イタリアでは今年もブドウが収穫期を迎えている。
一年間情熱をかけて育てたブドウを最高のタイミングで収穫する。生産者にとっては一年間の努力が実を結ぶ高揚感のある瞬間だ。ここ、イタリア中部のマルケ州カステッリ・ディ・イエージエリアでも、土着品種ヴェルディッキオの収穫が最盛期を迎えている。
マルケはイタリアの東海岸側に面した州だ。目の前にはスタジオジブリの名作映画「紅の豚」の舞台にもなった、エメラルドに輝くアドリア海が広がる。このマルケ州の北部、海からは少し内陸がヴェルディッキオの生産エリア、カステッリ・ディ・イエージ。ワインの正式名称は“ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ”。これにクラッシコ、とかスペリオーレ、とか続いたりするので非常に名前が長く覚えづらいかもしれない。
一方でイタリアワイン好き方の中には、“ヴェルディッキオ”という白ワインの名前は聞いたことがある、という方も多いのではないだろうか。日本にはかなり昔から輸入されているし、イタリアでも最も有名な土着品種のひとつ。フルーティで、ミネラルが乗りやすく、余韻に柑橘系の果実の皮のようなほのかな苦みがあるのが特徴的だ。
「ヴェルディッキオの房はブドウの粒同士がくっついて実るんだよ」
マルケ州を代表するウマニ・ロンキ社のミケーレ社長は、美しく実ったヴェルディッキオの房を手に取り、その出来に満足するように目を細めた。
▲たわわに実るヴェルディッキオ
確かにブドウの房を見ると、ブドウの一粒一粒がかなり密集している。
「こういう形の房なので、ブドウの間の湿気が抜けづらく、雨が降ったりするとカビが発生しないように特に注意が必要なんだ。雨が多い年はブドウの葉を少なくして、木々の間の風通しをよくする。でも余りに葉が少なく、直射日光に当たり続けると、ブドウが焼けてしまう。畑の手入れには経験が必要というわけさ。」
ミケーレ社長がそう説明している間に我々のそばを収穫作業中の10人ほどのグループが通り過ぎた。ミケーレ社長はみんなににこやかに手を振り、こう続けた。
「畑での作業に経験は不可欠。収穫前の手入れも当然ながら、収穫の際はなおさらだよ。このため、我々ウマニ・ロンキ社は年間通して、畑作業の専任を45名ほど雇用しているんだ。いま通り過ぎた彼らも全て1年中ウマニ・ロンキの畑を管理する、我々の正社員なんだよ。」
いまいちピンと来ないかもしれないが、ウマニ・ロンキ社の正しい評価のために正直に言えば、他のほとんどのワイナリーが収穫時の作業員を“期間雇用”している。
つまり、収穫期以外も一年を通じて畑の管理をする正社員の数は少数に押さえて人件費を下げているところがほとんどだ。畑専門の年間契約の正社員が45人というのは、びっくりするほど多い数と言える。
▲収穫作業の様子
それを察したように、ミケーレ社長は説明を付け加えてくれる。
「ヴェルディッキオは先ほどの説明通りブドウの実が密着しているから、収穫の時も特に大切に扱う必要がある。他のワイナリーでは機械収穫しているところもあるようだけど、機械で収穫するとブドウの実が密着しているため傷つきやすい。ブドウの実に傷がついてしまうと、そこから一部発酵や酸化が始まって品質が低下してしまうんだよ。だからウチの自社畑では、ヴェルディッキオは全て手摘みで収穫しているんだ。ウマニ・ロンキ社がこれだけ正社員を雇っているのは、ブドウをとてもデリケートに扱わなければいけない手摘み作業に、経験ある作業員を常に投入したいからでもあるのさ。」
▲畑の中を歩くミケーレ社長(左)と、その父でウマニ・ロンキ社 前社長のマッシモさん
「我がウマニ・ロンキワインのエントリーライン、カサル・ディ・セッラも全て手摘み収穫のブドウで造られているんだよ。」
ウマニ・ロンキ社のヴェルディッキオのラインナップの中には、カサル・ディ・セッラとカサル・ディ・セッラ・ヴェッキエ・ヴィーニェという2種類のワインがある。ヴェッキエ・ヴィーニェは“古木の畑”という意味で、カサル・ディ・セッラの畑の中でも特に古いブドウの木がある一区画から作られる単一畑のトップワイン。数年前にはイタリアで最も権威あるワイン評価本ガンベロロッソでその年のNo.1白ワインにも選ばれた、イタリアを代表するワインだ。
このエントリーラインに当たるのが、カサル・ディ・セッラ。こちらも全て手摘み収穫のブドウで造られるそうだ。手摘み収穫の努力がどれほど品質に反映されるのか、ご興味ある方には是非一度、このエントリーラインのカサル・ディ・セッラを試して頂きたい。
華やかで白桃や花の蜜を思わせる香りに、口に含んだ時のフルーティさとミネラル。非常に繊細で綺麗な酸があり、余韻にはヴェルディッキオの特徴の、柑橘系の果実の皮のような苦みがほのかに感じられる。完成度の高さは同価格帯でも頭一つ抜きん出ているだろう。
だがそれもそのはずだ。この価格帯で完全手摘み収穫のワインはほとんど存在しない。ウマニ・ロンキ社熟練の作業員による手摘み収穫と、品質への強いこだわりを持つミケーレ社長の情熱から生まれるワインのクオリティを、読者の皆様にも是非ご実感頂ければ幸いである。
▲カサル・ディ・セッラ(左)とカサル・ディ・セッラ・ヴェッキエ・ヴィーニェ
モンテ物産
http://www.montebussan.co.jp/
▼ウマニ・ロンキ社についてはこちらから↓↓▼
http://www.montebussan.co.jp/wine/UR.html
一年間情熱をかけて育てたブドウを最高のタイミングで収穫する。生産者にとっては一年間の努力が実を結ぶ高揚感のある瞬間だ。ここ、イタリア中部のマルケ州カステッリ・ディ・イエージエリアでも、土着品種ヴェルディッキオの収穫が最盛期を迎えている。
マルケはイタリアの東海岸側に面した州だ。目の前にはスタジオジブリの名作映画「紅の豚」の舞台にもなった、エメラルドに輝くアドリア海が広がる。このマルケ州の北部、海からは少し内陸がヴェルディッキオの生産エリア、カステッリ・ディ・イエージ。ワインの正式名称は“ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ”。これにクラッシコ、とかスペリオーレ、とか続いたりするので非常に名前が長く覚えづらいかもしれない。
一方でイタリアワイン好き方の中には、“ヴェルディッキオ”という白ワインの名前は聞いたことがある、という方も多いのではないだろうか。日本にはかなり昔から輸入されているし、イタリアでも最も有名な土着品種のひとつ。フルーティで、ミネラルが乗りやすく、余韻に柑橘系の果実の皮のようなほのかな苦みがあるのが特徴的だ。
「ヴェルディッキオの房はブドウの粒同士がくっついて実るんだよ」
マルケ州を代表するウマニ・ロンキ社のミケーレ社長は、美しく実ったヴェルディッキオの房を手に取り、その出来に満足するように目を細めた。
確かにブドウの房を見ると、ブドウの一粒一粒がかなり密集している。
「こういう形の房なので、ブドウの間の湿気が抜けづらく、雨が降ったりするとカビが発生しないように特に注意が必要なんだ。雨が多い年はブドウの葉を少なくして、木々の間の風通しをよくする。でも余りに葉が少なく、直射日光に当たり続けると、ブドウが焼けてしまう。畑の手入れには経験が必要というわけさ。」
ミケーレ社長がそう説明している間に我々のそばを収穫作業中の10人ほどのグループが通り過ぎた。ミケーレ社長はみんなににこやかに手を振り、こう続けた。
「畑での作業に経験は不可欠。収穫前の手入れも当然ながら、収穫の際はなおさらだよ。このため、我々ウマニ・ロンキ社は年間通して、畑作業の専任を45名ほど雇用しているんだ。いま通り過ぎた彼らも全て1年中ウマニ・ロンキの畑を管理する、我々の正社員なんだよ。」
いまいちピンと来ないかもしれないが、ウマニ・ロンキ社の正しい評価のために正直に言えば、他のほとんどのワイナリーが収穫時の作業員を“期間雇用”している。
つまり、収穫期以外も一年を通じて畑の管理をする正社員の数は少数に押さえて人件費を下げているところがほとんどだ。畑専門の年間契約の正社員が45人というのは、びっくりするほど多い数と言える。
それを察したように、ミケーレ社長は説明を付け加えてくれる。
「ヴェルディッキオは先ほどの説明通りブドウの実が密着しているから、収穫の時も特に大切に扱う必要がある。他のワイナリーでは機械収穫しているところもあるようだけど、機械で収穫するとブドウの実が密着しているため傷つきやすい。ブドウの実に傷がついてしまうと、そこから一部発酵や酸化が始まって品質が低下してしまうんだよ。だからウチの自社畑では、ヴェルディッキオは全て手摘みで収穫しているんだ。ウマニ・ロンキ社がこれだけ正社員を雇っているのは、ブドウをとてもデリケートに扱わなければいけない手摘み作業に、経験ある作業員を常に投入したいからでもあるのさ。」
▲畑の中を歩くミケーレ社長(左)と、その父でウマニ・ロンキ社 前社長のマッシモさん
「我がウマニ・ロンキワインのエントリーライン、カサル・ディ・セッラも全て手摘み収穫のブドウで造られているんだよ。」
ウマニ・ロンキ社のヴェルディッキオのラインナップの中には、カサル・ディ・セッラとカサル・ディ・セッラ・ヴェッキエ・ヴィーニェという2種類のワインがある。ヴェッキエ・ヴィーニェは“古木の畑”という意味で、カサル・ディ・セッラの畑の中でも特に古いブドウの木がある一区画から作られる単一畑のトップワイン。数年前にはイタリアで最も権威あるワイン評価本ガンベロロッソでその年のNo.1白ワインにも選ばれた、イタリアを代表するワインだ。
このエントリーラインに当たるのが、カサル・ディ・セッラ。こちらも全て手摘み収穫のブドウで造られるそうだ。手摘み収穫の努力がどれほど品質に反映されるのか、ご興味ある方には是非一度、このエントリーラインのカサル・ディ・セッラを試して頂きたい。
華やかで白桃や花の蜜を思わせる香りに、口に含んだ時のフルーティさとミネラル。非常に繊細で綺麗な酸があり、余韻にはヴェルディッキオの特徴の、柑橘系の果実の皮のような苦みがほのかに感じられる。完成度の高さは同価格帯でも頭一つ抜きん出ているだろう。
だがそれもそのはずだ。この価格帯で完全手摘み収穫のワインはほとんど存在しない。ウマニ・ロンキ社熟練の作業員による手摘み収穫と、品質への強いこだわりを持つミケーレ社長の情熱から生まれるワインのクオリティを、読者の皆様にも是非ご実感頂ければ幸いである。
▲カサル・ディ・セッラ(左)とカサル・ディ・セッラ・ヴェッキエ・ヴィーニェ
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