マンマのレシピ

マンマの紹介

  • シルヴァーナ・インシンナーモ(Slivana Insinnamo)さん
  • シチリア州パレルモ在住
  • 得意料理:ジェーロ・ディ・メッローネ

お料理説明・背景

パレルモには、朝から晩まで、そして日曜日まで開かれる青空市場がいくつもある。新鮮な食材を山のように並べた屋台が軒を連ねる路地裏に、威勢のいい呼び声が周囲にこだまする。長年パレルモっ子の胃袋を支えてきた市場は、本日も大盛況だ。

力強い太陽を浴びて、やたらに大きく育った野菜や果物、塊のままぶら下がる肉。水揚げされたばかりのピッチピチの魚介たちも、種類豊富に並んでいる。そんなパレルモの食卓に、魚介が登場する機会は多い。
特にイワシは、「パスタ・コン・サルデ」や写真の「ポルペッティ・ディ・サルデ」をはじめ、郷土料理でも大活躍だ。

今回ご紹介する「サルデ・アッリングアーテ」も、そんな定番郷土料理のひとつ。サルデは、ご存じのとおりイワシのことだが、リングアーテは「リングア(舌)」、つまり「舌のようにイワシを開いた」…かと思えばそうではない。実はスペイン語の「レングアド 舌平目」が語源だったりする。ちなみに辞書には載ってない?!

スペイン王国支配時代、大いなる貴族文化が花開いていたパレルモ。貴族のファミリーには、必ず専属料理人がいた。いわゆる貴族の料理番…...シチリアでは彼らのことを「モンスー」と呼ぶが、そのモンスーたちは雇主のために、ハーブやスパイス、様々な食材を使ったレシピを考案。趣向を凝らしたメニューを展開していた。

それらの料理の噂を聞いた庶民たちが、手に入りやすい食材で、真似てつくったのが(ほとんどの)パレルモの家庭料理の起源となっている。「カボチャのアグロドルチェ」や「カポナータ」もそう。

「サルデ・アッリングアーテ」は、「サルデ・ア・レングアド イワシの舌平目風」がシチリア語っぽく訛った名前。イワシを開いて舌平目風にするのが、パレルモ庶民の意地だったかもしれない。

今回も、パレルミターナのシルヴァーナさんに教えてもらった。

「イワシは、舌平目の替わりに庶民が使ったように、"質素な食材"として知られるけど、オメガ3もたっぷり。良質なたんぱく質やミネラル、ビタミンも豊富だから、むしろ最近は、健康的にはリッチな食材よね~」とシルヴァーナさん。

「お酢は、臭みを消すのと殺菌作用があるのよ。足の早いイワシを使うから、そんな工夫もして、よりおいしくするなんて、パレルモの庶民も考えるわよね。」

な~んて、当たり前のように料理の起源を知っていたりもする。絶品スイカのゼリーを教えてくれたズィーアから教わったレシピだそうだが、レシピを教わりながら、そんな歴史の話もするのだろう。古都パレルモでは、キッチンでも歴史話はマストなのである!!!

お酢で〆たイワシを、カラリと揚げた「サルデ・アッリングアーテ」。ほんのり酸味が効いたサクサクのイワシ、こりゃビールのお供にサイコー! ゴハンのおかずにもなりますよ!

レポート:岩田デノーラ砂和子(Sawako De Nola Iwata)
シチリア州在住。編集ライター/コーディネーター通訳。約10年間のローマ生活を経て、2010年よりシチリア州州都パレルモ在住。ガイドブックや雑誌のイタリア特集を始め、イタリア関連著書多数。近著「おしゃべりのイタリア語」絶賛発売中!イタリア商工会議所認定通訳。HP:buonprogetto / la vacanza italiana Blog:ローマの平日シチリア便り

材料

イワシの開きフリット(4人分)

・イワシ1㎏
・ワインビネガー(白)適宜
・デュラム小麦のセモリナ粉適宜中力粉、もしくは強力粉+薄力粉でも可
・塩適宜
・揚げ油適宜
・レモン1個

作り方

  1. イワシの頭と内臓を取り、手開きにしてワインビネガーに浸しておく(約1時間)。 (写真a 参照)
  2. 1のイワシをペーパータオルで押さえて、水分をとる。(写真b 参照)
  3. 2のイワシの両面に、塩を加えたデュラム小麦のセモリナ粉をまんべんなくまぶす。(写真c 参照)
  4. 180℃に熱した油で、揚げる。時々返しながら両面をこんがりきつね色に!(写真d 参照)
  5. 熱々のうちに、レモンをかけてボナペティート!(写真e 参照)
  • a. イワシの手開きをワインビネガーに浸す
  • b. イワシの水分をとる
  • c. 塩を加えたセモリナ粉をまぶす
  • d. 180℃の油で揚げる
  • e.熱々のうちにレモンをかけて!

お料理ポイント

「熱々のうちに食べること。玉ネギ、ワインビネガー、砂糖、塩、ペペロンチーノを温めて、揚がったイワシにザッとかけ、30分ほど浸した”マリナーテ”もおいしいわよ」