マンマのレシピ

マンマの紹介

  • デニーゼ・バシリ(Basili Denise)さん
  • マルケ州ペーザロ市在住
  • 得意料理:手打ちパスタ全般、ウサギ料理

お料理説明・背景

気持ちのいい風が吹き抜けるアドリア海。
マルケ州にも、このアドリア海岸線沿いにいくつもの港町があります。これらの漁港では、漁師の料理として色々なレシピが生まれ、中でも魚介のスープ、ブロデットは人気のある漁師料理。それぞれの港町でバリエーションが少しずつ変わり、それがまたそれぞれの地方のマンマによってアレンジされてきた。

もともとは、漁に出た漁師たちが、市場では売れない小さな魚や魚網に絡まり痛んでしまった魚介を、捨てずに船で食べようと編み出した料理。
昔はビン詰めのトマトソースやチューブ入りの凝縮トマトペーストの代わりに、太陽で乾燥させて水分を飛ばしたトマトペーストのブロック状のものが各家庭で作られていたという。それを船に持ち込んでスライスし、スープへ入れてコクをだしていたそうだ。今でこそ贅沢に色々な魚介を入れますが、元来その日に捕れたものだけで作っていた一品。入れる魚介もその時その時で違っていたようだ。
ですのでレシピも”これを入れなければダメ!”というものでなく、その時期に手に入る朝市の旬のものを使い、良く出汁の出る甲殻類、イカや貝類、白身魚の3種類がバランスよく入っていればOK!とにかく決まりごとの少ない自由な料理なのだ。

このレシピはアドリア海沿いの町、ぺーザロに住むマンマデニーゼのもの。
近郊の港町、ファーノ風のブロデットがベースになっている。ファーノでは毎年9月にブロデットのフェスティバルが開かれ、漁師の味を味わおうと沢山のお客さんで大賑わい。デニーゼは彼女の行きつけのお魚屋さんとのおしゃべりでコツを教えてもらったり、友人のマンマとの情報交換のなかで今の作り方になったとか。魚の朝市に朝早くから自転車で行き、その日のおすすめをいそいそとチョイスしてくる姿は、どっしりとしてかわいいイタリアのマンマそのもの!

「この料理はね、一度にたくさん作るからおいしいのよ。だから家族が揃うときにみんなでお鍋を囲んで食べるの。ポレンタにかけたり、パスタのソースにしたり、色々な食べ方があるけれど、やっぱり一番おいしいのはこんがり焼いたパンに出汁のきいたスープを染み込ませて味わうことよ!」と言うマンマデニーゼ。
かくいう嫁の私も、マンマへのリクエスト料理で一番多いのは、実はこのブロデットなのだ。

レポート:林 由紀子(Yukiko Hayashi)
マルケ州、ウルビーノ近郊のカーイ(Cagli)在住。1999年渡伊、ファエンツァの国立美術陶芸学校の陶彫刻科を卒業後、現代美術アーティストBertozzi&Casoniのもとでアシスタントとして12年に渡ってコラボする。2003年にマルケ在住のイタリア人と結婚したのをきっかけに、マルケ州の郷土料理や工芸、美術文化に強く惹かれ、自らも陶芸家として活動する中、ウルビーノを中心とするマルケ北部や県境近郊の食文化、美術工芸文化を発信する(ラファエロの丘から)を立ち上げ、現地アテンドや料理教室、工芸体験などのオーガナイスや、ウルビーノを紹介する記事などを執筆。生産者や工芸家との友人の輪を生かし、食文化とアートが一体となる現地のイベントに進んで参加している。一児の母としても、マンマの料理の腕を上げようと奮闘中! ホームページ:「ラファエロの丘から」
フェイスブックページ:「フェイスブック ラファエロの丘から 」

材料

デニーゼマンマのファーノ風ブロデットの材料(4人分)

・出汁の出る甲殻類1人1種ずつあたる程度シャコ、エビ、アカザエビ、ワタリガニなど
・白身魚1人ぶつ切れ1切れアンコウ、サメ、舌平目、タラ、エイ、ヒメジなど
・イカ類1杯食べやすい大きさに切ったものが1人数切れあたる程度
・貝類適量アサリ、ムール貝など
・ニンニク2片
・イタリアンパセリ一束
・無農薬レモンの皮1/2~1/4程度無農薬のものが無ければ普通のレモンをしっかり重曹で洗う。白いわたの部分は入れすぎない。
・タマネギ1/6程度
・オリーヴオイル大8(はじめに入れる)+大4(最後に入れる)
・凝縮トマトのペースト40g完熟トマト(夏に完熟のものを多めに買っておき、丸ごと冷凍しておくとよい)をソースにしたものを150~200ccでも可
・塩、コショウ、唐辛子各少々
・白ワインビネガー大4~5
・水200~250cc
・スライスしたパン8枚塩なしパンが理想

作り方

    下ごしらえ

  1. イカや魚は頭や内臓などを取り除き、洗って適度な大きさに切り、塩をふっておく。舌平目やヒメジなど、煮崩れしやすい魚は内臓のみを取っておく。(写真a 参照)
  2. 貝類は砂出しをし、ムール貝は殻が汚れていればナイフの裏でそぎ、ひげをとる。(写真b 参照)
  3. 凝縮トマトペーストがない場合は、完熟トマトを湯むきし、刻んで5~6分火にかけ、仕上げにオリーヴオイルを少々入れてトマトソースにしておく。(写真c 参照)
  4. シャコは写真右側のように手足や頭の先を切っておき、海老は剝いておく。(写真d 参照)
  5. イタリアンパセリ、ニンニク、タマネギは洗って刻んでおく。(写真e 参照)

作り方

  1. 大きめの浅いフライパンまたは鍋にオリーヴオイル(大8)を入れる。中火にかけて刻んだニンニク、タマネギ、パセリを少し入れ、香りが出てきたらイカを入れる。3分程炒めたら蓋をして弱火にし、3、4分待つ。蓋をあけて白ワインビネガーを入れ、そのまま水分を飛ばす。(写真f 参照)
  2. ビネガーの水分が飛んだら、トマトペーストまたはトマトソースと水、レモンの皮を入れ、煮立ったら厚みのある魚を並べる。蓋をして中火で5分待つ。(写真g 参照)
  3. 次にシャコ、エビ、舌平目などの薄い魚やヒメジなど小さい魚を並べ、蓋をしてまた中火で5分程待つ。一度火の通った魚は崩れやすいので、ひっくり返したりせず、フライパンを揺らす程度にする。(写真h 参照)
  4. 最後に貝類を入れ、蓋をして完全に貝が開くまで待つ。待つ間にパンのスライスをオーブンでこんがり焼いておく。貝類が開いたら蓋を開け、水分が多すぎるようなら少し飛ばす。最後に唐辛子少々と刻んだパセリの残りを散らし、オリーヴオイル(大4)を垂らす。温かいうちに魚を崩さないように器に盛り、トーストしたパンを添えていただく。(写真i,j 参照)
  • a. イカや魚は処理をして適度な大きさに切る
  • b. 貝類は砂出しをし、ムール貝はひげをとる
  • c. トマトソースを作っておく
  • d. シャコは写真右のように足や頭の先を切っておく
  • e. イタリアンパセリ、ニンニク、タマネギを刻む
  • f. イカを炒める
  • g. トマトソースを加え厚みのある魚を並べる
  • h. 薄い魚を加え火を通す
  • i. パンをスライスする
  • j. 貝が開いたら器に盛る

お料理ポイント

ブロデットは、その季節の旬のもの、かつ新鮮なものを使うことがおいしさのポイント!だから魚介によっては火を通す時の水分の出方も違うし、塩気も違うわよね、だから分量もそのあたりを勘で臨機応変に微調整してね。トマトソースが酸っぱすぎると感じた時はちょっとだけお砂糖を入れるとまろやかになるの。スープを入れる器も、温めておくと冷めにくくていいわね。これは漁師の料理だから、気取らずに手を使いながら豪快に食べること。それがまたおいしく感じる秘訣よね!