ミラノ 運河沿いのアンティークマーケット
毎月待ち遠しい、最終日曜日。それは、ミラノの南部ナヴィリオ運河沿いに骨董市が立つ日。田舎などで行われる、プロ向けのmercato antiquarioアンティークマーケットとは違い、一般向けのこの市は、のんびりと8時過ぎから準備が始まり、9時過ぎになってフルラインアップ、という感じでゆったりとした雰囲気が散歩にも楽しいメルカート(市場)。
最近はなぜか大変な混み方で、出遅れて午後に出かけたりすると、歩くのも困難なほど。私が通い始めて7,8年になると思うのですが、面白いな、と思うのは最近の露天の傾向が変わったこと。市場原理のようなものがこうした市場にもしっかり働いていて、急増中の中国人観光客をターゲットにした、中国風の古物や、翡翠を使ったジュエリー、ブランドのヴィンテージのお洋服などの取り扱いが随分と増えたように感じます。
美術品、ファッション関連の出店も多いですが、変わったところでは、カメラ専門の屋台や、ある時代を専門にしたデザイナー家具、アフリカや中東の古物、アンティークリネンや、銅の古道具など、扱われるものは、ほんとうに多種多様。それが無尽蔵に運河沿いにずらりと300店も出店しているのです。
露天が毎回店を構える場所はほぼ決まっていて、必ずチェックする場所が5つほどあります。どれも、台所の古道具ばかりなのですが。
ごくシンプルな白いオーバルの大皿。使いこまれた感じに風情があり、どのくらい長い間、どんな食卓で使われたんだろう?と想像したくなります。好きなので、たまに出会うとつい買ってしまい、結果何枚も似たようなものを持っている始末。どれも使い勝手がよいので、愛用しています。でももうやめなくちゃ(笑)。
ボコボコにちょっとゆがんだ、間が抜けたようなオタマ。これも手作り感、世界にひとつだけ感が楽しくて愛用中。いくつあってもまだ欲しくなってしまうのが、古いバスケット。そろそろ狭い我が家も限界になってきたので、自制中ですが、それでも目に止まり欲しくなってしまいます。アンティークリネンがひたすら欲しくなるのも、病気のひとつ。キッチンタオルだけでなく、テーブルクロスや、ベッドリネンも気にいるとつい買ってしまい、、、日常的に愛用していますが、それでももうやめないと。たらん、とするほど使い込んだ真っ白な麻に赤い糸で家族のイニシャルが施された刺繍や、愛らしい柄が丁寧に施されているのを見ると、どうしてもクラッとしてしまうのです。
欲しくなるものはどれも手軽な価格のものばかりですが、狭い我が家ゆえ場所的にも買えるものは限られているので、真剣(笑)。もう今日こそは買うのをやめようと思っても、骨董との出会いはまさに一期一会、胸がときめきます。それらの品の存在を通して100年前、200年前の暮らしが浮かびあがってくるようで、特別な楽しさがあります。また丁寧に使われたものを、受け継ぐ喜び、というか。一つひとつに手の温もりを感じられる品、いまはありえないような時間をかけて丁寧に仕上げられた品。時を経ることで磨かれいく”用の美”。それにどうしても心惹かれ、今日もやっぱりやめられない、、に。
下の写真は、スイスに近い村から出店している方の露天。背負えるようになっている縦長のミルク運びの木の桶ふたつ。その間にある、使い込まれてツルツルになった大きな針のようなもの2つ(お皿の右斜め上)は、山のような干草を馬に乗せて固定する際に、ロープで縛り付けるためのものだそう。
持ち合わせが足りなくて(幸い)買えなかった、下の写真の中央に見える、テニスラケットのような形の二つの木の品。モダンアートのオブジェか、はたまたアフリカの飾り物のように見ますが、正体はなんと昔これで洗濯物をバンバンとたたいていたもの。右側の少し頭でっかちの方は、洗濯だけでなく、毛物でフェルトを作っていた、と露天主さんが説明してくれました。
上の写真は、バターの型抜きに、パン切りトレイ。ツルツルになるまで使いこまれた木の美しさ。時間と人の手が作り上げていく美しさ。足を運ぶたびに新しい出会いがあり、そして質問するたびにまた学びがあり。
私の骨董市通いは、まだまだ続きそうです。
ナヴィリオは下町だった場所。かつて住人が洗濯をした場所(写真下)も残っています。宮崎駿監督の「Porto Rosso 紅の豚」の舞台でもあります。人が多過ぎなければ、気持ちよくランチやアペリティーボにもいい場所です。
ミラノにいらっしゃる際、最終日曜日でしたらぜひ訪ねてみてください。
地下鉄駅:ミラノ地下鉄 Porta Genova駅からすぐ。
開催日はこちらでチェックください。http://www.navigliogrande.mi.it/eventi/
月の最終日曜日、午前9時から18時ぐらいまで。