お料理説明・背景
聖フランチェスコ―イタリアの守護聖人である彼は小鳥にも神の教えを説いたと言われ、自然や動物たちにも優しい眼差しを向けた聖人として、日本人にも親しみを感じさせる聖人の一人です。彼の生涯は何度も映画化されたのでご存知の方も多いでしょう。
中央イタリアに位置するアッシジはその聖フランチェスコの街として有名です。丘の上に立つ大聖堂は白く美しく輝き、聖人が散策した小鳥の囀るこの中世の街を歩いていると時を超えた空間にいるような錯覚を起します。
その聖フランチェスコの教えを守り、広めていく使命を授かっているのが、聖フランチェスコ修道士です。
キリスト教には様々な宗派がありますが、庶民から一番愛されているのが、この聖フランチェスコ修道士でしょう。黒や茶、グレーなどの色の修道士服に紐のベルトをぶら下げた彼らは聖フランチェスコの精神に基づき、敬虔な生活を送っています。しかし、実は食を愛し、よく笑い、良く歌いと、こよなく人生を愛する人々でもあるのです。
そんな彼らの食事を20年以上に渡って作って来たのが、ジョリーヴァさん。修道士たちから第二のマンマと慕われてきました。 ジョリーヴァさんが勤務していたのは、丘の上の大聖堂ではなく、ふもとにある小さな修道院でした。ここは聖フランチェスコが弟子と共に最初に修道生活を始めた場所です。教会の中には彼らが暮らした家畜小屋が今でもみられます。というより、家畜小屋を囲って教会が建てられたのです!
この修道院には常に6人ほどの修道士が生活しています。しかし、勉強会や、旅の宿泊所として訪れる修道士たちのために、30人ほどの食事を用意することもあります。中には高血圧で食事制限がある人、ベジタリアンの人、好き嫌いやアレルギーのある人もいるため、食事作りは簡単なことではありません。誰もがおいしく安心して食事ができるようにと気を配ってきたジョリーヴァさんに、修道士たちは感謝し、家族同様に接してきました。時には愚痴を聞いてあげることもあったとジョリーヴァさんは笑います。
今回のレンズ豆のスープは、シンプルなものとサルシッチャ入りのもの2種類手早く作って見せてくれました。みんなの都合に合わせて作るのは面倒じゃないですかと尋ねたら、「人それぞれ色々あるのって当然でしょ。みんなにおいしく食事をしてもらって元気でいて欲しいもの」とサラッと答えてくれました。
このレンズ豆のスープは前菜にもなるし、プリモにもセコンドにもなる優れものです。レンズ豆を食べるとお金が貯まると言われ、年末年始に縁起物として食べるイメージが強いのですが、コルフィオリートというレンズ豆の産地があるこの地方では、年間を通して食されています。
キッチンを彩るデルータ地方の焼き物もウンブリア州の名産品です。ジョリーヴァさんはこの中に自家製のオリーヴオイルを入れて使っています。オリーヴは庭で栽培し、自ら摘み取ったまさにフレッシュオイル。トマトピュレも勿論手作りです。 今回はお孫さんのエレナさんもお手伝いしてくれました。こうやって体にも心にも優しい食事作りが受け継がれていくのでしょうか。昼食時には息子さんご一家がやってきて一同で食卓を囲み、おいしいものを食べながらお喋りを楽しみました。心もお腹も満足。聖フランチェスコも頷いていることでしょう。 いつも微笑みを浮かべながら人の2倍も3倍もの仕事をこなしていくジョリーヴァ。アッシジのマンマにまさに相応しい女性です。
リグーリア州在住。音楽家、翻訳家、日本語教師、2018年3月ジェノヴァ市長より「世界のジェノヴァ大使」任命、アソシエーション「DEAI」代表。地域越えて,様々な仕事を通して知り合った人との付き合いを大切にしている。
作り方
- レンズ豆を水で洗う。(写真a 参照)
- 洗ったレンズ豆を深めの鍋に入れ、たっぷりの水で20分間、中火でゆでる。(写真b 参照)
- 別の鍋にみじん切りにしたニンニク、パセリとサルビア、ペペロンチーノを入れオリーヴオイルを加える。(写真c 参照)
- 中火にかけ香りが立つまでいためる。(写真d 参照)
- 水を加える。(写真e 参照)
- 煮こぼしたレンズ豆を5の鍋に入れ、塩コショウで味を調える。(写真f 参照)
- 20分程度煮込んだらできあがり。(写真g 参照)