋め尽くされていると言っても過言ではない。
トマト缶の原料となるトマトの収穫が行われるのは夏だけなので、毎年夏になると必ず生産立会いのため南に向かうことになる。
工場があるのはナポリを有するカンパーニャ州の一都市、サレルノ近郊だ。トマト缶用のトマトは例年7月下旬~9月上旬の間に収穫され、すべてがフレッシュなうちに工場に運ばれて缶詰になる。その工場が問題なく稼動しているかの確認、ロットごとの品質の確認、ラインでのトマト選別作業が、この時期の駐在員には欠かせない仕事だ。
周囲のイタリア人の友人たちは、いかにもヨーロッパらしい2~3週間の長い夏休みを利用してのんびりとヴァカンスを満喫するが、我々は全くもってそれどころではない。
トマト工場は24時間稼動しているからだ。
「Benvenuto al PARADISO!(“パラダイス”へようこそ!)」
トマト工場に着くと、40年以上もモンテ物産のトマト缶ビジネスのコーディネーターを続けているブルーノさんが満面の笑みで迎えてくれた。
恰幅が良く小柄で骨太、という典型的な南イタリアの体型で、いつも明るく冗談を言っては笑わせてくれるとても面白い人だ。大げさに“パラダイス”を強調した口ぶりから、この場合の“パラダイス”が字義通りではないことがうかがえた。
「こんなに美味しいトマトで溢れかえったこの工場はまさに“パラダイス”だよ!さあ、原料トマトのご到着だ!」
そう言われて振り返ると、ちょうどトマトを積んだ巨大なトレーラーが工場に入ってくるところだった。
▲日本のトマトと違い、地面に這って生えているのがイタリアのトマトの特徴
荷受所では工場の経営者一族による検品が始まるのだが、未熟果(緑色や黄色などの赤くなっていないトマト)・不良果(腐っているなど状態が悪いトマト)が多いと、「こんなトマトを持ってくるな!お前のところからはもう買わないぞ!」という怒号とともに容赦なく追い返されてしまう。
トマトの供給元もせっかく届けたトマトがトンボ帰りになってはたまったものではないため、いいトマトを納品するように気をつける。先代の社長が非常に厳しい方だったこともあり、いい原料には恵まれているそうだ。
搬入されたトマトは順次洗浄され、カラーセンサーで未熟果や不良果があらかた取り除かれる。そして高温の水蒸気と回転式のローラーで湯剥きが行われるのだが、100度前後の水蒸気が吹きつけられるので、当然トマトはアツアツだ。
そのトマトが流れていく先に目を向けると、せわしなく手を動かしてトマトの選別を行っているマンマ(mammaはイタリア語で「母」の意味だが、単純に「母」というよりは、「お母ちゃん」と訳すほうがしっくりくる)がずらりと並んでいる。
「さあ、ここからが大仕事だよ!」
ブルーノさんは笑顔でそう言い、エプロンと手袋を渡してきた。
私もトマトの選別ラインに入る、ということである。
ベルトコンベアのスタートのあたりに立つと、
「チャオ!がんばってね新入り君、5分で逃げちゃだめよ!」
と元気なマンマたちが歓迎してくれた。
私にできるのは、スタート地点でカラーセンサーをすり抜けてしまった緑色や黄色といった誰が見てもわかる未熟果を取り除くことくらいだった。
最初はゲーム感覚でベルトコンベアの左右に開いた穴に順調に未熟果を放り込んでいたが、真夏の工場内でアツアツトマトの運河を目の前に作業をするのは、サウナの中で運動をし続けるようなものだ。
冷房や換気扇などを駆使しているものの、あっという間に汗が噴き出し始める。
マンマたちは毎年9割ほどが同じメンバーというベテランぞろいなので、30分経っても、1時間経っても平然としている。
「彼女たちは、休憩時間も含めてだが8時間働くんだよ。」
ブルーノさんのその言葉を聞いてひっくり返りそうになった。慣れない我々では、頑張っても2~3時間が関の山だろう。
「彼女たちは8時間×3交代制で働き、24時間工場は稼動し続けるんだ。トマトは毎日収穫されるから、新鮮なうちに加工するにはこうするしかないんだよ!」
私が更に驚いたのは、マンマたちの選別精度の高さだ。
最初に隣にいたマンマも素早く選別しているように見えたのだが、その後に控えるベテラン勢からすれば”まだまだ新米”とのことだ。実際にラインの最後を任されているマンマを見に行ってみると、手の動きが速すぎてどんなトマトを取り除いているのかが見えもしなかった。
目を凝らしてよく見ると、一見真っ赤できれいな見た目のトマトの流れの中にしきりに手を突っ込んでは混ぜ返していた。そうすることで裏側の黒い部分なども取り除いているそうだ。
「向こうにあるラインを見てごらん。マンマの数が少ないだろう?日本向けの商品がより高品質なものになるように、イタリア国内向けや日本以外の国向けのラインと比べると約2倍の人員を配置しているんだ。」
ブルーノさんに促されて遠くの日本以外の国向けラインを見ると、確かに人数が違ううえにトマトを流すベルトコンベアの速度も目に見えて速い。
こうして厳しい選別をくぐり抜けたトマトは、同じ原料トマトから作られるピューレと一緒に缶に詰められ、密封される。
缶を一定時間高温の熱湯に浸しておくことで殺菌が行われ、科学的な保存料は一切使わない。そのおかげで、完熟トマトの自然な味わいがそのまま楽しめる。
モンテ物産のロングセラー商品の一つともいえるモンテベッロのトマト缶。このトマト缶一つ一つには、畑で収穫する人たち、選別ラインのマンマたちをはじめとした工場の人たち、ブルーノさんなど、様々な人の努力や技術、そして情熱が込められている。
スーパーなどの小売店だけではなくレストランのシェフたちにも長年愛用されているのは、造り手のこだわりによって安定した高品質を保ち続けているからこそなのだろう。
モンテ物産
http://www.montebussan.co.jp/
▼モンテベッロについて詳しくはこちらから↓↓▼
https://www.montebussan.co.jp/foods/mb_po.html
トマト缶の原料となるトマトの収穫が行われるのは夏だけなので、毎年夏になると必ず生産立会いのため南に向かうことになる。
工場があるのはナポリを有するカンパーニャ州の一都市、サレルノ近郊だ。トマト缶用のトマトは例年7月下旬~9月上旬の間に収穫され、すべてがフレッシュなうちに工場に運ばれて缶詰になる。その工場が問題なく稼動しているかの確認、ロットごとの品質の確認、ラインでのトマト選別作業が、この時期の駐在員には欠かせない仕事だ。
周囲のイタリア人の友人たちは、いかにもヨーロッパらしい2~3週間の長い夏休みを利用してのんびりとヴァカンスを満喫するが、我々は全くもってそれどころではない。
トマト工場は24時間稼動しているからだ。
「Benvenuto al PARADISO!(“パラダイス”へようこそ!)」
トマト工場に着くと、40年以上もモンテ物産のトマト缶ビジネスのコーディネーターを続けているブルーノさんが満面の笑みで迎えてくれた。
恰幅が良く小柄で骨太、という典型的な南イタリアの体型で、いつも明るく冗談を言っては笑わせてくれるとても面白い人だ。大げさに“パラダイス”を強調した口ぶりから、この場合の“パラダイス”が字義通りではないことがうかがえた。
「こんなに美味しいトマトで溢れかえったこの工場はまさに“パラダイス”だよ!さあ、原料トマトのご到着だ!」
そう言われて振り返ると、ちょうどトマトを積んだ巨大なトレーラーが工場に入ってくるところだった。
荷受所では工場の経営者一族による検品が始まるのだが、未熟果(緑色や黄色などの赤くなっていないトマト)・不良果(腐っているなど状態が悪いトマト)が多いと、「こんなトマトを持ってくるな!お前のところからはもう買わないぞ!」という怒号とともに容赦なく追い返されてしまう。
トマトの供給元もせっかく届けたトマトがトンボ帰りになってはたまったものではないため、いいトマトを納品するように気をつける。先代の社長が非常に厳しい方だったこともあり、いい原料には恵まれているそうだ。
搬入されたトマトは順次洗浄され、カラーセンサーで未熟果や不良果があらかた取り除かれる。そして高温の水蒸気と回転式のローラーで湯剥きが行われるのだが、100度前後の水蒸気が吹きつけられるので、当然トマトはアツアツだ。
そのトマトが流れていく先に目を向けると、せわしなく手を動かしてトマトの選別を行っているマンマ(mammaはイタリア語で「母」の意味だが、単純に「母」というよりは、「お母ちゃん」と訳すほうがしっくりくる)がずらりと並んでいる。
「さあ、ここからが大仕事だよ!」
ブルーノさんは笑顔でそう言い、エプロンと手袋を渡してきた。
私もトマトの選別ラインに入る、ということである。
ベルトコンベアのスタートのあたりに立つと、
「チャオ!がんばってね新入り君、5分で逃げちゃだめよ!」
と元気なマンマたちが歓迎してくれた。
私にできるのは、スタート地点でカラーセンサーをすり抜けてしまった緑色や黄色といった誰が見てもわかる未熟果を取り除くことくらいだった。
最初はゲーム感覚でベルトコンベアの左右に開いた穴に順調に未熟果を放り込んでいたが、真夏の工場内でアツアツトマトの運河を目の前に作業をするのは、サウナの中で運動をし続けるようなものだ。
冷房や換気扇などを駆使しているものの、あっという間に汗が噴き出し始める。
マンマたちは毎年9割ほどが同じメンバーというベテランぞろいなので、30分経っても、1時間経っても平然としている。
「彼女たちは、休憩時間も含めてだが8時間働くんだよ。」
ブルーノさんのその言葉を聞いてひっくり返りそうになった。慣れない我々では、頑張っても2~3時間が関の山だろう。
「彼女たちは8時間×3交代制で働き、24時間工場は稼動し続けるんだ。トマトは毎日収穫されるから、新鮮なうちに加工するにはこうするしかないんだよ!」
私が更に驚いたのは、マンマたちの選別精度の高さだ。
最初に隣にいたマンマも素早く選別しているように見えたのだが、その後に控えるベテラン勢からすれば”まだまだ新米”とのことだ。実際にラインの最後を任されているマンマを見に行ってみると、手の動きが速すぎてどんなトマトを取り除いているのかが見えもしなかった。
目を凝らしてよく見ると、一見真っ赤できれいな見た目のトマトの流れの中にしきりに手を突っ込んでは混ぜ返していた。そうすることで裏側の黒い部分なども取り除いているそうだ。
「向こうにあるラインを見てごらん。マンマの数が少ないだろう?日本向けの商品がより高品質なものになるように、イタリア国内向けや日本以外の国向けのラインと比べると約2倍の人員を配置しているんだ。」
ブルーノさんに促されて遠くの日本以外の国向けラインを見ると、確かに人数が違ううえにトマトを流すベルトコンベアの速度も目に見えて速い。
こうして厳しい選別をくぐり抜けたトマトは、同じ原料トマトから作られるピューレと一緒に缶に詰められ、密封される。
缶を一定時間高温の熱湯に浸しておくことで殺菌が行われ、科学的な保存料は一切使わない。そのおかげで、完熟トマトの自然な味わいがそのまま楽しめる。
モンテ物産のロングセラー商品の一つともいえるモンテベッロのトマト缶。このトマト缶一つ一つには、畑で収穫する人たち、選別ラインのマンマたちをはじめとした工場の人たち、ブルーノさんなど、様々な人の努力や技術、そして情熱が込められている。
スーパーなどの小売店だけではなくレストランのシェフたちにも長年愛用されているのは、造り手のこだわりによって安定した高品質を保ち続けているからこそなのだろう。
http://www.montebussan.co.jp/
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