マンマのレシピ

マンマの紹介

  • ローサ トリマルキ(Rosa Trimarchi)さん
  • カラブリア州チッタ ノヴァ在住
  • 得意料理:自家栽培の野菜を使った料理

お料理説明・背景

「アモーレ・ディ・ノンナ(お婆ちゃんの愛)!」と孫にブチュッとキスをするノンナローサ。イタリアでは、孫や大切な人を「アモーレ(愛)」と呼ぶ習慣がある。可愛くて仕方がない、という様子が見ていて心がポッと暖かくなる。今回は、そんな孫にメロメロのノンナローサが大家族で暮らすお宅にお邪魔した。

農業と大家族の文化が根付いているレッジョ・カラブリアのチッタノヴァ出身のノンナ・ローサ。今回作ってくれるのは、今ではそんなマンマの村でしか見つけることができない、南イタリアの昔の生活が詰まった幻の郷土料理。この「残りもの」という意味のパスタ、ちなみにかつて作られていた方法は今となっては「違法」になる。その昔、小麦粉の製粉工場での作業後、床に残った全ての小麦粉や麦芽などをホウキでかき集めた粉でパスタを作ったのがはじまりだ。色々な小麦粉が混ざった栄養価の高さと、安価だったため、貧しい人々に愛され、「パスタ・ポベラ(貧乏パスタ)」と呼ばれていた。主に使用されているのは、ライ麦、ふすま、デュラム小麦などだが、当時は製粉工場の作業後のその日次第だったそう。今は衛生面のため禁止されてしまった。
この粗い生地にソースがよくしみこむ点を利用して、独特の風味があるこちらのパスタを、多めのニンニクやチリのソースでしっかりと味付けをした今回のレシピは、貧しさの中の知恵といえる。

ノンナ ローサの幼少時代について聞くと、「とっても貧乏だったけど、ハートはリッチだったのよ。」と、語ってくれた。8人兄弟で育ち、家には電気も水も通っておらず、シャワーなどは川の水を汲んで薪火で温めてから使っていたそう。そんな中、このパスタは栄養価満点の救世主だったとか。

また、カラブリアではその昔、男性が女性を選ぶ基準は、どれだけ多くのパスタを作れるかが鍵と言われていた。若い女性たちにとって、まさに「パスタ磨きは女磨き」だったのだ。もしかすると、カラブリアの伝統パスタのレシピにチリを使用しているものが多いのは、チリ好きが多いカラブリア男子を惚れさせるための心がけなのかもしれない。ちなみにノンナローサ曰く、「チリは子沢山の鍵」のようだ。なるほど、カラブリアの色男の秘訣と、大家族の秘訣はチリにあり、なのかも知れない。今回のパスタも、大量のニンニクとチリが使用されており、もしやマンマがパパに子沢山を仕向けるためのレシピなのでは!?と思ってしまった。

息子娘夫婦13人分の3食を作り、ノンナローサの背丈程の量のアイロンをして、孫4人に隣で寝る争いをされて1日が終わるという。「旦那の隣で最後に眠ったのはいつか分からないわ。とっても疲れるけど、孫は私の人生なのよ」と、目を輝かせて語ってくれた。大家族の幸せの秘密はノンナローサの愛情たっぷりのパスタや料理にあるのだろう。

レポート:西川彩奈(Ayana Nishikawa)
ローマとカラブリアに1年のうち半年在住。世界40カ国を旅した後、フレグランスや旅をメインに国内外で執筆活動をしている。

材料

乾燥パスタを使用する場合(4人分)

・ストルンカトゥラ500g全粒粉パスタ、リングイネ(3~4mm幅)でも可
・黒オリーヴ20~25粒
・ケッパー20粒
・アンチョビ150g
・ニンニク5~6片
・赤パプリカ1個
・トウガラシ3本
・ドライチリ3本
・オリーヴオイル適宜
・塩適宜

手づくりパスタをつくる場合のパスタ生地の材料(4人分)

・ふすま粉200g
・小麦粉300g
・ぬるま湯500ml約40度
・塩適宜

作り方

乾燥パスタでつくる場合

  1. フライパンに、ニンニクとオリーヴオイルを多めに入れ、きつね色になるまで炒める。その後、小皿に移す。(写真a 参照)
  2. オリーヴオイル、小口切りにしたトウガラシ、千切りにしたパプリカの順でフライパンに入れ、塩を一掴みかけて炒める。その後、小皿に移す。(写真b 参照)
  3. ドライチリを、オリーヴオイルを入れたフライパンで弱火でゆっくり焦がさないように炒めて、小皿に移す。(写真c 参照)
  4. オリーヴオイルを入れたフライパンにケッパーを入れ、半分に切った黒オリーヴを押しつぶしながら炒め、そこにアンチョビも加えてさらに炒め、小皿に移す。(写真d,e 参照)
  5. 各小皿に分けておいた全ての材料を大きいフライパンに移して混ぜる。(写真f 参照)
  6. 極少量の塩を加え、パスタをゆでる。(写真g 参照)
  7. ゆで上がったら材料が全て入ったフライパンに移し、火をかけてソースに絡める。(写真h 参照)

手づくりパスタ

  1. 小麦粉、ふすま粉、塩を全てボウルに入れて混ぜる。(写真i 参照)
  2. 平らな作業台に1をのせ、真ん中に軽く穴を開けて、ぬるま湯を少量入れる。(写真j 参照)
  3. 手でこねるように混ぜていく。(写真k 参照)
  4. 2と3の工程を、生地に弾力が出てまとまるまで繰り返す。
  5. 乾燥しないように小麦粉を軽く表面に振りかけ、表面にひび割れがないことを確認し、約30分間寝かす。(写真l 参照)
  6. めん棒と台の上にくっつき防止のため小麦粉を振りかけて覆っておく。(写真m 参照)
  7. 生地を半分(更に小さく切ると作業しやすい)に切り、めん棒で2mmほどの厚さまで薄くのばす。(写真n 参照)
  8. のばした生地を更に約5mmの幅に切る。まな板などを使うとまっすぐに切りやすい。(写真o 参照)
  9. 1時間ほど常温のオーブンの中などで休ませて、出来上がり。乾燥パスタの代わりに使用する場合は、2分ほどゆでる。
  • a. ニンニクを炒める
  • b. トウガラシと赤パプリカを炒める
  • c. ドライチリを炒める
  • d. 黒オリーヴとケッパーを炒める
  • e. さらにアンチョビも加える
  • f. 各小皿を全て混ぜ合わせる
  • g. パスタをゆでる
  • h. パスタにソースを絡める
  • i. 小麦粉、ふすま粉、塩を混ぜ合わせる
  • j. 真ん中をくぼませ、ぬるま湯を加える
  • k. 手でこねる
  • l. 約30分寝かす
  • m. めん棒と台の上に小麦粉を振り掛ける
  • n. めん棒で生地をのばす
  • o. 5mm幅に切る

お料理ポイント

「ソースの味がしっかりしているので、パスタをゆでる際に塩は極少量だけ加えること。またオリーヴをフライパンへ入れた際は、軽く押しつぶすと後でパスタとよく絡まりあって美味しくなるわよ」と、ノンナ ローサ。チリは好みの量で調節していいけれど、オリーヴオイルとニンニクをたくさん使うと、南イタリアらしい味になると教えてくれた。