お料理説明・背景
まるで大草原内の一軒家ともいえる地に住んでいるチンツィア。斜向かいには、大統領の夏の狩猟用避暑地があるという森に囲まれた地である。パイロットの夫の趣味は、園芸と家庭菜園、そして養蜂というだけあり、チンツィアはいつも周囲の畑から採れた新鮮な野菜を使って料理をする。なんという贅沢さだろう。
夏の代表的な野菜といえば、やはりズッキーニである。綺麗なズッキーニの花と共に夫が収穫してくるズッキーニをチンツィアはパスタソースにしたり、グリルにしたり。
「食べても食べても、どんどん夫が収穫してくるのよ。この時期はね、あの手この手で毎日ズッキーニの日替わりメニューよ!」
そう言われて見ると、キッチンの脇を、山のように積み上げられたズッキーニの入った籠が占領している。1キロを超えるのでは?と思うような大きさのものまである。
「これはね、私たちの子供の頃の夏の思い出が詰まった料理なの」
そう言いながらチンツィアが作り出したのは、ズッキーニに詰め物をしてトマトソースで煮込む料理である。料理が大好きなチンツィアのマンマが、夏になると必ず作ってくれたという。祖母から母へ、そして母から子へと受け継がれた、チンツィアにとっては、まさに家族の思い出がぎっしりと詰まった料理なのだそう。
ズッキーニを縦に半分に切り、船形のようにして詰め物をする料理こそよく見かけるが、このように中に穴を開けて詰め物をするものは私も初めて目にした。細長いズッキーニにどうやってきれいに穴を開けるのかと思いきや、芯を抜く器具をうまく利用していた。
イタリアの料理好きマンマは、調理器具もおしゃれなものを取り揃えていることが多い。日本のように時短料理は発達していないが、うまくキッチン用品を活用し、工程時間を短縮している方が多い気がする。キッチン用品のみに限らず、マンマのキッチンにはそれぞれのこだわりが見られておもしろい。 チンツィアが特にこだわっているのはハーブ類だそう。手作りの器からもそのこだわりは見受けられる。玄関先のハーブ庭園にも個性豊かなハーブたちが顔を連ねていた。
「庭先のハーブをちょっと入れるだけで、料理の味は本当にグレードアップするの」そう言いながら、バジルや万能ネギを手にしてきたチンツィア。素材の味を生かしたシンプルな料理が多いイタリア料理だが、だからこそハーブの香がアクセントを成してより一層味を引き立ててくれるのかもしれない。
日系航空会社にて国際線CAを12年、その間2年程フィレンツェに料理留学したのを機 に料理の世界に目覚める。イタリア料理以外にも懐石料理、ヴェトナム料理を学ぶ。2008年に渡伊。コルドンブ ルーでの非常勤講師を経て、自宅でイタリア家庭料理教室を主宰中。 野菜ソムリエ、現在はイタリアワインソムリエ取得中。https://ameblo.jp/tsugumi-hiraga
作り方
- 硬いパンは15分ほど水に浸けて軟らかくしておく。カンパーニュのようなパンが入手できない時は、耳を取り除いた食パンで代用可能。(写真a 参照)
下ごしらえ
作り方
- ボウルに合挽き肉、卵、水気をしっかりと切ったパンの白い部分を入れてしっかりと混ぜ合わせる。(写真b 参照)
- 1にパルミジャーノ・レッジャーノを加え、更にしっかりと混ぜ合わせる。(写真c 参照)
- 2に万能ネギとイタリアンパセリのみじん切りを加える。こちらが詰め物用のタネとなる。(写真d 参照)
- ズッキーニは花の部分と果梗(茎とつながっていた部分)を切り落としたら、7、8cmの長さに切って、ズッキーニの中心部分に円を描くように回しながら芯をくり抜く。(写真e 参照)
上下にそれぞれ深さ1cmほどの円を描いてから、開通させるとズッキーニが破損せずにきれいに芯をくり抜くことができる。太めのズッキーニの場合、くり抜き器を使って更に中の穴を大きくする。(写真f 参照) - ズッキーニの中の部分に指で塩をすりこんでいく。(写真g 参照)
- 3のタネを中に詰め込んでいく。空気を抜きながらしっかりと! 余ったタネはミートボールの大きさに丸める。(写真h 参照)
- フライパンにオリーヴオイルを熱し、弱火でタマネギのみじん切りを少ししんなりとなるまでいためたらトマトピューレを加える。(写真i 参照)
- 縁が沸々としてきたら、肉詰めズッキーニと肉団子を静かに入れていく。(写真j 参照)
- 蓋をしながら弱火でおよそ1時間、ズッキーニを時々回転させたり、バジルの葉も加えながら、ズッキーニが軟らかくなるまで煮込んでいく。(写真k 参照)