お料理説明・背景
今回のお料理は、日本語に置き換えてみるとタリアテッレ農家風または小麦の収穫(脱穀)のタリアテッレ。
ウンブリア、特にテヴェレ川沿いの平野と丘では昔から小麦の栽培が盛んだ。その畑の色の変化は季節ごとに美しい。種まき前、準備の為にならされた茶色い土色の畑は美しく均等に線が描かれたようでとても芸術的。新芽の出始める頃は淡い黄緑、そして春から夏にかけて徐々にその緑の色は濃く青く変化してゆく。そして夏、収穫を待つ麦穂たちは太陽の光をあび、黄金色に輝く。そんな自然が作り出す色の美しさにいつも感嘆させられるのだ。
私たちの農園では小麦もbio栽培している。この数年は ”Faraona” と “ Senatore Cappelli”という2つの古い硬質小麦(一般的にパスタを作る小麦)の品種を作っている。近年イタリアでもBio製品にこだわる人が増え、特にグルテンアレルギーが子供から大人まで増加していることもあり、粉にこだわる人も増えてきた。
このグルテンアレルギーが増えている原因のひとつは遺伝子組み換えなどによる品種改良だといわれているが、品種改良されていないこの2つは消化しやすいため、近年注目されています。
この小麦の収穫、ほんの少し前の1970年代までは全てが手作業という、大変な労力と人手がかかっていた。 収穫シーズンの夏期、家族や親戚中が集まり、地域の農家もお互いに協力しあう一大イベント。無事に終了した後はその途方もない労をねぎらい、農主が昼食の宴を。脱穀の作業が行われた外の麦打ち場に長いテーブルを並べ、多い時には総勢40名ほどのまさに収穫祭。 この時の伝統的な食材は自家製の“あひる”。その大きな卵ではタリアテッレを作り、レバーでパテを、残りのレバー、内蔵、すね、あし、頭そして首までも使用し、パスタ用のとびきりのラグーソースを作る。タリアテッレ・アッラ・コンタディーナだ。残ったメインの身はジャガイモと共にローストに。
今ではウンブリアで一年を通して食べられているこのパスタ、少し前まではこのように小麦の収穫の季節のごちそうメニューだったわけだ。 今では日常的に食する機会の多い鶏肉で作られることの方が。このアンナマリアのレシピも彼女の家に受け継がれてきたもの。「こうして義理母も祖母も作っていたから私はそれを受け継いで作り続けているの。変えようと考えたこともないわね」と笑顔でいうアンナマリア。
最後に小麦の収穫祭のメニューを少しご紹介。コース仕立てでぜひ作ってみて欲しい。
<前菜>バターとアンチョビのクロスティー二、アヒルのレバーペーストのクロスティー二
<プリモ>タリアテッレ・アッラ・コンタディーナ
<メイン>アヒルのロースト、ジャガイモのロースト添え
<付け合わせ>ミックスサラダ(通常キュウリとトマト)
<ドルチェ>ズッパイングレーゼ
ウンブリア州Amelia(アメリア)の近郊でアグリトゥーリズモ“サン・クリストフォロ”を主人と共に経営。1986年にオープンしたアグリトゥーリズモは今年で30周年。当初からBIO農業をしているが、7年前から正式にBIO農園として認定。
作り方
- パスタソースを作る。(下記参照)
- タリアテッレを作る。(下記参照)
- 大鍋に水をおよそ3リットル入れ、沸騰したら塩(分量外)を加え、タリアテッレをゆでる。
- ゆで上がったパスタとソースを和えてお皿に盛り、好みでパルミジャーノをかける。
パスタソースを作る
- 内蔵を水からゆでる。沸騰したら1、2分さっと火を通し笊にあげ水気をきっておく。5mm~7mm角ぐらいに小さくカットしておく。(写真a,b,c 参照)
- トマトの水煮はハンディミキサー等でジュース状にしておく。(写真d 参照)
- タマネギ、ニンジン、セロリはみじん切りにしておく。
- フライパンにオリーヴオイル、みじん切りにした香味野菜(タマネギ、ニンジン、セロリ)を入れ、野菜がしんなりするまで弱火で炒める。(写真e 参照)
- 4にあらかじめゆでて小さくカットした鶏の内蔵を入れ、炒める。(写真f 参照)
- さらにあれば鶏の脚も入れる。(写真g 参照)
- 内蔵に香ばしく油がなじんできたら、(途中焦げ付きそうになったら赤ワインの一部かお湯を少し入れる)赤ワインを注ぎアルコールを飛ばす。(写真h 参照)
- アルコールが飛んだら、トマトの水煮、塩、コショウ、トウガラシを入れ、弱火で蓋をして煮込む。途中焦げ付かないように随時混ぜながら、約1時間〜1時間半。(写真i 参照)
- ソースが仕上がったら、鶏の脚を取り除いておく。(写真j 参照)
タリアテッレを作る
- こねる台の上に粉を小さな山のように広げる。中央をくぼませ、卵を割り入れる(※写真の分量は約20人前/目安は100gにつき卵1個)。(写真k 参照)
- フォークを使い、中央から少しずつ外側の粉を崩しながら混ぜる。ある程度生地がまとまってきて、水分が足りない時は粉っぽい部分だけを集め、また小さなくぼみを作り少量の水を入れ、まとめていく。(写真l,m,n 参照)
- 生地がなめらかになるまで、10~15分程手のひらを使いしっかり捏ねる。(写真o 参照)
- 生地がなめらかになったら、丸めて布巾などで覆い20分程休ませる。生地の量を多めに作ったときは、いくつかに分ける。(写真は20人前のため分割)(写真p,q 参照)
- パスタ生地を綿棒(80cmくらい)でのばしていく。丸めた生地を一度のばし、のばす度に生地を一定方向に少しずつ回転させる。そして、綿棒の中心においた両手を外側に向けていく感じで薄く2mmぐらいの厚さまでのばす。生地がひっつきそうになったら打ち粉をしながらのばす。 (パスタマシーンを使ってもよい)(写真r,s,t 参照)
- 季節にもよるが30分程乾かす(ある程度乾いていないと切る時にひっつきやすい)。
- 生地の表全面に打ち粉をし、写真のように、丸い生地の両端から5cm幅に細長くたたむ。(写真u,v 参照)
- 端から約7~8mm幅で包丁で切っていく。(写真w 参照)
- 7、8筋切ったら生地をパラパラとほぐしオーブンシートや布巾を敷いたトレーの上に並べる。(写真x,y 参照)