マンマの紹介
- マリア=ローザ・ディ・ロレンツォ(Maria Rosa de Lorenzo)さん
- カラブリア州コゼンツァ県アプリリアーノ村在住
- 得意料理:旬の食材を無駄にしないリサイクルレシピ。アプリリアーノ村郷土料理
お料理説明・背景
カラブリア州の農村部には、高価だったお肉の替わりに固くなってしまったパンや柔らかくゆでたナスを使うレシピがたくさんあります。
焼きあがってから時間が経ち、そのままでは食べることができないほど固くなってしまったパンを余すことなく有効利用できるリサイクルレシピでもあり、早生は6月頃から晩生は9月下旬まで収穫できる、カラブリア州の夏を代表する野菜・ナスを使うことで、お肉を使わずとも満足できる一品にしようとした、農家さんの知恵が詰まったレシピたち。ナスをゆでたり生のまま使ったり、最終的に揚げたり焼いたりするレシピバリエーションが村ごと・家庭ごとに存在します。
その中でもマリアさんの住むアプリリアーノ村のレシピは一風変わっていて、ナスと固くなったパンで「具」を作り、これまた夏を代表する野菜・ペペローネに詰める、いわばダブル夏野菜な一品。 通常は身を除いたナスの皮の部分を「器」に見立てて詰め物をするものだけれど、ペペローネを使うことでナスの風味にペペローネの味もプラス。贅沢に夏の味覚を楽しめる一品になっています。
アプリリアーノ村で一般に使われるペペローネは「コルノ(Corno)」と呼ばれる細長い形のもの。ゆでても揚げても生でもおいしく、このレシピのようにゆでて「器」として使ったり、これまた特産のシラのジャガイモと一緒に揚げたり、生のまま小さく切ってサラダに加えたりと万能に使えます。
実は、ナポリ土産としてよく見かける白装束に黒マスクのお人形・プルチネッラ(Pulcinella)が抱えている唐辛子のような物がこのコルノ。コルノを幸運のお守りとする大衆信仰があるぐらい、ナポリから北部カラブリアには無くてはならない食べ物なんです。
北部カラブリアでは、コルノがまだ緑色のうちに使います。(唐辛子のように熟すと真っ赤になります)
食卓に必ずあるニンニクとチーズ、固くなってしまったパン・夏の間はたくさん採れるナスを使い、後は愛情をこめてこねるだけ。
「こねすぎないのが難しいのよ」とマリアさんは言います。
そして、「具」やペペローネが余ったら別に保存しておくと、ペペローネを細切りして「具」と一緒にオリーヴオイルで炒めてパスタ用の簡単野菜ソースにしたり、ヘタのところも含め小さく切ったペペローネと「具」を一緒にこねて小さく丸め、カリッと揚げて前菜にしたりするリサイクルレシピがマリアさんの勧め。無駄を出さずにおいしくがマンマらしい。
かつて学校事務として活躍されたマリアさんは若くして未亡人に。小さな子を3人抱え、仕事に家事に邁進されました。 とてつもなく貧しかったわけでないけれど、食べ盛り3人にいつもお肉を食べさせることができなかった。だから、せめて旬のおいしいものをお腹いっぱい食べさせてあげたい。 マリアさんにとっては、そんな気持ちでキッチンに立っていた昔を思い出す一品。 今では娘さんがレシピを受け継ぎ、嫁ぎ先でも作っているんだそう。思い出と共に世代を超えて受け継がれるレシピです。
カラブリア州コゼンツァ市在住のコーディネーター・通訳・翻訳。スキーと食べ物を愛するAB型。一応ソムリエ。カラブリア州の毎日の生活は「カラブリア.com」にて紹介中。
作り方
- ナスは半分に切って、くたくたになるまでゆでておく。お好みで皮を剥いてゆでてもよい。ゆであがったらざるに揚げて軽く水切りしておく。
- ペペローネは丸ごとゆでて、ゆであがったら半分に切って種を取っておく。(写真a 参照)
- 固くなったパンはボウルに張った水に浸け、軟らかくなったら軽く水を絞っておく。
下ごしらえ
- ぎゅっと絞ったナス、パンに卵を合わせてこねたら、みじん切りにしたイタリアンパセリとニンニク、サイコロ切りしたカッチョカヴァッロチーズを加えてこねる。(写真b 参照)
- 半分に切ったペペローネにナスとパンで作った「具」を詰める。(写真c 参照)
- 軽くバターを塗った耐熱容器に「具」を詰めたペペローネを並べる。(写真d 参照)
- ペペローネの表面にパルミジャーノ・レッジャーノをふりかけ、その上からトマトソースを塗るようにのせる。(写真e,f 参照)
- 180℃のオーブンで、表面のトマトソースがしっかり乾くまで約30分焼きあげる。
- オーブンから出し、少し冷ましてからいただく。冷えてもおいしいので、ピクニックにもぴったり。