マンマの紹介
- カーティア・ロナーロ(Catia Lonaro)さん
- アブルッツォ州サンブチェート市在住
- 得意料理:手打ちパスタ全般が得意。ニョッキやピザをはじめ、ティラミスなどのお菓子を作るのも好き。ホテル業の専門学校で調理や接客を学んだ後、レストランやホテルで調理師として働いている。料理が大好きな2人の美人姉妹のマンマ。
お料理説明・背景
今回ご紹介するのは、アブルッツォ州全土で季節や行事問わず広く親しまれている伝統菓子ボッコノット(bocconotto)。このお菓子が誕生したのは、キエティ県で3番目に人口の多い町ランチャーノの郊外に位置するカステル・フレンターノという小さな村だと言われている。
18世紀の後半、ようやくチョコレートやコーヒーがアブルッツォにも入ってくるようになった時代、カステル・フレンターノのある家政婦が美食家だった自分の主人に食べさせてあげようと考案したというのがよく知られている話である。
家政婦はまず、デミタスカップに模した生地にチョコレートとコーヒーを溶かしたものを流し込んで作ってみたが、中身が液状だったため、砕いたアーモンドと卵の黄身を足すことでペースト状にし、生地で再び蓋をして焼き上げ、粉糖をまぶして仕上げる。それを食べた主人は大変気に入り、そのお菓子の名前を尋ねたところ、主人がこのお菓子を一口(un boccone)で食べるの見ていた彼女は、とっさに「ボッコノット」と答えたという。
今は一口で食べるには少し大きなサイズ(直径6〜7cm、高さ2〜3cm)が主流になっているが、当初このお菓子は一口サイズで作るのが一般的だった。コーヒーは液体ではなく粉を入れる場合もある。またBocconottoは、プーリア州やカラブリア州にもありブドウのジャムやブドウの絞り汁を使うが、いずれもアーモンドは欠かさない。現在はアブルッツォでも、ブドウのジャムを使った物、クリームやコーヒー味の物など様々な種類のボッコノットが出回っているし、家庭でもよく作られている。
カーティアが私たちに教えてくれたレシピは、彼女がカステル・フレンターノの女性から習ったレシピを再現したもの。時を経て各家庭の味としてレシピも変化するため、ここではコーヒーは入れずシナモンを加えている。また、生地を作る際にバターではなく当時からより手に入りやすかったオリーヴオイルを使うのも特徴のひとつである。バターを使った焼き菓子に比べて素朴な風味がする。
甘さも控えめでシンプル、また日持ちもするので、おやつやデザート、朝食にと重宝するお菓子である
地域ブランディングを主とした都市計画コンサルタント。2002年、イタリアの暮らしにどっぷり浸りたいとアブルッツォ州に1年間留学。以降、大阪とアブルッツォを行き来する生活を続けている。2009年のラクイラ地震を機にアブルッツォ州紹介サイト「Abruzzo piu’」 を立ち上げ、2016年4月からはフリーペーパー「アブルッツォ通信」の共同発行者として多方面で活動中。
作り方
下ごしらえ(前日)
- 底が厚めの鍋に牛乳、砂糖、チョコレートを入れ火にかける。中火で底が焦げ付かないようにゆっくり混ぜながら砂糖とチョコレートを溶かしていく。(写真a 参照)
- 砂糖とチョコレートが完全に溶けボコボコする状態のまま中火でしっかり混ぜ続けながら煮詰めていく。ミルクの色が濃くなり量も2/3ぐらいまで(シャバシャバ感も)減り濃度も出てくるのが目安。15分ほど煮詰めたら弱火にし、更に5分ほど煮詰めたら火からおろし、水を張ったトレイなどに置いて冷ます。(写真b,c 参照)
- フライパンにアーモンドを入れ、中火で10分ほど煎る。(写真d 参照)
- 煎ったアーモンドは粗熱を取ってミルミキサーで粉砕する。(写真e 参照)
- 牛乳と砂糖で溶かしたチョコレートが人肌程度に冷めたら、粉砕したアーモンド、卵黄、小麦粉を加え、再び火にかけ素早く混ぜ合わせる。最初の5分ほどは弱火で、フツフツしてきたら中火にし10分ほど混ぜながら加熱し水分を飛ばす。(写真f,g 参照)
- 粗熱がとれたらタッパーなどに移し替え、冷蔵庫で一晩寝かせる。(写真h 参照)
作り方
- まずは生地を作る。小麦粉を山盛りにし、中央にくぼみをつくり、卵黄、オリーヴオイル、砂糖、ベーキングパウダーを加え中央から少しずつ小麦粉の山を崩すように混ぜ合わせていく。※小麦粉は最初に全て混ぜ合わせず、耳たぶ程度の軟らかさになるのを確かめながら足していく。(写真i,j 参照)
- こね合わせひと塊にし、乾かないようにラップで包んでおく。(写真k 参照)
- カップケーキ用の型に常温で軟らかくしたバターを塗り、更に小麦粉をまぶす。(写真l 参照)
- 寝かせておいた生地の塊を2等分にし、めん棒で2mm程度の厚さになるまでのばす。※パスタマシンでも可(写真m 参照)
- 3の型に沿わせるように一つずつ生地を敷き、爪楊枝やフォークで少し穴をあけておく。(写真n 参照)
- 前日に作っておいた詰め物にシナモンを適量加えたら、生地を敷いた型に大さじ半分程度ずつ入れていく。(写真o 参照)
- 4の生地の残りを同様に2mm程度の厚さにのばし蓋をしていく。中身が加熱で膨らんだときに開かないよう、指やフォークの柄などを用いて下敷いた生地と蓋にした生地をしっかりと閉じ合わせ、爪楊枝で穴を開けておく。※生地を型にはめる作業は複数個まとめてやってもよい(写真p,q 参照)
- 160度の予熱で温めておいたオーブンで約20分焼く。
- 焼き上がリ後、粗熱がとれたら、粉糖を振りかけてできあがり。(写真r 参照)