マンマの紹介
- アダ・カット(Ada Catto)さん
- ヴェネト州ヴェネツィア市(本島)在住
- 得意料理:肉やトンノのポルペッテ、スカンピ・アッラ・ブーソラ、魚介と季節野菜のリゾットなど 有名オステリアで腕をふるっていたアダさんの噂は、店を退職した後も知る人ぞ知る、といったところ。各所より、人の集まる場での料理のサービス、料理レッスンなどの依頼も多く、忙しい毎日を送っている。だからこそ、リアルト橋のメルカート(市場)に行くと、あちらこちらから声がかかる。魚の購入時などには、特に息の合ったイキなやりとりがなされる。 アダさんの作る料理は、本当にシンプル。手際よく無駄なく仕上げられる。小さな自宅キッチンは、特に専門的な道具があるわけでもなく、飾り気のない彼女を表現しているかのように素朴。それでいてヴェネツィアの香りがプンプンとし、温かみがあって、おいしい。経験豊かな、アダさんならではのヴェネツィア料理だ。
お料理説明・背景
ヴェネツィア料理の代表的な料理のひとつ。よく知られるところでは、「スパゲティ・アッラ・ブザラ」として、プリモピアットで提供されることが多い。仕上がりがソースたっぷりなので、スパゲティと絡めることで、いわゆるピアット・ウニコとなる。また、伝統的な具材としてはスカンピが使われるが、同レシピのように、あえてエビを使うヴェネツィア人もいる。 ちなみにアダさんの働いていたオステリアでは、プリモのメニューとして存在し、スパゲティに絡めるのはエビを具材としたソースで、皿に盛った上にスカンピがのせられる。
「ブザラ風」という名のついた料理だが、一体「ブザラ」とは何か……という点については、明確にはなっていないようだ。 もともとのオリジナルは現在のクロアチアのアドリア海沿岸、イストリア〜ダルマチア地方に起源があるとされる。この地域一帯は、ヴェネツィア共和国の傘下であったこともあり、食文化にも共通項がある。この料理も、アドリア海対岸よりトリエステを経てヴェネツィアへと伝わり、現在のヴェネツィア料理の定番となった。「busara」または「buzara」と表記され、その語源は、「inganno(インガンノ)」や「imbroglio(インブローイオ)」という「ごまかす」という言葉に由来するという。
その昔、漁師たちが好んで食していたのが、甲殻類を中心とする魚介を白ワインやトマトで煮込んだほぼズッパ(スープ)状のもの。その具材としては、今のような立派なスカンピやエビではなく、近海で獲れる小型のそれらだった。それをあたかもごちそうのようにだましだまし食べながらも、実際にはそのうまみたっぷりのズッパを楽しんでいた、という説がある。要は、ただ具材を食べるだけではなく、食べ終わりに皿を舐め回してしまうほど、仕上がるソースがうまい、というのがこの料理。
そして地元でも、よく談義となるのが「アッラ・ブザラ」はトマトを入れるのが本来か否か、というところ。ヴェネツィアでは、専らトマト煮込みにするのが現在の定番となる。
今回は、リアルトの魚屋で入手した、新鮮なマッツァンコッラ(クルマエビ)を使ってアダさんに料理してもらおう。
ヴェネトおよびフリウリを中心に、通訳、翻訳、地元マンマの料理レッスン及び生産者訪問コーディネイト、そして野菜を中心とする農産品の輸出業などの活動を行う。 ブログ『パドヴァのとっておき』にて料理や季節のおいしい情報を中心に、日々のできごとを発信中。
作り方
- エビを掃除する。頭部分をはずし、指で押し出すようにして内部のミソもしっかりと取り出す。(写真a,b 参照)
- 足はハサミで切る。(写真c 参照)
- 鍋にオリーヴオイルとニンニクを入れ、火にかける。(写真d 参照)
- オイルにニンニクの香りがついたらエビを一気に加える。強火で表面に火をいれる。(写真e 参照)
- ペペロンチーノを加え、トマトの水煮を加える。(写真f 参照)
- 軽く塩をし、最初は強火で、沸騰したら中~弱火にし、表面が常にグツグツとしている火加減で約30分煮込む。全体の水っぽさがなくなるくらいが仕上がりの目安とする。(写真g 参照)
- 仕上がり前に味見をし、塩加減を調節する。(写真h 参照)
- ゆでたスパゲティを絡めてもよい。