お料理説明・背景
春から夏になるとイタリアの魚屋には朝どれピチピチの美しい鰯が並び始めます。透明で綺麗な目をしたイワシがお手頃な値段で売られていれば、「調理方法はその場で決めず、とりあえず1キロ分買ってしまうの!」とイネスマンマは言います。
イワシを買って家に帰ったら子供達はもちろん、猫たちも匂いを嗅ぎつけておこぼれを貰おうと大興奮するのだそうです。大体いつも半分はパン粉をつけてフリットにし、もう半分はレモン汁に漬けてマリネにするのだそうです。フリットはその日のうちに食べ、マリネは仕込んでから出来上がるのは翌日。2日間はメニューを考えずに済むのでマンマもしばらく楽が出来るのだと言います。
イタリアの夏休みがとても長いことは日本でも有名でしょうか。保育園、小学校、中学校、高校は6月の上旬には学校が終わり(中高の最終学年は卒業試験があるので6月末ごろまで)、新学期が始まるのは9月の半ば。つまり約3カ月も学校が休みなのです。子どもたちにとって長い夏休みは嬉しくて仕方がありませんが、一方、親は大変です……。仕事の間どこへ預けるか、お昼ご飯はどうするか……など。日本の親御さん達も夏休みの期間には同じ悩みがある事でしょう。この学校のない3カ月間は途方も無く長く感じるのです。例えば長期バカンスへ出かけても、食事をどうするかという悩みは尽きません。長期の家族旅行の場合アパートやコテージなどキッチン付きのレジデンスに宿泊することが多く、毎日外食するということはあまりありません。結局のところ「料理する」という行為はバカンス中もついて回ります。そのため「海に行って疲れてもう料理したくない!」という時に「イワシのマリネ」は救世主。火も使わないし、作り置きができます。 イワシは丸ごと売っていることもあれば、頭と肝を取って綺麗に二枚開きにされた状態で販売さてれていることも多いです。処理ずみのイワシはやはりひと手間省けるので料理がとても楽。
この時期、まるまる太ったレモンもまた、市場で一番目につく良い場所に陳列され始めます。レモンもとりあえず1キロ分くらい買います。フリットに絞りかけるためにも使えますし、水に入れてレモン水にもできます。特に今回紹介するマリネに欠かせません。「レモンは惜しみ無くふんだんに使いなさい」とイネスマンマは言います。
イワシのレモンマリネはイタリア中のあちこちで食べられる代表的な夏の料理です。今回はマンマが教えてくれたオレンジとレッドペッパーを加えたより爽やかでフルーティなレシピを紹介します。イタリアでは夏は何かと家族や友人がテラスや庭がある家に集まってホームパーティをする機会が増えます。1品持ち寄りの場合、いつもと少し違うオレンジ風味のイワシマリネは大変喜ばれるそうですよ。アンティパスト(前菜)としても良いですし、ランチでしたらセコンド・ピアット(メイン)にも使えます。ぜひ試してみてくださいね。
2011年よりジェノヴァ在住。音楽院を卒業後、演奏活動の傍らフリーライター、旅行コーディネート、通訳などを務める。演奏会などでリグーリア州各地を周り、それぞれの街の文化や風景に魅了される。ジェノヴァ近郊の街を散策したり、骨董市巡りが休日の楽しみ。 山と海に囲まれたリグーリア州の四季折々の情報をご紹介いたします。Instagramはこちらから
作り方
- 底が少し深い器を用意し、まずレモン汁を少し入れ全体に広げます。(写真a 参照)
- イワシの開きを一面に並べ、レモン汁(※一部のみ。ここで全て使わないこと)を少しイワシの上に回しかけます。(写真b 参照)
- 2の上に、新たにイワシの開きを並べ、レモン汁を少しかけます。(写真c 参照)
- 2~3を繰り返します。最終的にレモン汁が全てのイワシに浸かったら、ラップをして冷蔵庫で半日~一晩寝かせます。(イワシの表面が白くなっていればOKです。)(写真d,e 参照)
- イワシをざるに移し、漬けていたレモン汁を捨てます。(写真f 参照)
- 5にオレンジの絞り汁を加え、1時間ほど冷蔵庫で休ませます。(写真g 参照)
- オレンジを薄切りにし、イワシをその上に並べ、塩少々とオリーヴオイルをかけたら、最後にレッドペッパーを散らして完成です。イワシだけでももちろん、オレンジと一緒に食べてもOK。