サルデーニャ州(藤田 智子)

サルデーニャのトッローネ

 
トッローネというヌガー菓子はクリスマス時期になるとイタリア中で売り出され、食べられるお菓子です。
でもサルデーニャでは年中、それこそ夏でも食べられる伝統的なお菓子。
実はピエモンテに住んでいるときも何度かトッローネを食べる機会があったものの、こんな硬くって
甘ーーーいお菓子好きじゃないな、と思っていました。
しかし!しかしですよ、サルデーニャで食べたトッローネはガチッガチに硬くなく、甘さも控えめ、
優しい、後を引く味じゃないですか!

どうしてだろう? とちょっと調べてみたらピエモンテで食べたトッローネにはハチミツだけでなく、
砂糖が入っていたからめちゃくちゃ甘くて硬かったんですよねー。それにひきかえ、サルデーニャの
トッローネはハチミツのみで作られているので硬さも甘さもほどほどだったというわけです。
もちろん好みはあるのでピエモンテのトッローネの方が好き、という人もいるでしょうけど、私は断然
サルデーニャのトッローネの方が好き!です。

トッローネの材料、作り方はいたってシンプル。ハチミツを溶かしたところに固めるためや柔らかさを
調節するために泡だてた卵白を入れてゆっくりゆっくり長時間かき混ぜ、ナッツを入れる……と
まぁ書く(聞く)のは簡単、しかしその長時間かき混ぜる、と言うのが職人技。気温や湿度によって
卵白の量や時間が微妙に異なり、様子を見ながらかき混ぜること7〜8時間……!

私もトッローネ作りに何度か挑戦したことがあるんですが、長時間と言ってもせいぜい4時間ぐらいしか
かき混ぜてなかったからか砂糖をまったく入れないと固まってくれませんでした。やっぱり根気と職人の勘と
いうのが必要なんでしょうね。

サルデーニャでトッローネというと有名なのは内陸のトナーラという町。お祭りの屋台やスーパーで
売っているトッローネにはほぼトナーラのトッローネ、と書いてあります。トッローネ=トナーラで、毎年
パスクア(イースター)のあくる日のパスクエッタにはトッローネ祭りが行われるほど。
また何年か前には世界一長いトッローネを作ってギネスに挑戦!というイベントも行われ、見事ギネスに
のりました。

私も何度かトナーラにトッローネ祭りを見に行ったり、ギネスに挑戦したイベントにも行き、出来立ての
トロットロのトッローネをオスティア(コーンスターチと水、オリーブオイルから作られた白い紙のような
オブラート)に包んでもらってその場で食べたことがあります。出来立てのトッローネを食べられる機会と
いうのはなかなかないですが、ほんとに美味しいですよー。
ところが2年ほど前の秋祭りに訪れたデーズロというこれまた内陸の山奥の町でも出来立てのトッローネを
食べられる屋台が出ていたので食べたところ、、、うわっ、ト、トナーラのトッローネより美味しいかも!
と衝撃の味。何よりハチミツの味が美味しく後を引く、引く!

何とも忘れられない味ではあったけど、私の住むオリスターノからデーズロまでは距離は100Kmもない
もののクネクネとカーブ連続の山道を走っていかなければ行けません。トナーラも同様に山奥の町なん
だけど、トナーラのトッローネならオリスターノのスーパーでも簡単に手に入るし、それなりに
美味しいし、と自分に言い訳しつつ、行きそびれていました。
   
それがひょんなことから(と言うか、イタリア好きからの依頼で!)デーズロに、それもトッローネ屋
さんを訪ねて行くことなり、、、そう、あのお祭りで屋台を出していたあのお店だったんです!
出来立てを食べることは出来なかったけれど、やっぱりハチミツの味、歯ごたえが最高に美味しい。
それもそのはず、ハチミツ屋さんの作るトッローネだったんですよねー。

最近はハチミツと卵白の生地自体がレモンやミルト(銀梅花の実、ちょっと渋みがある)風味だったり、
トッローネがチョココーティングされていたり、とバラエティに富んだもの(トッローネ好きからすれば
邪道)もあるけど、ここで作られているのは昔ながらのトッローネ。中に入るナッツのみが3種類あり、
伝統的なアーモンド、デーズロ特産のヘーゼルナッツ、他ふたつのナッツより柔らかい食感のクルミ。
大きさも3種類あり、大、小にカットされたものと一口大にカットされてキャンディのように個包装
されて1パックになったもの。自分でカットするのは大変なので個包装されたものの方が食べやすく、
食後のエスプレッソのお供にも最適。
   
   
あとからデーズロ出身の友達に聞いたところ、昔はおばさんがひとりで作っていて地元では知る人ぞ
知るお店だったそう。美味しいでしょーと誇らしげに話してました。現在は後を継いだ甥兄弟が
おばさまの監修の下、昔っからの方法でトッローネを作っています。

それ以後、やっぱり彼らの作るトッローネを食べたら他のトッローネでは物足りない、と言うことで冬は
天気予報とにらめっこし、雪が降らない日を選んでは行って多めに買って来るようになりました。
そして冷凍庫で保存、、、と言うより冷凍庫に入れた方がカリカリッとして一段と美味しいんです。
冷蔵庫じゃなく、冷凍庫、ですよー。

ちなみに一口大にカットされた小さいものはトロンチーノと言います。サルデーニャでもなかなか手に
入らないデーズロのトッローネ、トッロンチーノ、ぜひ味わって欲しい味です。

 
  

まだまだ知られざるサルデーニャの魅力を”食“を通してご紹介します。

藤田 智子(Fujita Tomoko) Delizie主宰。大阪でイタリア家庭料理店を経営後、’00年にイタリアに渡りピエモンテを拠点に各地のアグリツリズモで料理修業。’03年よりサルデーニャに移住し、家庭料理や食材の探求を続ける傍ら”食”をテーマに現地の旅行、視察、料理教室などをコーディネー ト。日本でも料理教室を年何回か開催。著書に"家庭で作れるサルデーニャ料理"(河出書房新社)。 

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    カラブリア州コゼンツァ市在住のコーディネーター・通訳・翻訳。スキーと食べ物を愛するAB型。一応ソムリエ。カラブリア州の毎日の生活は「カラブリア.com」にて紹介中。
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    藤田 智子(Fujita Tomoko) Delizie主宰。大阪でイタリア家庭料理店を経営後、’00年にイタリアに渡りピエモンテを拠点に各地のアグリツリズモで料理修業。’03年よりサルデーニャに移住し、家庭料理や食材の探求を続ける傍ら”食”をテーマに現地の旅行、視察、料理教室などをコーディネー ト。日本でも料理教室を年何回か開催。著書に"家庭で作れるサルデーニャ料理"(河出書房新社)。 
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    佐藤 礼子(Reiko Sato) 2005年よりイタリアの南の島、シチリア島在住。力強い大地の恵みと美しい大自然にすっかり魅せられ、ここシチリアに残ることを心に決める。現在、シチリア食文化を研究しつつ、トラーパニでシチリア料理教室を開催。また、シチリア美食の旅をコーディネートする「ラ ターボラ シチリアーナ」の代表&コーディネーターとしてトラーパニで活動中。 年に2回の東京での料理教室を始め、全国各地で料理イベントを開催、また企業とのコラボでシチリアの食文化を発信するなど、日本でも精力的に活動を行っている。 シチリアの美味しい情報はブログ「La Tavola Siciliana〜美味しい&幸せなシチリアの食卓〜」から。
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    保坂 優子(Yuko Hosaka) 地域ブランディングを主とした都市計画コンサルタント。2002年、イタリアの暮らしにどっぷり浸りたいとアブルッツォ州に1年間留学。以降、大阪とアブルッツォを行き来する生活を続けている。2009年のラクイラ地震を機にアブルッツォ州紹介サイト「Abruzzo piu’」 を立ち上げる。関西を中心にコンサルタント業に携わる傍ら、州の魅力発信や現地コーディネートなどにも力を注ぐ。
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    鹿野喜志枝(Kishie Kano) ペルージャ在住。 Placidinternational代表、ファッションバイヤー、各種展示会やイベントのコーディネートなども手がける。 親族経営のオリーブ農園の経営にも携わり、それをきっかけにウンブリア食材の輸出部門も立ち上げバイヤーとして日本ほか各国に仲介、近年は地元食材や現地生産者を訪ねる研修などを通じてウンブリア州の魅力を発信する活動も精力的に行っている。 インスタグラム(@kissykano)(@placidintl)で発信中。
  • 食の宝庫より、悠久の昔から続く食と文化をバルサミコ酢にかける情熱と共にお届け!
    堂内 あかね(Akane Douchi) 日本で企業の管理栄養士として5年間勤務後、2005年渡伊。2007年、モデナ屈指の旧家に嫁ぎ、一族に継承されていたバルサミコ酢の樽の管理を夫と共に引き継ぐ。2009年よりスピランベルト市にある「伝統的なバルサミコ酢 愛好者協会」(Consorteria dell’aceto balsamico tradizionale di Modena)に所属し、バルサミコ酢マエストロ試飲鑑定士資格を目指し、研鑽を重ねている。バルサミコ酢の醸造の傍ら、イタリア人向け日本家庭料理教室の講座を北イタリア各所に持つ。また、自宅にて醸造室の試飲見学会、バルサミコ酢を使った食事会、料理教室を主宰。バルサミコ酢醸造のエピソード、見学会などは Facebook Akane in balsamiclandにて紹介中。
  • 老舗4ツ星ホテル日本人妻がお届けするアマルフィ海岸の魅力
    竹澤 由美(Yumi Takezawa) アマルフィ海岸でのウェディングと観光コーディネート会社Yumi Takezawa & C S.A.S.代表。B&B A casa dei nonni オーナー。 2013年よりアマルフィ市の日本との文化交流コーディネーター。 ロンドンで知り合ったアマルフィ海岸ラヴェッロにのホテルルフォロ四代目との結婚を機に2004年渡伊。 二児の母親業を通じ、濃い南イタリアマンマ文化の興味深さを肌で感じている。 Instagramブログ
  • サルデーニャの様々な魅力をお伝えしていきたいと思っております!
    加藤 佐和子(Sawako Kato) イタリア・サルデーニャ州公認観光ガイド。2004年からサルデーニャ島在住。2016年に「サルデーニャガイド」を設立し、現地ガイド、アテンドのほか、サルデーニャ島に関する各種コーディネート、執筆などを行う。https://sardegnaguida.com/
  • 思わずシャッターを切りたくなるような、イタリアの素敵な景色をお届けします。
    藤原 亮子(Ryoko Fujiwara) イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。
  • イタリアワインやシエナの情報をソムリエ視点でお届けします!
    鈴木暢彦(Nobuhiko Suzuki) 2009年渡伊。シエナの国立ワイン文化機関『エノテカ・イタリアーナ』のワインバー・ワインショップにて5年間ソムリエとして勤務。2015年~2018年までシエナ中心街にてイタリア人と共同でワインショップを経営。現地ワイナリーツアーも企画し、一般からプロの方までのアテンドで100軒以上のワイナリーへ訪問。コロナのパンデミック直前に帰国。現在は、代理人“アジェンテ・エンネ”としてイタリア全国の日本未進出ワイナリーのプロモーションサポートを主に行う。今後もイタリアへ渡航予定。 資格:AISソムリエプロフェッショニスタ。 シエナ観光・ワイン情報サイト『トッカ・ア・シエナ』
  • 南アルプスの麓から山暮らしや食文化、登山の魅力を発信!
    新宅 裕子(Yuko Shintaku) 週末や休暇を利用してアルト・アディジェ地方へ赴き、アルプスの麓町ヴィピテーノを拠点に、山登りやキャンプ、キノコ狩りなどのアウトドアを楽しむかたわら、フリーライターや日本語教師としても活動する。 東京のテレビ局で報道記者を務めていた2011年、オペラにはまって渡伊。カンパーニア州に1年留学の間、イタリア中を旅してその大自然や地域ごとに異なる文化、心豊かな暮らしに魅了される。数年後、イタリア人との結婚を機にヴェローナへと移住。 ガイドブックには載っていないような小さな町を巡り、ローカルな生活に浸るのが好き。インスタグラム(@yukino.it)で「旅と山の記録」を発信中。
  • とんがり屋根のトゥルッリより、プーリアの魅力と旬をお届け!
    2012年より南イタリア・プーリア州在住。伊政府認定ライセンス添乗員。世界遺産アルベロベッロにてとんがり屋根の伝統家屋トゥルッリに暮らす生活を満喫中。会社員をする傍ら、地元産のフレッシュチーズとマンマ直伝の郷土料理を主役にした「南イタリアチーズ&料理教室」を主宰。オリーヴオイルソムリエ&上級チーズテイスターでもあり、最近は伊チーズテイスティング協会にてプーリア州代表の選抜鑑定チームの一員として修業中。他にも、プーリア州の観光や食をライター活動やSNS&ブログにて発信。
  • 食、文化、イベント……プーリア、地元の人々の日々の暮らしってどんなだろう?
    江草昌樹(Masaki Egusa) 2014年より北から南イタリア各所のレストラン、トラットリア、アグリツーリズモで勤務。ミシュラン星付きレストランのスーシェフを経て、現在は、『より自由に、いつまでも経験、挑戦する生活』をモットーに活動中。YouTubeチャンネル『秋田犬サンゴin ITALY』を通しても、イタリアの生活の様子などを発信しています。
  • 山と海に囲まれたリグーリア州の今一番旬な情報をお届けします!
    大西 奈々(Nana Onishi) 2011年よりジェノヴァ在住。音楽院を卒業後、演奏活動の傍らフリーライター、旅行コーディネート、通訳などを務める。演奏会などでリグーリア州各地を周り、それぞれの街の文化や風景に魅了される。ジェノヴァ近郊の街を散策したり、骨董市巡りが休日の楽しみ。 山と海に囲まれたリグーリア州の四季折々の情報をご紹介いたします。
  • 心はいつも旅人!
    赤沼 恵(Megumi Akanuma) コロンブスを始め沢山の旅人を生み出した街、ジェノヴァ。そのジェノヴァを中心としたリグーリア州で起こるホットなニュースをお届けします。音楽家、翻訳家、日本語教師、2018年3月ジェノヴァ市長より「世界のジェノヴァ大使」任命、アソシエーション「DEAI」代表。
  • ミラノの食と暮らしの旬をお届けいたします!
    小林 もりみ(Morimi Kobayashi) 手間と時間を惜しまず丁寧につくる品々、Craft Foodsを輸入する「カーサ・モリミ」代表、生産者を訪ねながら、イタリアの自然の恵みを日本へ届けている。2008年 イタリア・オリーブオイル・テイスター協会『O.N.A.O.O』(Organizzazione Nazionale Assaggiatori Olio di Oliva)イタリア・インペリアの本校にてオリーブオイル・テイスターの資格取得。2009年スローフード運営の食科学大学( Universita degli Studi di Scienze Gastronomiche)にて『イタリアン・ガストロノミー&ツーリズム』修士課程修了。
    2014年よりピエモンテ州ポレンツォ食科学大学・修士課程非常勤講師(Master in Gastronomy in the World 日本の食文化:日本酒・茶道)。福島の子どもたちのイタリア保養「NPOオルト・デイ・ソーニ」代表。
    Instagram https://www.instagram.com/morimicucinetta/
    Instagram Casa Morimi https://www.instagram.com/casamorimi/
    カーサ・モリミ株式会社  http://www.casamorimi.co.jp/
    NPOオルト・デイ・ソーニ http://www.ortodeisogni.org
  • イタリアのチーズとワインのエキスパート、そしてイタリアの山のことならお任せ。
    池田 美幸(Miyuki Ikeda)1986年よりイタリア在住。ミラノに住んでいるが、週末になるとイタリアで一番大きいステルヴィオ国立公園内にある山小屋へ逃避。日本で農学部を卒業。イタリアで手にしたチーズティスター・マエストロ、公認ワインティスターの資格を活かし、通訳、コーディネーターとして活躍中。
  • ミラノより、箸休めにファッションやデザインのお話を。
    田中美貴(Miki Tanaka) 雑誌編集者として出版社勤務後、1998年よりミラノ在住。ファッションを中心に、カルチャー、旅、食、デザイン&インテリアなどの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。
  • ヴェネトの美味しいとっておき情報をお届けします。
    ヴェネトおよびフリウリを中心に、通訳、翻訳、地元マンマの料理レッスン及び生産者訪問コーディネイト、そして野菜を中心とする農産品の輸出業などの活動を行う。各種生産者との繋がりをとても大切に、ヴェネト州の驚くほど豊かな食文化を知ってもらうべく、ブログ『パドヴァのとっておき』では料理や季節のおいしい情報を中心に発信するなど活動中。