マンマのレシピ

マンマの紹介

  • パオラ・ミナーレ(Paola Minale)さん
  • リグーリア州ジェノヴァ在住
  • 得意料理:海の幸のリゾット

お料理説明・背景

「ラザーニャ・アル・ペストそれともラザーニャ・アル・ペスト・アル・フォルノ?」とレシピの取材をする前日に、今回お願いするマンマのパオラさんから電話がかかってきました。ラザーニャ・アル・ペストはペストジェノヴェーゼをラザーニャの生地にかけたものです。それでも何の変哲もないので、躊躇なくオーブンで焼くラザーニャ・アル・ペスト・アル・フォルノをお願いしました。

ジェノヴァ人にとってペストは食生活の中心に位置します。 材料となるバジルはジェノヴァのプラという地方で採れたものでなくてはいけません。ちょっとでも内陸地に入るともう香りが変わってしまいます。ジェノヴァの人はプラ以外で採れたバジリコのことを邪道だと思っていて、「ありゃ、バジリコじゃないね。ミントだね。」とフンと鼻で笑います。 確かにプラで採れたバジリコは香りが抜群に違います。葉も小さくて柔らかく、色も綺麗なエメラルドグリーンです。ジェノヴァ人の誇りは冒険家のコロンブスでも超絶技巧で知られる作曲家のパガニーニでもイタリア統一運動の立役者マッツィーニでもありません。このバジリコなのです。

最近ではペストジェノヴェーゼのチャンピオン大会も2年に1度開催され、世界中から参加者がやってきます。

ジェノヴァの家庭には必ずバジリコをすり潰すための大理石の乳鉢があります。パオラさんも祖母から譲りうけたという乳鉢を見せてくれました。が、普段はミキサーを利用しているそうです。今回のレシピもミキサーを使ってみせてくれました。 乳鉢を使ってすり潰すのはそれなりの技術が必要ですし、時間もかかります。アレルギー専門のお医者さんであるパオラさんは上手に時間を節約しています。でも絶対に手を抜かないのはバジリコを洗った際についた水分を丁寧にとること。「水分が残っているとビチャーとしたとんでもないものになっちゃうのよ。」と笑って話してくれました。

今回のラザーニャ・アル・ペスト・アル・フォルノはジェノヴァ独特のレシピです。普通ラザーニャとい言えば、ひき肉と野菜がたっぷり入ったトマトソース味ですが、ジェノヴァ風のラザーニャは違います。バジリコの緑が美しい料理です。 コツはペストジェノヴェーゼをはさんで重なったラザーニャをオーブンで下焼きしてから最後にたっぷりペストジェノヴェーゼをのせてもう一度焼くことです。こうすることによって、バジリコの新鮮な風味が保たれます。オイルに火が通る時間も少なくなるので仕上がりも軽くなり、お腹にもたれることがなくなります。

パオラさんの家系の女性はとても年長者が多いのですが、元気で肌も綺麗です。そういえば、リグーリアはイタリアの中でも一番長生きの人が多い街です。 ジェノヴァは平坦な土地が少ないため、牛や豚などを飼育できません。そこで、ウサギ、鳥などの白身の肉、魚などから良質のたんぱく質を摂ってきました。また、野菜の種類も多いことから食物繊維もたくさん摂取できます。つまり、海の幸と山の幸を両方取り入れたバランスの良い食生活を送ってきているのです。 そして、リグーリア産のオリーヴオイルは他の産地のものより抗酸化力が強いです。しかし、なんといっても健康の秘訣は素材を生かした料理法にあります。オリーヴオイルは生で食してこそ、体に良い成分が吸収されるのです。調理中は最低限のオイルで済ませ、最後にたっぷり加えるのがオリーヴオイルの正しい使い方。その点、ペストジェノヴェーゼは体に良い料理の代表的存在、と言っていいでしょう。

今回、一度オーブンで焼いたラザーニャの上に再度ペストジェノヴェーゼをのせて焼くのは風味とオリーヴオイルの効用を逃さないため。 パオラさんのお気に入りの素材の新鮮さを生かした料理、「魚のオーブン焼き」や「トリュフで香りづけした生エビとザクロあえ」などは見た目も美しく簡単でおいしいです。

ペストジェノヴェーゼがあまったら、ミネストローネにいれるのもジェノヴァ風です。 パスタだけでなく、色々楽しめるペストジェノヴェーゼのよさをもっと知って頂きたいとパオラさんからのメッセージでした。

最後に、今回の写真は昨年行われたペストジェノヴェーゼ世界チャンピオン大会からのものです。日本からの参加者をお待ちしております!

レポート:赤沼 恵(Megumi Akanuma)
リグーリア州在住。音楽家、翻訳家、日本語教師、2018年3月ジェノヴァ市長より「世界のジェノヴァ大使」任命、アソシエーション「DEAI」代表。地域越えて,様々な仕事を通して知り合った人との付き合いを大切にしている。

材料

ジェノヴァ風ラザーニア4人分(20×30cm)

・ラザーニャ生地300g

ホワイトソース

・牛乳500ml
・小麦粉40g
・バター(無塩)40g
・ナツメグ少々
・塩小さじ1

ペストジェノヴェーゼ

・新鮮なバジリコ10束(葉が約300g)
・リグーリア産エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル約大さじ3
・パルミジャーノ・レッジャーノ80g
・ペコリーノ・サルド40g
・松の実90g
・ニンニク1片
・塩少々

作り方

    ホワイトソース

  1. 鍋にバターを入れ、溶けたら小麦を入れて溶かしながらかき混ぜる。(写真a 参照)
  2. 小麦粉がバターとよく混じりあったら牛乳を一気に注ぐ。(これがパオラ流です。)(写真b 参照)
  3. 10分ほどひたすらかき混ぜ、滑らかなソースになったら塩とナツメグで味をととのえる。(写真c 参照)

    ペストジェノヴェーゼ

  1. バジリコの葉をちぎってとる。(写真d 参照)
  2. 軽く洗って水気を切り、布の上にのせてさらに水気を拭きとる。(写真e 参照)
  3. パルミジャーノ・レッジャーノとペコリーノサルドを削る。(写真f 参照)
  4. ミキサーにまず、ニンニクを入れ、次に松の実を入れてスイッチオン。(写真g 参照)
  5. その上にバジリコ、予め削っておいたチーズ2種を入れてまたスイッチオン。(写真h 参照)
  6. 松の実、チーズ、バジリコを入れてスイッチオンする作業を繰り返す。(写真i 参照)
  7. オリーヴオイルは最後に加える。(写真j 参照)
  8. 味見をして、塩、またはペコリーノサルドを加えて味を整える。(写真k 参照)

作り方

  1. お湯を沸かして、ラザーニャを2枚ずつ2~3分ほどゆでていく。(写真l 参照)
  2. ゆでた生地は一度布巾の上に置いて水気をとる。(写真m 参照)
  3. ラザーニャの容器にまず、ホワイトソースをひく。(写真n 参照)
  4. その上にラザーニャの生地を敷く。(写真o 参照)
  5. ホワイトソースをのせ、上からパルミジャーノチーズを削る。(写真p 参照)
  6. ペストジェノヴェーゼをのせる。(写真q 参照)
  7. 4の生地を敷く作業~6の作業を繰り返す。(写真r 参照)
  8. 4段できたら、生地をかぶせ、その上にホワイトソースをのせる。(写真s 参照)
  9. 温めておいたオーブンに入れて150度で15~20分焼く。(写真t 参照)
  10. 薄く焦げ目がついたところで取り出し、残りのペストジェノヴェーゼを全部のせて更に150度で10分焼く。(写真u 参照)
  11. できあがり。(写真v 参照)
  • a. バターを溶かし粉を加える
  • b. 牛乳を一気に注ぐ
  • c. 10分ほどかき混ぜ味をととのえる
  • d. バジリコの葉をちぎる
  • e. 布の上でしっかり水気をふきとる
  • f. チーズを削る
  • g. ニンニク、松の実をミキサーにかける
  • h. バジリコ、チーズを加える
  • i. 混ざったらまた繰り返し少量ずつ行う
  • j. 最後にオイルを加える
  • k. 味をととのえる
  • l. ラザーニャをゆでる
  • m. 布巾の上に取り出し水気をとる
  • n. まずホワイトソースをひく
  • o. その上にラザーニャの生地を敷く
  • p. ホワイトソースをのせ、チーズを削る
  • q. ペストジェノヴェーゼをのせる
  • r. 4~6の作業を繰り返す
  • s. 生地の上にホワイトソースをのせる
  • t. オーブンで焼く
  • u. 取り出しペストジェノヴェーゼをのせる
  • v. 再度焼いたらできあがり

お料理ポイント

塩をほとんど使わないのがパオラさん流。味見をして塩気が足りないなと感じたらペコリーノサルドを足してください。調理の途中でなく、食べる直前に塩を振りかけると塩味が引き締まってぐっとおいしくなります。
ペストジェノヴェーゼを作る際にバジリコ、チーズ、松の実を入れてスイッチオンする作業を繰り返すのは、この方が滑らかなペーストができるから。一度に入れると水分が出たりなどして、うまくいきませんので、少しずつミキサーにかけてください。オリーヴオイルは最後に加えます。