短い春先のヴェネツィアのお楽しみ、モエーケを食す
「モエーケ(moeche)」とは、ヴェネツィアのラグーナで漁れる脱皮ガニのこと。グランキオ・ヴェルデ(ミドリガニ)と呼ばれているカニの脱皮したてのものを指す。
今やヴェネツィアの季節の食材として知られているが、実はヴェネツィアにおいても食の歴史としては近年のもので、戦後にブラーノの漁師によってその捕獲のノウハウを得ることで、ヴェネツィアの珍重食材として知られるようになったとか。
とにかく、脱皮してから数時間のうちに捕獲しなければならず、またそれに至るまでにも非常に手間のかかる大変にデリケートなものである。そして、その季節も限られていて、3-4月にあたるクアレージマ(quaresima)と10-11月にあたるフラエーマ(fraèma)がそれにあたる。ただし、それらはオスに該当するもので、メスはクレアージマの終りにあたる時期以降のみに脱皮をするので、捕獲時期がずれ、5月ごろとなる。
ちなみにその時期以降のメスは産卵するため脱皮はせず、夏以降のものは殻が固くなる。そうなるともう「モエーケ」とは呼ばず、「マゼネーテ(masenete)」と呼ばれるようになるが、それもまたヴェネツィア人の大好物の食材のひとつとなっている。
モエーケの捕獲には、ラグーナにて捕獲用の箱が仕掛けられる。その中にあらかじめ選別されたカニが網に入れて集められる。1日のうちに何度かそれらを観察し、脱皮が近いものはさらに選り分けられ、脱皮したてのものだけを捕獲し、出荷される。
捕獲場はラグーナの北部側が最も盛んな場所ではあるが、ヴェネツィアの漁港の町、キオッジャ周辺なども盛んに行われている。この辺りは、アサリやムール貝の養殖もされている場所だ。
ヴェネツィアでは、モエーケは生きた状態の超新鮮なもののみにその利用価値があるため、そのほとんどはすぐに料理店に運ばれる。もちろん市場に運ばれるものもあるが、そこで入手するものも、やはり生きたもの。足をゴソゴソとさせたのが、発泡スチロールの箱に山積みされている。値段もそれなりなので、この場合には、重量ではなく数を伝えて購入。
ヴェネツィアのリアルト市場は魚市場で有名だが、キオッジャには朝3時半と午後2時半から開かれる業者用の卸市場(業者証保持者のみ入場可)と、カナーレ(運河)沿いの赤いひさしが目印の一般向け市場との2箇所の魚市場がある。
一般開放のものは、ヴェネツィアのそれに比べるとさらに庶民的な雰囲気。モエーケの漁獲場とはいえ、キオッジャの市場には、1㎏あたり約60ユーロほどの値がつけられる高価なモエーケは意外と少なかったりもする。
さて、モエーケの調理法は、油で揚げる、いわゆるフリットだ。この場合、モエーケはやはり生きているものである必要がある。
なぜなら、揚げる前の数時間、卵液に漬け、カニに卵液を吸わせるため。卵液を十分に吸い込んで腹の中が卵液でいっぱいになったら、表面に粉をまぶして高温の油でカラリと揚げる。
殻ごと揚げて周囲がカリッ、中は卵でふっくりと膨れてジュワッとし、濃厚な味わいがモエーケのフリットの美味しさ。
他にはない美味しさ。一度食すべし!の食材だ。
今やヴェネツィアの季節の食材として知られているが、実はヴェネツィアにおいても食の歴史としては近年のもので、戦後にブラーノの漁師によってその捕獲のノウハウを得ることで、ヴェネツィアの珍重食材として知られるようになったとか。
とにかく、脱皮してから数時間のうちに捕獲しなければならず、またそれに至るまでにも非常に手間のかかる大変にデリケートなものである。そして、その季節も限られていて、3-4月にあたるクアレージマ(quaresima)と10-11月にあたるフラエーマ(fraèma)がそれにあたる。ただし、それらはオスに該当するもので、メスはクレアージマの終りにあたる時期以降のみに脱皮をするので、捕獲時期がずれ、5月ごろとなる。
ちなみにその時期以降のメスは産卵するため脱皮はせず、夏以降のものは殻が固くなる。そうなるともう「モエーケ」とは呼ばず、「マゼネーテ(masenete)」と呼ばれるようになるが、それもまたヴェネツィア人の大好物の食材のひとつとなっている。
モエーケの捕獲には、ラグーナにて捕獲用の箱が仕掛けられる。その中にあらかじめ選別されたカニが網に入れて集められる。1日のうちに何度かそれらを観察し、脱皮が近いものはさらに選り分けられ、脱皮したてのものだけを捕獲し、出荷される。
捕獲場はラグーナの北部側が最も盛んな場所ではあるが、ヴェネツィアの漁港の町、キオッジャ周辺なども盛んに行われている。この辺りは、アサリやムール貝の養殖もされている場所だ。
ヴェネツィアでは、モエーケは生きた状態の超新鮮なもののみにその利用価値があるため、そのほとんどはすぐに料理店に運ばれる。もちろん市場に運ばれるものもあるが、そこで入手するものも、やはり生きたもの。足をゴソゴソとさせたのが、発泡スチロールの箱に山積みされている。値段もそれなりなので、この場合には、重量ではなく数を伝えて購入。
ヴェネツィアのリアルト市場は魚市場で有名だが、キオッジャには朝3時半と午後2時半から開かれる業者用の卸市場(業者証保持者のみ入場可)と、カナーレ(運河)沿いの赤いひさしが目印の一般向け市場との2箇所の魚市場がある。
一般開放のものは、ヴェネツィアのそれに比べるとさらに庶民的な雰囲気。モエーケの漁獲場とはいえ、キオッジャの市場には、1㎏あたり約60ユーロほどの値がつけられる高価なモエーケは意外と少なかったりもする。
さて、モエーケの調理法は、油で揚げる、いわゆるフリットだ。この場合、モエーケはやはり生きているものである必要がある。
なぜなら、揚げる前の数時間、卵液に漬け、カニに卵液を吸わせるため。卵液を十分に吸い込んで腹の中が卵液でいっぱいになったら、表面に粉をまぶして高温の油でカラリと揚げる。
殻ごと揚げて周囲がカリッ、中は卵でふっくりと膨れてジュワッとし、濃厚な味わいがモエーケのフリットの美味しさ。
他にはない美味しさ。一度食すべし!の食材だ。