リグーリア海岸沿いにある、小さなミラノ
バカンスの時期に入って、すっかり人影が少なくなり、がらんとした街のミラノです。
先週おやすみをいただいて、リグーリア州の海岸沿いの街・ピエトラリグレにあるミラノ市が運営する”Casa Vacanza 休暇の家”に1週間滞在していました。この施設はミラノ市の小学生を対象とした、いくつかある休暇の家のひとつで自然学校などの目的で、年間を通して多くのミラノの子どもたちが利用しています。
「ミラノ市 休暇の家」https://progettoestatevacanza.it/
20人の大部屋が10部屋以上。地上階はラボや図書館、子どもディスコまで。
庭にはオリーブの樹(もちろんタジャスカ種)がたくさん植えられています。
最上階からの眺め。
休暇の家の入口、オフィスや看護室。
200人の子どもが宿泊できるようになっている施設には、大勢のスタッフの方が勤務しています。その方々は、リグーリアに暮らそうとも、ミラノ市の職員。オフィスの連絡先はリグーリアにあろうとも、ミラノの市外局番02のまま。車もComune di Milano(ミラノ市)とロゴが入っていて、リグーリアの中のプチミラノのようです。
なぜこちらにお世話になったかというと、友人たちと運営しているNPO団体”Orto dei Sogni オルト・デイ・ソーニ(夢を育む小さな畑)”の1ヶ月のプロジェクトにおける、最初の1週間のボランティアとして滞在させていただきました。
「オルト・デイ・ソーニ」http://www.ortodeisogni.org
オルト・デイ・ソーニは、イタリアにて福島のこどもたちの1ヶ月の保養を行っており、今年で8年目となります。
今まで通算132人の子どもがイタリアにやってきました。保養とは、放射能の危険がない環境で1ヶ月過ごすことで身体を一度リセットすることです。実際に、参加した子どもの体内のセシウム値はゼロになる子も過去に何人かおり、毎年の平均値では体内の放射線量は約半分に減少しています。(ミラノ大学物理学部の協力で、尿検査の結果)保養の効果としては、身体も心も強くなり、その効果は戻っても1年間続くという研究結果もでています。異文化=様々な価値観の社会の存在を知ることは、彼らの夢見る力を大きくし、ワクワクは身体をより逞しくすると実感しています。 海風と砂浜はデトックス効果が高いので、できるだけ毎日海へ。
最初の5年間はサルデーニア島のマルッビゥ市の協力により、利用していない市の施設などを借りて、ベッドや洗濯機など何から何まで持ち込んで手作りキャンプをしていました。医療検査もカリアリ大学病院のフルサポートで行うことができました。ただ人力も相当必要で、毎年苦労していました。3年前からはミラノ市のこの休暇の家にミラノの子ども達と同じ条件で、受け入れてもらえることにとなりました。
20人の福島の子どもが100人以上のミラノの子どもたちと1ヶ月の生活を供にします。毎日目の前にある海に行き、ドッジボールやカード遊びをして、余暇を満喫しています。デジタルは禁止で自然にたっぷり触れて過ごします。
ドッジボールは暑くない時間帯に遊びます。
折り紙、書道などの国際交流ラボも行います。
ミラノに話を戻しますと、こうした休暇の家を運営できる財力を持っている市町村は、イタリア中でミラノだけだそうです。数年前までは北イタリアの工業都市トリノ市も近くに施設を持っていたそうですが、売却されてしまったとのこと。
多数の施設運営スタッフ、アニマトーレと言われる子どもを担当する教育者(彼らはミラノ市スタッフではなく、ミラノ市と契約している教育者組合から派遣されます)、24時間交代で常駐する看護婦の方々、毎日のお掃除にランドリースタッフ、と相当なコストがかかってもこの施設がフルに稼働しているのは、ミラノ市の考え方「すべての子どもたちにバカンスを享受する権利がある」にに拠るものです。
夏休みの間、ミラノの子どもたちは2週間が滞在単位。ミラノからのバス、滞在中の食事代、宿泊費、アクティビティなど含め、滞在費は日本円で2万円ほど。親の収入が少ない場合には、さらに参加費が安くなるようです。当然、市がかなり負担していることが伺えます。
イタリア人の子どもの夏休みは3ヶ月。経済的に余裕がある人たちは、こうしたコローニャと言われる施設には子どもを預けることはあまりないようで、参加する子どもたちは親にバカンスに連れていってもらえないケースが多いよう。ミラノ市はイタリアの中でも移民の比率も高いですから、今年は半分近くが移民の子どもたちでした。
障害のある子どもたちも休暇の家に受け入れていることに感動しました。ただし、アニマトーレがその子どもに専属でひとり、場合によっては二人つくことで、健常者と同じように2週間過ごすのです。イタリアの公立学校では、インクルーシブ教育と言ってダウン症の子どもであろうと、身体的に障害を追っている子どもであろうと、健常者の子どもと一緒に授業を行います。日本の学業に偏った教育だったら、同じクラスの親から批判がでそうですが、イタリアのこの垣根を作らない政策は、人間として成長する上で素晴らしいと思います。行政としては負担が大きいと思いますが、当たり前にできていること、感動します。
休暇の家のスタッフの方々が、毎年歓迎のポスターを作って待っていてくださいます。
食事にもミラノ市の考え方が反映されています。朝のヨーグルトやミルク、ランチに使うオリーブオイルなどの食材は、基本的にすべてBIO (オーガニック)!食が心と身体を作るという精神が浸透してないと、高い食材を選択することはできないでしょう。
この休暇の家を知ることでミラノ市、そしてイタリアにがまた好きになりました。ただ市の政策は、そのときの市政の政治色が色濃く反映されます。現在のミラノ市長ジュゼッペ・サラ氏は中道左派。イタリア中が右側に傾き始めている今も、「ミラノは人道的なあり方を、1ミリも変えるつもりはない」と宣言し、右派ポピュリズムの現政府の政策を鋭く批判しています。
ミラノ市市長の任期は5年。サラ氏は2021年まではミラノ市政を司ります。2011年の選挙で中道右派から中道左派に市政が変わったときに、市のスタッフも大きく入れ替わったと聞きました。2016年の選挙も僅差で中道右派に勝利したサラ氏。はたして再選になるか。休暇の家が、どうかずっと健在でありますように。
今年の夏は、休暇の家に再びお世話になります。オルト・デイ・ソーニの保養が終了する8月中旬の週末に施設の方々にご挨拶し、子どもたちとマルペンサ空港に向かいます。毎年1ヶ月をイタリアで過ごした子どもたちは、日焼けして外見も、そして何よりも精神も随分たくましくなって福島に帰っていきます。異文化の中で集団生活を1ヶ月も乗り切るのですから、その体験は彼らの今後に大きな影響を及ぼすこと、過去7年間でたくさんの事例を見てきました。
1ヶ月子どもたちと滞在してボランティアをしてくださるのは、ヴェネツィアの名門カ・フォスカリ大学の日本語学科の生徒さんたち。日本とイタリアの架け橋が、少しずつ太くなればと祈っています。
1ヶ月を子どもたちと過ごしてくれる、今年の若手ボランティアのみなさんと。私の担当最終日に子どもたちがサプライズで歌をプレゼントしてくれました。
FBでも保養の様子をご覧いただけます。ぜひ、ご覧ください!https://www.facebook.com/ortodeisogni.org/
そして賛助会員になっていただくことでご支援いただけたら幸いです!
長い文章、お付き合い有難うございました。
*前回のブログで言及いたしました、ミラノで行われる週末イベントをアップできておりませんでした。街中で450ものコンサートがほぼ無料で行われる”Piano City ピアノシティ”と、歴史的建造物の邸宅が一般に無料で解放される” Cortili Apertiコルティーリ・アペルティ”が同時に開催されていました。遅れて失礼いたしました!
先週おやすみをいただいて、リグーリア州の海岸沿いの街・ピエトラリグレにあるミラノ市が運営する”Casa Vacanza 休暇の家”に1週間滞在していました。この施設はミラノ市の小学生を対象とした、いくつかある休暇の家のひとつで自然学校などの目的で、年間を通して多くのミラノの子どもたちが利用しています。
「ミラノ市 休暇の家」https://progettoestatevacanza.it/
20人の大部屋が10部屋以上。地上階はラボや図書館、子どもディスコまで。
庭にはオリーブの樹(もちろんタジャスカ種)がたくさん植えられています。
最上階からの眺め。
休暇の家の入口、オフィスや看護室。
200人の子どもが宿泊できるようになっている施設には、大勢のスタッフの方が勤務しています。その方々は、リグーリアに暮らそうとも、ミラノ市の職員。オフィスの連絡先はリグーリアにあろうとも、ミラノの市外局番02のまま。車もComune di Milano(ミラノ市)とロゴが入っていて、リグーリアの中のプチミラノのようです。
なぜこちらにお世話になったかというと、友人たちと運営しているNPO団体”Orto dei Sogni オルト・デイ・ソーニ(夢を育む小さな畑)”の1ヶ月のプロジェクトにおける、最初の1週間のボランティアとして滞在させていただきました。
「オルト・デイ・ソーニ」http://www.ortodeisogni.org
オルト・デイ・ソーニは、イタリアにて福島のこどもたちの1ヶ月の保養を行っており、今年で8年目となります。
今まで通算132人の子どもがイタリアにやってきました。保養とは、放射能の危険がない環境で1ヶ月過ごすことで身体を一度リセットすることです。実際に、参加した子どもの体内のセシウム値はゼロになる子も過去に何人かおり、毎年の平均値では体内の放射線量は約半分に減少しています。(ミラノ大学物理学部の協力で、尿検査の結果)保養の効果としては、身体も心も強くなり、その効果は戻っても1年間続くという研究結果もでています。異文化=様々な価値観の社会の存在を知ることは、彼らの夢見る力を大きくし、ワクワクは身体をより逞しくすると実感しています。 海風と砂浜はデトックス効果が高いので、できるだけ毎日海へ。
最初の5年間はサルデーニア島のマルッビゥ市の協力により、利用していない市の施設などを借りて、ベッドや洗濯機など何から何まで持ち込んで手作りキャンプをしていました。医療検査もカリアリ大学病院のフルサポートで行うことができました。ただ人力も相当必要で、毎年苦労していました。3年前からはミラノ市のこの休暇の家にミラノの子ども達と同じ条件で、受け入れてもらえることにとなりました。
20人の福島の子どもが100人以上のミラノの子どもたちと1ヶ月の生活を供にします。毎日目の前にある海に行き、ドッジボールやカード遊びをして、余暇を満喫しています。デジタルは禁止で自然にたっぷり触れて過ごします。
ドッジボールは暑くない時間帯に遊びます。
折り紙、書道などの国際交流ラボも行います。
ミラノに話を戻しますと、こうした休暇の家を運営できる財力を持っている市町村は、イタリア中でミラノだけだそうです。数年前までは北イタリアの工業都市トリノ市も近くに施設を持っていたそうですが、売却されてしまったとのこと。
多数の施設運営スタッフ、アニマトーレと言われる子どもを担当する教育者(彼らはミラノ市スタッフではなく、ミラノ市と契約している教育者組合から派遣されます)、24時間交代で常駐する看護婦の方々、毎日のお掃除にランドリースタッフ、と相当なコストがかかってもこの施設がフルに稼働しているのは、ミラノ市の考え方「すべての子どもたちにバカンスを享受する権利がある」にに拠るものです。
夏休みの間、ミラノの子どもたちは2週間が滞在単位。ミラノからのバス、滞在中の食事代、宿泊費、アクティビティなど含め、滞在費は日本円で2万円ほど。親の収入が少ない場合には、さらに参加費が安くなるようです。当然、市がかなり負担していることが伺えます。
イタリア人の子どもの夏休みは3ヶ月。経済的に余裕がある人たちは、こうしたコローニャと言われる施設には子どもを預けることはあまりないようで、参加する子どもたちは親にバカンスに連れていってもらえないケースが多いよう。ミラノ市はイタリアの中でも移民の比率も高いですから、今年は半分近くが移民の子どもたちでした。
障害のある子どもたちも休暇の家に受け入れていることに感動しました。ただし、アニマトーレがその子どもに専属でひとり、場合によっては二人つくことで、健常者と同じように2週間過ごすのです。イタリアの公立学校では、インクルーシブ教育と言ってダウン症の子どもであろうと、身体的に障害を追っている子どもであろうと、健常者の子どもと一緒に授業を行います。日本の学業に偏った教育だったら、同じクラスの親から批判がでそうですが、イタリアのこの垣根を作らない政策は、人間として成長する上で素晴らしいと思います。行政としては負担が大きいと思いますが、当たり前にできていること、感動します。
休暇の家のスタッフの方々が、毎年歓迎のポスターを作って待っていてくださいます。
食事にもミラノ市の考え方が反映されています。朝のヨーグルトやミルク、ランチに使うオリーブオイルなどの食材は、基本的にすべてBIO (オーガニック)!食が心と身体を作るという精神が浸透してないと、高い食材を選択することはできないでしょう。
この休暇の家を知ることでミラノ市、そしてイタリアにがまた好きになりました。ただ市の政策は、そのときの市政の政治色が色濃く反映されます。現在のミラノ市長ジュゼッペ・サラ氏は中道左派。イタリア中が右側に傾き始めている今も、「ミラノは人道的なあり方を、1ミリも変えるつもりはない」と宣言し、右派ポピュリズムの現政府の政策を鋭く批判しています。
ミラノ市市長の任期は5年。サラ氏は2021年まではミラノ市政を司ります。2011年の選挙で中道右派から中道左派に市政が変わったときに、市のスタッフも大きく入れ替わったと聞きました。2016年の選挙も僅差で中道右派に勝利したサラ氏。はたして再選になるか。休暇の家が、どうかずっと健在でありますように。
今年の夏は、休暇の家に再びお世話になります。オルト・デイ・ソーニの保養が終了する8月中旬の週末に施設の方々にご挨拶し、子どもたちとマルペンサ空港に向かいます。毎年1ヶ月をイタリアで過ごした子どもたちは、日焼けして外見も、そして何よりも精神も随分たくましくなって福島に帰っていきます。異文化の中で集団生活を1ヶ月も乗り切るのですから、その体験は彼らの今後に大きな影響を及ぼすこと、過去7年間でたくさんの事例を見てきました。
1ヶ月子どもたちと滞在してボランティアをしてくださるのは、ヴェネツィアの名門カ・フォスカリ大学の日本語学科の生徒さんたち。日本とイタリアの架け橋が、少しずつ太くなればと祈っています。
1ヶ月を子どもたちと過ごしてくれる、今年の若手ボランティアのみなさんと。私の担当最終日に子どもたちがサプライズで歌をプレゼントしてくれました。
FBでも保養の様子をご覧いただけます。ぜひ、ご覧ください!https://www.facebook.com/ortodeisogni.org/
そして賛助会員になっていただくことでご支援いただけたら幸いです!
長い文章、お付き合い有難うございました。
*前回のブログで言及いたしました、ミラノで行われる週末イベントをアップできておりませんでした。街中で450ものコンサートがほぼ無料で行われる”Piano City ピアノシティ”と、歴史的建造物の邸宅が一般に無料で解放される” Cortili Apertiコルティーリ・アペルティ”が同時に開催されていました。遅れて失礼いたしました!