
お料理説明・背景

ボローニャの人たちに「ボローニャを代表する食材は何?」と聞いたら、真っ先に挙がってくるのは「モルタデッラ(Mortadella)」だろう。
「モルタデッラ」という名前は、まだ日本では馴染みがあまりないと思うが、「ボロニアソーセージ」と聞くと「あっ!」と思い当たる方もいるのではないだろうか。そう、あのピンクのソーセージだ。
日本で見かけるものは、比較的手頃なサイズのものが多いと思うが、本場イタリアでは、2mを超える大きなものも作られている。
モルタデッラの歴史は、古代ローマ以前、エトルリア人の時代にまで遡るという。
以前、ボローニャの考古学博物館を訪れた際に、ガイドさんが乳鉢と乳棒が掘られた墓石のところへ連れて行ってくれ、ニコニコしながら「これは豚の肉をすり潰したモルタデッラの先祖と呼べるような食べ物を作っていた人の墓石ですよ」と教えてくれた。
私たちが今、食べているモルタデッラの製法のベースとなっているものが規定されたのは、今から363年前の1661年10月24日。既に、モルタデッラやサラミが美味おいしいと評判だったボローニャで、モルタデッラの品質を低下させる不正行為が続発したのだとか。その不正行為を取り締まるために、当時の枢機卿ジャコモ・ファルネーゼが、歴史上初となる「モルタデッレとサラミの製造に関する通知と規定(Bando e provisione sopra la fabbrica delle Mortadelle e Salami)」を公示。その中で、品質を保証するために、豚以外の肉を使用することを禁止したのである。
その後、1720年には、ボローニャ以外でモルタデッラを生産することが禁じられ、ボローニャとモルタデッラの関係は、切っても切り離せないものとなっていった。
1971年には、イタリア式コメディの第一人者とされるマリオ・モニチェッリ(Mario Monicelli)監督が、ソフィア・ローレン(Sophia Loren)を主役に迎え、ラブ・コメディ映画「La Mortadella(ラ・モルタデッラ)」まで作っている。この映画で、ソフィア・ローレンが演じるのは、ボローニャ郊外のモルタデッラの工場で働く女性。こちらのリンク(https://youtu.be/TqtWeh-Ce5c)から映画の一部を見ることができる。モルタデッラ工場で撮影されたシーンなどもあるので、ご興味のある方は、是非ご覧になっていただきたい。)
このように、ボローニャ人のDNAに深く刻まれていると言ってもおかしくないモルタデッラは、今でも、ボローニャのグルメシーンで頻出する。
郷土料理のレストランでは、前菜として、極薄にスライスされたモルタデッラが特徴的な「ハムの盛り合わせ(Affettati misti)」が登場。口の中に運ぶと、芳醇な香りが充満し、舌の上では「とろける」と表現するのがいいほど滑らかで柔らかい。パスタの中では、モルタデッラを具材として使用したトルテッリーニ(Tortellini)が大人気だ。
今回は、ボローニャの商工会議所にも郷土料理として登録されており、レストランでは前菜としてよく見かけるSpuma di Mortadella(モルタデッラのムース)をマンマ・ロッセッラに作ってもらった。「モルタデッラを買うときは、ピスタチオ入りもあるけど、ボローニェーゼはピスタチオなし一択! 簡単で、とってもおいしいから是非皆さんも作ってみて!」
<参考サイト>
・Consorzio Italiano Tutela Mortadella Bologna https://mortadellabologna.com
・Taccuini Gastrosofici.it https://www.taccuinigastrosofici.it/ita/news/contemporanea/panini-e-cibi-di-strada/Storia-della-mortadella.html
エミリア=ロマーニャ州、ボローニャ在住。オリーブオイル国家鑑定士&イタリア政府認定旅行添乗員。日米の大学を卒業後、大手外資系企業にて経営コンサルタントとして勤務。その後、2006年に渡伊。現在は、異文化間プロジェクトディレクターとして、イタリアやアルバニアを中心に活動。ビジネス通訳や観光支援のみならず、大使館・省庁・地方自治体主催の食文化交流イベントコーディネートや、各種視察コーディネート(大学研究視察、レッジョ・エミリア・アプローチといった幼児教育視察など)、世界と日本をつなぐお手伝いをしている。男の子2人のマンマ。自分を3語で表すなら「食いしん坊」「楽天家」「晴れ女」
作り方
- モルタデッラ・ボローニャIGP、フレッシュリコッタ、生クリーム、粉パルミジャーノ・レッジャーノDOPをボールに入れる。(かたまりのモルタデッラを使用する場合は、混ぜやすい大きさに切っておく。)。(写真a,b 参照)
- 材料をブレンダーで混ぜる。(写真c 参照)
- 全粒粉パンをサクッとする程度に焼く。パンは、お好みで型抜きしても良い。(写真d 参照)
- パンにムースをのせ、お好みでピスタチオを振りかける。(写真e,f 参照)