「粋でいなせな」”マリネッラ”のバックステージ訪問
皆さまご無沙汰しております。
おげんきですか? 季節は深まり晩秋になります。イタリアも今月末にはサマータイムも終了し、冬の訪れ?
いやはや地球温暖化で、10月まだまだ海で泳いでいる人をチラホラ見かけます。
さて、季節に関係なくナポリにはいつでもお客様の絶えない小さな、小さなお店がキイアイア地区にあります。ネクタイを主軸としたショップ、E.Marinella。
ネクタイは男性のアイテムで、ショップに入ると感じる、「男性のサンクチュアリ」なオーラ。女性の私としては、入っちゃいけない?怖さも感じますが、そこはさすが老舗ブランド。魅力的でエレガントな女性アイテムも少しあって、安心できます。
ネクタイに関しては全く無知の白紙状態で訪れたのですが、お話を聞いているうちに男のロマン、正に、「粋でいなせ」な江戸っ子の文化が重なりました。マリネッラの代表的なネクタイは江戸小紋と重なる部分があります。目の悪い私には遠目は無地ですが、近寄るととても手の込んだ小紋柄がちりばめられていて、小さな花畑のようです。この小さなお花畑のネクタイをトータルアイテムに添えると、見る見るうちにあか抜けて見えて、態度も凛として、見た目いなせに見えちゃうのです。
ネクタイの世界はとても奥深く、3/5/7/9折(Pieghe)とネクタイを構成する上で何回折り重ねるかによって違ったボリュームが生まれます。つける人の好みでお買い上げできるようになっています。
7折(Pieghe)はマリネッラが105年前に考え出した、ハンドメイドでレベルの高いサルト(仕立て人)でしか実現できない伝統技術です。通常のものより少しだけボリュームを感じるので、女子的なコメントで言えば、「横からみた感じが、男らし! Potente&Eleganza」です。
なるほど言われてみれば、このネクタイ(7折)をつけている人を結構思い浮かべることができます。
世界各国の著名人の御客様を持つマリネッラ。スーパースターの某バスケット選手は身長も高く、一般の方がつける長さでは、短すぎますし、逆に小柄な人だと、長すぎてダサくなってしまう。なるほど、お客様の体格によって、細かいオーダーも受けているので世界中の男性を虜にしているのでしょうね。
さて、手作業で行われているバックステージは、熟練の職人さん、しかもほとんど?訪れたときは100%が女性でした。各製造工程に分かれて効率よく作業が行われていました。新柄の生地も一旦はこちらの工房に運ばれ、選別されているそうです。
こちらはカッティングですが、型紙に合わせてカットするだけではなく、つけてた時に柄が正確に出るようにイメージしながら型紙を置いていきます。
薄く柔らかいシルク生地に、芯地を中心に入れてサクサクと縫い合わせていくのは、なかなか難しいと思われます。他にもいくつかのステップを踏んで出来上がる100%ハンドメイドのネクタイ。
大名も庶民も豪華絢爛を嫌い派手な衣装を禁じた江戸時代に生まれた粋の文化時代に生まれた手の込んだ生地や、柄。それを理解できるセンスを持った人を通(ツウ)と呼んでいました。
英国紳士アイテムの輸入販売から始まり、第二次大戦以降に独自の柄をデザインし、ネクタイにして販売をしてきたマリネッラ。現在のようにイタリアンスタイルのベースには英国が影響していたのは知りませんでしたが、現在につながる独自のセンスを持ち合わせたからこそ続けてこれたのでしょう。
これからクリスマスシーズン突入で、ナポリ名物のマリネッラ行列の季節です。
クリスマスシーズン、プレゼントを買い求めにマリネッラにやってくるお客様がずらりと並ぶ光景は、クリスマスの時期の樹井合地区の名物シーンです。
取材協力:
E.Marinella – official site – sartorial ties