お料理説明・背景
パスクアはキリスト教徒にとって大切な休日。日本のお正月のように、家族や親戚が集まってみんなで食卓を囲んで、楽しく、おいしく、長い一日に。そんな家族の食卓に侵入して、パスクアの料理を紹介してもらった。
先祖代々ローマ生まれのローマ育ちで、もう何代目かは分からないというエレオノーラさん。前日までの大雨が嘘のように晴れて気持ちの良いパスクエッタの朝。自宅に行くと満面の笑顔で迎えてくれた。
まず出されたのはパスクアの日の朝食だ。サラミに、甘いパンという珍しい組み合わせ。チーズをのせることもある。なんでそういう組み合わせなのかは分からないけれど、断食明けの朝にはこれと決まっているらしい。
ここはローマの中心街から車で2,30分南へ来たドラゴローネというところ。海が近く、パスクアとクリスマスと夏には、家族はここに集まる。
結婚46年目、ふたりの息子を育ててきたエレオノーラさんが食事に心がけてきたこと、それは旬や季節感であり、ローマの伝統だ。それが今日の食卓にも良く現れている。そして長男はもっぱら食べる専門で、次男は作るのも好きで、この日のドルチェは次男が作ってきた。
そのエレオノーラさんにローマの好きなところを訪ねてみた。「ロマーナは心が広くて、豊かなところ」下町的な人情に溢れるところが誇りだと言われ、今日のこのもてなしも生粋のローマっ子の現れだと思ったのだ。
この日集まったのは、ふたりの息子の家族と、エレオノーラさんの大の仲良しビアンカさんご夫婦とその娘夫婦、そしてビアンカさんのお母さん88歳のジュリアーナさんの総勢14名。にぎやかに食事が始まった。
出されたお料理は、苦くて甘い野生のアスパラガスを使ったフリッタータ。そして、今回レシピを紹介するロマーニの大好物、カルチョーフィの煮込み。季節になると、あちらこちらで山積みのカルチョーフィを目にする。穂先が丸いのがトッツォといってローマ周辺では一般的。調理法も様々で、ローマのソウルフードである写真のコラテッラ(羊の内臓煮込み)にも使われている。炒めたり、揚げたり、そのままサラダにしたりと、独特の味と香り食感とが、色々と楽しめる。
最初は大きいのに、硬い部分を剥いていくと大きさは半分くらいになってしまう。茎の部分もおいしい。ローマ好きにはたまらない一品。
文:マッシモ 写真:萬田康文