南イタリア ロゼ紀行 Presented by モンテ物産

先月のこのコラムでは、トスカーナで作られるロゼワイン2種類を取り上げた。そのコラム内でも少し触れているが、ここ近年ロゼワインの需要は世界中で伸び続けている。これがどうも日本ではイマイチ浸透してしない。
理由のひとつにはロゼワインのことを甘いお酒だと考えている方が多いことが挙げられるかもしれない。昔はロゼワインというと甘口のものが日本市場には多かった。そのことをご存知の方にとっては、ロゼは甘い、というイメージが強いのだろう。だが実際には、少なくともイタリアワインの世界においては、現在では甘口のロゼはほぼ無く、辛口のものが圧倒的な多数派だ。これはきっと、食事にあわせてワインを楽しむイタリアの習慣からしても自然なことかもしれない。

さて、先月ロゼ紀行と称して回ったトスカーナから一気に南下すると、長靴型のイタリア半島のちょうどヒール部分にプーリア州がある。このプーリア州を代表するワイナリー、リヴェラ社はイタリアの中で最も早くロゼワインを造り始めたワイナリーのひとつだ。

▲リヴェラ社
▲カステル・デル・モンテ・ロゼ

プーリアのロゼ、と聞くと豊富な日照量で糖度の上がった、色調もしっかりと濃く抽出されるロゼを思い浮かべる方もおられるかもしれない。しかし、リヴェラ社のロゼは少し違う。色調は非常に鮮やかでエッジに輝きがあり、透明感を持っている。香りも冷涼さを思い起こさせるフレッシュな赤いベリーが感じられ、ブドウが過熟したような印象が無い。

以前ワイナリーを訪問した際に、テイスティングでそんな感想を伝えると、オーナーのセバスティアーノさんは満足げにこう説明してくれた。
「我々のロゼはアルコール度数も高くなく、軽やかでエレガントでしょう。理由は我々のワイナリーがある、カステル・デル・モンテエリアのミクロクリマ(微気候)にあるんだ。このエリアはプーリアの中でも小高い丘になっていて、すぐ北西には標高の高いアペニン山脈が伸びている。冷たい空気がこの山脈側から流れ込み、夜間はしっかりと気温が下がるんだよ。それでブドウに酸がよく保たれる、というわけさ。ボンビーノ・ネーロという、プーリアの中でも我々のエリア特有の土着品種で造られるけど、このボンビーノ・ネーロが、熟すのが遅く、しっかりと酸を保って成熟する特徴をもっていることも、このロゼのフレッシュさの理由になっているね。」
「さらにこのカステル・デル・モンテの丘が岩石土壌であるため、ミネラルも豊富に加わり、ワインのもうひとつの支えになっているんだよ。」

▲白っぽく、岩石土壌であることがよくわかる畑 

確かに味わいはチェリーのニュアンスに加え、ミネラルが感じられ、アフターにわずかな苦みと際立った酸がある。鶏のから揚げや、コロッケ、メンチカツ、フィッシュアンドチップスなど、揚げ物との相性はとてもよく、タルタルソースのように少し口の中に残るような味わいのものでもきりっと洗い流してくれるから、つい次の一口に手が伸びてしまう。

このイタリア半島のかかと、プーリア州から今度はつま先のカラブリア州に更に南下してみよう。チロ・マリーアという港町にはカラブリア州を代表するワイナリー、リブランディ社がある。
 彼らもまた南のロゼを造るワイナリーだ。現当主のパオロ・リブランディさんは自社のロゼをこう説明する。
「私たちのロゼは、アメリカンチェリーやバラのニュアンスの華やかなアタックと、力強さ・フルーティさが特徴なんだ。アルコール度数も13.5%としっかりしていて、ロゼの中でもボディを感じる味わいさ。」
▲右がパオロ・リブランディさん 
▲リブランディ社の造る、チロ・ロザート

確かに、先ほどのリヴェラ社のロゼのアルコール度数は12~12.5%ほど。それに比べるとしっかりとしている。
「ブドウはカラブリアの土着品種、ガリオッポで造られているんだけど、色調も定着しやすく、味わいの厚みがあり、アロマも豊富な、構成のしっかりしたロゼだと言えるよ。カラブリアは唐辛子を使った辛い料理が伝統ですが、そういった料理の味わいにもしっかりとしたボディで力負けすることなく寄り添い、またフルーティな果実味が辛味の残る口内を落ち着けてくれます。相性は抜群だと思いますよ。」
 確かに、辛い料理にも負けない味わいの力強さがあり、フルーティな果実味は辛いものを食べた時に少し熱くなった口の中をなだめてくれるように口内に広がり、それでいてアフターにはフレッシュさもあってワインがぼんやりとすることも無い。ご家庭の食卓なら、キムチや中華、麻婆豆腐、回鍋肉なんかもいい。スパイス全般と相性がよさそうだ。

そんなイタリアのつま先から海を渡ると広がっているのがシチリアの大地だ。今やシチリアワインのみならず、イタリアワインを代表するブランドとなった“コルヴォ”にも、実はロゼのタイプがある。

▲コルヴォ・ロゼ
▲フルーティさと瑞々しさが特徴

シチリアの太陽を感じさせるこのロゼは、何と言っても肥沃なシチリアの大地の恵みがもたらす、フルーティさと瑞々しさが特徴だ。香りにはストロベリーやラズベリーのような若々しい香りがあり、口に含んだときの酸の乗ったみずみずしさが心地よい。
決して主張の強いワインではない。しかし、だからこそ料理の味わいを邪魔することなく、日本の食卓には広く合わせることが出来る。例えばダシを使ったお料理、煮浸しやちらし寿司なんかもよく合うし、少し大味な豚肉のしょうが焼きや餃子、野菜の炒め物なども上手く受け止めてくれる。

ここまでいくつもロゼワインをご紹介したが、ロゼは汎用性がとても高いのがお分かり頂けただろうか。白ワインに劣らないフレッシュさや軽やかさは魚介や野菜にも合うし、その一方で赤ワインほどではないが味わいに厚みがあり、お肉料理にもよく合う。また、イタリア料理はもちろんのこと、日本の食卓に並ぶようなお料理でも、ロゼは懐深く、色んな味わいに寄り添ってくれる。

現在もなお社会状況はなかなか落ち着かず、まだしばらくはご家庭で食事をする機会が多いかもしれない。願わくばこのコラムが、そんなご家庭でのお食事のシーンにロゼワインを合わせる楽しみを生むきっかけになれば幸いである。


モンテ物産
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▼リヴェラ社について詳しくはこちらから↓↓▼
https://www.montebussan.co.jp/wine/rivera.html
▼リブランディ社について詳しくはこちらから↓↓▼
https://www.montebussan.co.jp/wine/librandi.html
▼コルヴォ(ドゥーカ・ディ・サラパルータ社)について詳しくはこちらから↓↓▼
https://www.montebussan.co.jp/wine/dds.html