マンマのレシピ

マンマの紹介

  • キアラ・ベルリンゴッツィ(Chiara Berlingozzi) さん
  • トスカーナ州フィレンツェ在住
  • 得意料理:クッキーなどドルチェ

お料理説明・背景

ズッコットはルネッサンス文化が花開いた16世紀のフィレンツェで生まれたとされる、長い歴史を持つドルチェ。建築家、彫刻家、画家など多分野で活躍したベルナルド・ブオンタレンティがメディチ家のために作ったと言われている。また、半球型の独特な形は、フィレンツェのシンボルであるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のクーポラに影響を受けたとされている。「ズッコット」という名称は15〜16世紀の兵士の半休型金属製兜ズッコットなどが由来。

伝統的なズッコットの表面はきれいなピンク色だが、このピンク色はAlchermes(アルケルメス)という鮮やかな赤色が特徴的なフィレンツェのリキュールによるもの。アルケルメスは、ローズ水、バニラ、シナモン、コリアンダー、クローブ、砂糖などからできているリキュールで、この鮮やかな赤色は今では合成色素が使われることもあるが、もともとcocciniglia(コッチニリア=カイガラムシ)という虫の色素で色づけられているもの。かなり甘いリキュールのため、お菓子製造によく使われる。アルケルメスが手に入らない場合は、お菓子作りによく利用されるようなヴィン・サント、ラム酒、キルシュ、コニャック、ブランデー、グラン・マルニエなどのお酒を代わりに使う。

今回ズッコットを作ってくれたのは、トスカーナ州モンテヴァルキ出身で現在はフィレンツェの中心地に住むキアラ。パートナーのフランチェスコは同郷の幼なじみ。二人の間には昨年7月にリヴィアちゃんという女の子が産まれた。元々建築家だったキアラですが子供の誕生とともに仕事を辞め、新米ママとして子育てに奮闘する毎日を送っている。教科書などを手掛ける出版社に勤め編集者をしているフランチェスコも愛娘がかわいくてしょうがなく、帰宅するとリヴィアちゃんの着替えやおむつ替え、寝かしつけなど積極的に子育てに参加している。

ズッコットにはいろんなレパートリーがありますが、キアラが紹介してくれたのはフランチェスコのマンマから受け継いだ姑のオリジナルレシピ。絵が得意なキアラは母や祖母、姑たちから受け継いだレシピをかわいらしいイラスト付きで一冊のレシピ本にまとめて大切にしている。

主にリコッタチーズを使うレシピと、生クリームを使うレシピがあるが、キアラが作ってくれたのはリコッタチーズを使うタイプのズッコット。姑のオリジナルレシピは羊乳のリコッタチーズを使うこと。また、冷凍庫で冷やし固めてアイスクリームのような仕上げにするのではなく、冷蔵庫で冷やすだけなのでリコッタクリームのトロ~ンとした食感も楽しむことができる。愛くるしいリヴィアちゃんのまあるい頬っぺたのように、フワフワと柔らかいズッコット、ひんやりしたデザートなので夏にもおすすめだ。

レポート:小林真子(Kobayashi Mako)
フィレンツェ在住。テレビ局報道記者を経て2011年渡伊。2012年からフィレンツェ在局FMラジオに出演中。イタリア製本革バッグのオンラインショップ「アミーカ・マコ」をフィレンツェで起業・経営しながら、週刊誌等でイタリア関連記事のライター活動も。これまでに世界30ヶ国200都市以上旅行。ブログ:AmicaMakoイタリアンスタイル

材料

ズッコット(4人分:直径20cmのボウル1個分)

パン・ディ・スパーニャ(スポンジケーキ部分)

・卵3個
・小麦粉150g
・ベーキングパウダー8g使わなくてもOK
・砂糖150g
・バニラエッセンスまたはバニラパウダー適量
・レモン皮のすりおろし5g
・アルケルメス適量

ズッコット(クリーム部分)

・リコッタチーズ600g羊乳が望ましいが無ければ牛乳タイプ
・柑橘系果物の砂糖漬け25g
・カカオパウダー10g
・砂糖200g甘さ控えめが好みの場合は150g

作り方

パン・ディ・スパーニャ=スポンジケーキ

  1. 小麦粉とバニラエッセンスまたはバニラパウダー、入れる場合はベーキングパウダーを一つのボウルに入れしっかり混ぜ合わせておく。オーブンは180度に熱しておく。
  2. ボウルに卵と砂糖を入れ、角がしっかり立つまで高速で泡立てる。(写真a 参照)
  3. 泡立った卵にレモン皮のすりおろしを入れてさらにかき混ぜる。(写真b 参照)
  4. 1を3へ少しずつ加えながらゆっくりかき混ぜる 。(写真c 参照)
  5. 耐熱容器にバターを塗り込む。容器が透明だと裏側の焼き具合も見えるのでなお良い。(写真d 参照)
  6. 5の容器全体に小麦粉をまぶしつける。(写真e 参照)
  7. 生地を容器に流し込み、予め180度に予熱したオーブンで最低30分はオーブンを開けずに焼く。その際、できるだけオーブンの天井から離した位置に置く。(写真f 参照)
  8. 表面が茶色く焼き色がついたら完成。透明容器の場合は裏側もきつね色に焼きあがっていることを確認し、まだ白っぽければさらに焼く。容器が透明でない場合は、爪楊枝を差し、爪楊枝に生地がついてこなかったら完成。生地がついてくるようなら、さらにもう少し焼く。
  9. 焼きあがった生地は外に出して、しっかり冷ます。(写真g 参照)

ズッコット

  1. リコッタチーズをボウルに開け、砂糖を全部加えてしっかりかき混ぜる。(写真h 参照)
  2. 1の半量を別のボウルに取分ける。残りの半量に柑橘系果物の砂糖漬けを加えて混ぜる。(写真i 参照)
  3. 残りの半量にカカオパウダーを入れ、しっかり混ぜ合わせる。(写真j 参照)
  4. ボウルにラップを敷き、1cm幅にカットしたスポンジケーキをボウルに敷き詰める。(写真k,l 参照)
  5. コップなどの容器にアルケルメスを入れ、刷毛でスポンジケーキにしみ込ませていく。(写真m 参照)
  6. 2のドライフルーツ入りのリコッタクリームを流し入れ、その後にカカオパウダー入りのリコッタクリームを流し入れる。(写真n 参照)
  7. 残りのスポンジケーキにアルケルメスを刷毛で塗り込み、蓋のように敷き詰める。(写真o 参照)
  8. ラップで覆い、冷蔵庫で約3時間冷やす。触ってみて柔らかすぎる場合はさらに冷やす。ある程度硬いと感じたら完成。(写真p 参照)
  • a. 卵と砂糖を角が立つまで泡立てる
  • b. レモン皮のすりおろしを入れる
  • c. 小麦粉を加えながらゆっくり混ぜる
  • d. 耐熱容器にバターを塗る
  • e. 小麦粉を全体にまぶす
  • f. 生地を流し込みオーブンで焼く
  • g. オーブンから取り出し冷ます
  • h. リコッタに砂糖を加えて混ぜる
  • i. 半量に果物の砂糖漬けを加える
  • j. 残りにカカオパウダーを加える
  • k. 1cm幅にスポンジをカットする
  • l. ラップをひいたボウルにスポンジを敷き詰める
  • m. アルケルメスをスポンジに塗る
  • n. ドライフルーツ入り、カカオパウダー入りリコッタの順に加える
  • o. アルケルメスをしみ込ませたスポンジを載せる
  • p. ラップをかぶせて冷やす

お料理ポイント

パン・ディ・スパーニャ(スポンジケーキ)は、姑のオリジナルレシピでは、小麦粉と片栗粉(Fecola di patate)を半々の割合でブレンドしており、そうするとよりふっくら仕上がるけれど、全部小麦粉でもOK。また、小麦粉の代わりにトウモロコシ粉を使ってもいいです。伝統的なレシピではベーキングパウダーは使いませんが、使えば確実にスポンジが膨らむので、特に料理初心者は使った方が失敗は少ないですよ。スポンジをしっかり膨らますコツは、卵と砂糖を手早く高速で泡立てること!