Vol.55よりスタートした新コーナー「新時代のシェフを訪ねて」(提供:亀屋食品株式会社)
これからの日本のイタリア料理業界を担ってゆく若手シェフの半生と、思い入れの深い一皿にまつわるストーリーをご紹介していきます。
3回目は浅草にある「PIZZERIA Kiraku」の川村修也さん(31)。
ナポリ、浅草――下町人情に支えられ
観光客でにぎわう浅草の雷門から南へ5分。暮らす人々の息づかいが漂うエリアに店はある。物腰やわらかに迎えてくれた川村さんは、これまで都内のピッツェリアなどで経験を重ねるうちに「現地の様子も見てみたい」と、2019年に3カ月間のナポリ修業へと旅立った。
修業先はスパッカナポリにある「イ・デクマーニ」ナポリでは日本とは桁違いのスピードで、一日に何百枚もピッツァを焼く。とにかくいいものを素早く作る、それを体で覚えてきた。せっかく修業をしたのだから、日本に戻ったら現地で学んだ伝統料理を打ち出したほうがいい、と川村さんは思い込んでいたが、この店には伝統に固執しない自由な気風があった。店のトップに掛けられたのは「自分の料理を作っていけ」という言葉だ。そのおかげで、自分なりにいいと感じるものを作っていこうと思えるようになった。
このナポリ風ジェノヴェーゼのペンネにもその考えが生きている。現地でも店によって具材の煮込み加減や、パスタの種類もそれぞれだったが、「自分がやるなら日本人好みの長時間煮込んだ濃厚なソース状にして、ワインに合うしっかりとした味付けにしよう」と、イメージをしっかりと持ち、それを皿の上で表現している。
もう一つナポリ生活で心に残っているのが、人々の仲間意識の強さだ。川村さんがデリバリー中にスマホを落としてしまったときには、店のトップがすぐさま友人知人に捜索協力を呼びかけ、なんとスマホは無事に戻ってきた。仲間内に困った人がいれば、皆で助け合う。そんな街ぐるみの絆に驚かされた。
縁あって店を構えた浅草の地にも、ナポリと通じるものを感じている。店には周囲の老舗店や住民の人たちが頻繁に訪れてくれるという。「お客さんが口コミで宣伝してくれたり、相談をすれば親身にアドバイスをくれたりするんです。浅草も、人と人の心の距離が近いですね」人々の温かさに支えられながら、川村さんはこれからも自分の料理をじっくりと探求していきたいと語ってくれた。
ソース(10人前)
・牛スネ肉 400g
・牛モモ肉 1.1kg
・タマネギ 1kg
・白ワイン 200cc
・国産ニンニク 1個
・ローリエ 2枚
・ブレンドオイル 適量
・塩、コショウ 適量
・小麦粉 適量
パスタ(1人分)
・ペンネ 75g
・国産ニンニク薄くスライス 7枚程度
・ペコリーノチーズ 15g
・バジル 飾り用
・ブレンドオイル 適量
・塩、コショウ 適量
下ごしらえ
1)牛肉はブロックにカットし、塩・コショウをやや多めにまぶし、1時間寝かせて味を染み込ませる。
2)タマネギを5mm幅にスライスする。
作り方
1)牛肉に小麦粉をまぶし、よくはたく。
2)ブレンドオイルを熱したフライパンで、牛肉を焼き色がつくまで焼く。
3)焼き色がついたら白ワインを入れ、フライパンの鍋肌についたうま味成分をヘラなどを使ってこそぎ取る。
4)深めの鍋にブレンドオイル、潰したニンニクを入れ、香りが立ったらニンニクを取り出す。
5)鍋にスライスしたタマネギを入れ、弱火で濃いきつね色になるまで炒めていく。
6)5の鍋にいためた牛肉を入れ、肉のかさの2倍程度まで水を注ぎ、ローリエを2枚入れて弱火で煮込む。
7)適宜アクを取り、水が減ってきたら足しながら、12時間ほど煮込んで完成。
ポイント
鮮度のよい国産の牛肉を使用し、素材のうま味を生かすことを大切にしている。
ナポリ現地では煮込み時間はもっと短く(3〜4時間程度)、肉やタマネギの具材の形がゴロゴロと残っているレシピが多いが、このレシピはソース状になるまで長時間じっくりと煮込むことで、パスタによくからむようにしている。川村さんは修行先の店での定番だったペンネと合わせるのがお気に入り。
パスタのほかに、ジャガイモと和えたり、ブルスケッタにしたり、多めに作っていろいろな食べ合わせも楽しめる。
PIZZERIA Kiraku
東京都台東区雷門2-7-6 豊田ビル102
03-6826-0238
https://www.instagram.com/pizzeria_kiraku/
文:宮丸明香 写真:日高奈々子
これからの日本のイタリア料理業界を担ってゆく若手シェフの半生と、思い入れの深い一皿にまつわるストーリーをご紹介していきます。
3回目は浅草にある「PIZZERIA Kiraku」の川村修也さん(31)。
ナポリ、浅草――下町人情に支えられ
観光客でにぎわう浅草の雷門から南へ5分。暮らす人々の息づかいが漂うエリアに店はある。物腰やわらかに迎えてくれた川村さんは、これまで都内のピッツェリアなどで経験を重ねるうちに「現地の様子も見てみたい」と、2019年に3カ月間のナポリ修業へと旅立った。
修業先はスパッカナポリにある「イ・デクマーニ」ナポリでは日本とは桁違いのスピードで、一日に何百枚もピッツァを焼く。とにかくいいものを素早く作る、それを体で覚えてきた。せっかく修業をしたのだから、日本に戻ったら現地で学んだ伝統料理を打ち出したほうがいい、と川村さんは思い込んでいたが、この店には伝統に固執しない自由な気風があった。店のトップに掛けられたのは「自分の料理を作っていけ」という言葉だ。そのおかげで、自分なりにいいと感じるものを作っていこうと思えるようになった。
縁あって店を構えた浅草の地にも、ナポリと通じるものを感じている。店には周囲の老舗店や住民の人たちが頻繁に訪れてくれるという。「お客さんが口コミで宣伝してくれたり、相談をすれば親身にアドバイスをくれたりするんです。浅草も、人と人の心の距離が近いですね」人々の温かさに支えられながら、川村さんはこれからも自分の料理をじっくりと探求していきたいと語ってくれた。
〈レシピ〉
材料ソース(10人前)
・牛スネ肉 400g
・牛モモ肉 1.1kg
・タマネギ 1kg
・白ワイン 200cc
・国産ニンニク 1個
・ローリエ 2枚
・ブレンドオイル 適量
・塩、コショウ 適量
・小麦粉 適量
パスタ(1人分)
・ペンネ 75g
・国産ニンニク薄くスライス 7枚程度
・ペコリーノチーズ 15g
・バジル 飾り用
・ブレンドオイル 適量
・塩、コショウ 適量
下ごしらえ
1)牛肉はブロックにカットし、塩・コショウをやや多めにまぶし、1時間寝かせて味を染み込ませる。
2)タマネギを5mm幅にスライスする。
作り方
1)牛肉に小麦粉をまぶし、よくはたく。
2)ブレンドオイルを熱したフライパンで、牛肉を焼き色がつくまで焼く。
3)焼き色がついたら白ワインを入れ、フライパンの鍋肌についたうま味成分をヘラなどを使ってこそぎ取る。
4)深めの鍋にブレンドオイル、潰したニンニクを入れ、香りが立ったらニンニクを取り出す。
5)鍋にスライスしたタマネギを入れ、弱火で濃いきつね色になるまで炒めていく。
6)5の鍋にいためた牛肉を入れ、肉のかさの2倍程度まで水を注ぎ、ローリエを2枚入れて弱火で煮込む。
7)適宜アクを取り、水が減ってきたら足しながら、12時間ほど煮込んで完成。
ポイント
鮮度のよい国産の牛肉を使用し、素材のうま味を生かすことを大切にしている。
ナポリ現地では煮込み時間はもっと短く(3〜4時間程度)、肉やタマネギの具材の形がゴロゴロと残っているレシピが多いが、このレシピはソース状になるまで長時間じっくりと煮込むことで、パスタによくからむようにしている。川村さんは修行先の店での定番だったペンネと合わせるのがお気に入り。
パスタのほかに、ジャガイモと和えたり、ブルスケッタにしたり、多めに作っていろいろな食べ合わせも楽しめる。
PIZZERIA Kiraku
東京都台東区雷門2-7-6 豊田ビル102
03-6826-0238
https://www.instagram.com/pizzeria_kiraku/