マンマのレシピ

マンマの紹介

  • マリーサ・ロサート(Marisa Rosato)さん
  • アブルッツォ州キエティ県ペスココスタンツォ在住
  • 【得意料理】パン、手打ちパスタ。 太陽の様に明るい2人の子どものお母さん。料理全般をこなすが、子どもたちは彼女が作ったパンや手打ちパスタが大好き。2000年から羊飼いだった義父が生まれ育った場所をアグリツーリズモとして改装し始め、2006年にオープン。海外からの宿泊者も多く、皆彼女の人柄に惚れ、繰り返し訪れる人も多い。幼い頃は夏休みのたびに、森に住む祖母の家に預けられていた彼女は、山での知恵、料理、ホスピタリティなど多くのことを祖母から学んだという。

お料理説明・背景

今回手打ちパスタに使用するソリーナ小麦は古くからアブルッツォ州で育てられていた穀物の一種。標高1,500mの高地でも栽培することが可能で、寒さに強く山間部の冬の極寒にも絶えることができ、マイエッラ近郊の砂利の多い乾いた土地にも適していたことからこの地域でも重宝されていた。ただ、他の小麦に比べ生産サイクルが長いことや(10月に種を撒いて8月に収穫。通常は6月頃収穫)、収穫高が乏しいことから(通常小麦の3分の1程度)20年程前までは絶滅の危機に瀕していた。このソリーナ小麦の種を絶やすことなく守り続けていたのが、今回レシピを紹介してくれたマリーサの義父であるパオリーノだ。現在マリーサがアグリツーリズモを営むデコントラ村で生まれ育ち、羊飼いとして半生を捧げた彼が、マリーサにその栽培や調理の方法を教えた。ソリーナ小麦は軟質小麦に分類され、パンやピザ、フォカッチャづくりに向いており、グルテンが少ないことから、近年再び注目され始めている。

今回紹介する”Piancozze(ピアンコッツェ)“はパオリーノが教えてくれたデコントラ地域特有のパスタにマリーサが改良を加えたものだ。彼のレシピは小麦と水だけのシンプルなものだったが、前述したようにパンやピザに向いた軟質小麦であるため、卵を使うことで水を最小限に抑え、同量の硬質小麦も加える。こうして硬めに仕上げることでしっかりとした歯ごたえが出て、噛みしめる程に小麦の風味が広がるようになる。 ピアンコッツェは色々なソースと相性がいい。この日はフレッシュトマトや別の野菜とハーブのパスタも作ってくれたが、ほかにもバッカラ、ヒヨコ豆、トリュフをはじめ、季節に応じて旬の食材と合わせることも多いという。

最後にもう一つ、この地に自生するハーブについても触れておきたい。
デコントラはペスカーラ県のカラマニコ・テルメと呼ばれる町の中でも人口70人程の小さな集落で、標高約800mの雄大な山々に囲まれた国立公園内に位置する自然豊かな場所だ。縁の深い人に、後にローマ教皇まで上り詰めたチェレスティーノ5世がいる。

この地域には彼が建てた修道院が複数あり、さらには、今回使用するハーブ、ネペテッラをはじめ約2,000種類の草花が自生している。これも野草や香草に詳しかったチェレスティーノ5世が地域に根付かせたと言われているが、戦後の高度成長期にはその価値は忘れ去られた存在になっていた。しかし近年、栄養価の高さなどからソリーナ小麦などの古代穀物同様に見直され、マリーサのアグリツーリズモでも、ソリーナ小麦や野草を使った食事を楽しみに来る人が増えている。食材が手に入ったら、ぜひ作ってみて欲しい一皿だ。

レポート:保坂 優子(Yuko Hosaka)
地域ブランディングを主とした都市計画コンサルタント。2002年、イタリアの暮らしにどっぷり浸りたいとアブルッツォ州に1年間留学。以降、大阪とアブルッツォを行き来する生活を続けている。2009年のラクイラ地震を機にアブルッツォ州紹介サイト「Abruzzo piu’」 を立ち上げ、2016年4月からはフリーペーパー「アブルッツォ通信」の共同発行者として多方面で活動中。

材料

ソリーナ小麦のピアンコッツェ ズッキーニとハーブ和え(5人分)

パスタ

・ソリーナ小麦250g(軟質小麦)
・セナトーレ・カッペリ小麦250g(硬質小麦)
・卵5個
・水適量

ソース

・ズッキーニ4~5本
・ネペテッラ10gハーブの一種、ミントで代用可
・オリーヴオイル大さじ2
・塩少々

作り方

パスタ

  1. 分量の小麦粉と卵を混ぜる。(水分が足りなければ水を足す)(写真a 参照)
  2. しっかりこねたらめん棒で1.5mm程度の厚さになるまでのばす。(写真b 参照)
  3. 2の状態で1~2時間布巾をかけて寝かせておく。(写真c 参照)
  4. 7cm幅程度に切りそろえる。(めん棒に巻き付け、めん棒に沿って切るとよい)(写真d 参照)
  5. 約30度の角度を付け2cm程の幅に切る。(写真e 参照)
  6. 熱湯にパスタを入れ、塩とオイルを加え(※分量外。オイルはパスタがひっつかないようにするために入れる)、約10分ゆがいたらザルにあげる。

仕上げ

  1. ネペテッラの枝から葉の部分をちぎっておく。(写真f 参照)
  2. フライパンにオリーヴオイルを入れ、5~6mmの輪切りにしたズッキーニを加え中火で透明になるまで加熱する。(写真g 参照)
  3. 香り付けにネペテッラの葉を加え、2~3分で火を止める。(写真h 参照)
  4. ゆがいたパスタを加えてソースと絡めたら完成。(写真i 参照)
  • a. 小麦と卵を混ぜる
  • b. めん棒でのばす
  • c. 布巾をかけて1~2時間ねかす
  • d. 7cm幅程度に切りそろえる
  • e. 30度の角度をつけて切る
  • f. ネペテッラの葉の部分をちぎる
  • g. ズッキーニを炒める
  • h. ネペテッラを加える
  • i. パスタを加えてソースと絡める

お料理ポイント

パスタをこねる際にオイルや塩は加えず、必要に応じてゆがく際の水に足す。 削り下ろしたペコリーノチーズや唐辛子を合わせて食べてもよい。