お料理説明・背景
「DOP(*)」「IGP(**)」「STG(***)」。
イタリアのおいしいものに目がない『イタリア好き』読者、その中でも特に『マンマのお料理』愛読者の皆さまなら、きっとご存知の方も多いことだろう。
はじめての方のために少し説明すると、「DOP」「IGP」「STG」認定は、EU(欧州連合)が、EU加盟国の多種多様な農産物を広く市場に流通させ、製品名を誤用や盗用から守るための制度だ。消費者は、認定マークを見ることで、製品の情報を正しく理解することができる。
イタリアには「DOP」「IGP」「STG」製品が合計326種類(2024年4月4日時点)あり、EUの中でも農業大国フランス(274種類)やスペイン(215種類)を抑えて、堂々の第1位だ。
そんなイタリアの中で、我がエミリア=ロマーニャ州は、なんと「DOP」「IGP」「STG」認定が一番多い州に輝いている。イタリア人が「美食の街」としてボローニャを上げるのもうなずける。
今回ご紹介するのは、そんな「IGP」に登録されている「ピアディーナ・ロマニョーラIGP(Piadina Romagnola IGP)」。地元では「ピアディーナ」ではなく「Piada(ピアーダ)」と呼ばれているので、「ピアーダ・ロマニョーラ(Piada Romagnola)」の名もPiadinaと一緒にIGP登録されている。元々は、リミニやフォルリ=チェゼーナ、ラヴェンナなど、ロマーニャ地方の決して豊かとは言えなかった人々が、パンの代用品として食べてきものだ。
中に入れる具材は、お好みでなんでもいいのだが、今回は特によく食べられる「生ハム、ルッコラ、スクアックエローネ・ディ・ロマーニャDOP(以下、スクアックエローネ)」の組み合わせと、「モルタデッラ、モッツァレッラチーズ、ピスタチオ」の組み合わせを、マンマ・ロッセッラが作ってくれた。
郷土食材の話ついでに「スクアックエローネ」についても触れておこう。このチーズはフレッシュチーズで、見た目はプーリア州などイタリア南部で作られる「ストラッチャテッラ(Stracciatella)」や、ロンバルディア州など北部で作られる「ストラッキーノ(Stracchino)」に似ている。
「スクアックエローネ」は、熟成期間が1日から4日で、型に入れていないと原型をとどめないほどに柔らかく、クリーミー。「ストラッキーノ」は、ロンバルディア方言で「疲れた」を意味する「ストラッキ(Stracchi)」に由来。アルプスの牧草地から歩いて戻ってきた「疲れている」牛から搾った乳から作られているため、熟成するのに1週間から15日ほどかかり、「スクアックエローネ」よりも水分量が少ないため長方形をしている。「ストラッチャテッラ」は、細くさいたモッツァレッラと生クリームを和えたもの。「ブッラータ(Burrata)」チーズの中に入っているものといえば、ピンとくる方もいるだろう。
そんな、トロトロと、口の中でとろける「スクアックエローネ」は、「ピアディーナ」の具材以外に、是非、エミリア地方の揚げパン「ニョッコフリット(Gnocco fritto)」とも一緒に食べてもらいたい。膨らんだ「ニョッコフリット」をナイフで袋状に開け、中に「スクアックエローネ」を塗り、いちじくのジャム、生ハムと合わせて一緒に食べると、生ハムの塩味といちじくジャムの甘味が、「スクアックエローネ」のまろやかさに包まれて、ついつい「ダイエットは明日から」と言いながら、何個も食べてしまいそうになる。
(*)「DOP」は「原産地呼称保護(Denominazione di Origine Protetta)」のことで、特定地域で、栽培・飼育・収穫された農産物が、加工を経て製品となる全ての工程を、その特定地域で行ったことを示す。
(**)「IGP」は「地理表示保護(Indicazione Geografica Protetta)」のことで、特定地域で、栽培・飼育・収穫された農産物が、加工を経て製品となる、少なくともひとつの工程を、その特定地域で行ったことを示す。
(***)「STG」は「伝統特産品保証(Specialità Tradizionale Garantita)」のことで、産地は限定されず、伝統的な原材料や加工法で作られた製品であることを示す。
エミリア=ロマーニャ州、ボローニャ在住。オリーブオイル国家鑑定士&イタリア政府認定旅行添乗員。日米の大学を卒業後、大手外資系企業にて経営コンサルタントとして勤務。その後、2006年に渡伊。現在は、異文化間プロジェクトディレクターとして、イタリアやアルバニアを中心に活動。ビジネス通訳や観光支援のみならず、大使館・省庁・地方自治体主催の食文化交流イベントコーディネートや、各種視察コーディネート(大学研究視察、レッジョ・エミリア・アプローチといった幼児教育視察など)、世界と日本をつなぐお手伝いをしている。男の子2人のマンマ。自分を3語で表すなら「食いしん坊」「楽天家」「晴れ女」
作り方
- ボールに、小麦粉、塩、重曹を加えて、軽くかき混ぜる。(写真a,b 参照)
- 材料をかき回しながら、少しずつ牛乳を加えていく。(写真c 参照)
- ラードを加える。(写真d 参照)
- 生地がまとまるまで混ぜたら5等分に分けておく。(写真e,f 参照)
- フライパンを火にかけ、温めておく。(写真g 参照)
- まな板と麺棒に打粉をし、生地を伸ばす。(写真h 参照)
- 生地をフライパンに載せて焼く。火加減は弱火から中火。表面に気泡が出来てきたらひっくり返すタイミング。反対側も焼く。(写真i,j 参照)
- お好みの具材をはさむ。今回作ったのは、以下2種類の組み合わせ。(写真k 参照)
(今回はさんだ具材)
・生ハム、ルッコラ、スクアックエローネ・ディ・ロマーニャDOP
・モルタデッラ、モッツァレッラチーズ、ピスタチオ