お料理説明・背景
小さな子供二人をかかえる小学校教師のダニエラさん。毎日が子育てと仕事に忙しい彼女が、今回教えてくれるのが「発酵リコッタチーズ入りカボチャの煮物」。発酵リコッタチーズはイタリア語でリコッタ・フォルテと呼ばれる。直訳すると、強いリコッタチーズとなる。その名のとおり、鼻をつく刺激臭を放ち、味はピリピリと塩辛い。テクスチャーはクリームチーズのようだ。
リコッタ・フォルテは昔からこの地方の発酵食品であり、プーリア州全域とお隣りのバジリカータ州マテーラ地方で食べられる。方言ではリコッタ・アシュクアンテと呼ばれ、ラテン語のヒリヒリ傷むという言葉が語源だ。ミルクの甘さが魅力の普通のリコッタチーズとはまったくの別物である。日本ではまだ馴染みがないだろうが、近年は日本のチーズ工房でも製造がはじまっている。
作り方はとても簡単! 水気を切ったリコッタチーズをタンクに入れて、毎日数回混ぜる。少しずつ塩を加え、日ごとに発酵が進み、独特の発酵臭と口の中を刺すような味わいが生まれる。尚、州内のチーズ工場ではリコッタ・フォルテ専用の電動タンクが普及している。タンク内部に混ぜるための羽根があり、タイマーをセットしておけば機械が自動でチーズを混ぜてくれるのだ。
そして、チーズをどのくらい発酵させるのか?は好みの問題。若い状態では2カ月、長期では8カ月以上にもなる。スーパーでよく見かけるのは2~3カ月発酵させたフレッシュなタイプだ。乳種は牛、羊、山羊。単体でも混合乳の場合もある。興味深いのが、このチーズが生まれた背景。売れ残ったリコッタチーズを捨てずに別の商品にして食品ロスを防ぐ先人のアイデアからだ。
気になるのは、地元の人がどのようにこの変わり種のチーズを食べるか?一番手軽な方法は、トーストしたパンに塗るだけ。人によっては、その上に生のミニトマトを押しつぶしてから頬張る。これにワインを合わせれば、あっという間にプーリア流アペリティーヴォが完成する。さらに、トマトソースを作る工程の最後にこのチーズを混ぜ、仕上げのスパイスとしても使われる。
今回ご紹介するのは、カボチャを使った州北部ガルガーノ半島のレシピ。彼女がご主人のおばあちゃんから譲り受けたもの。カボチャは長期保存できるため、冬にはプーリアの家庭でもまん丸とした西洋カボチャが2~3個は常備されている。加熱すると甘さが増すカボチャにリコッタ・フォルテでアクセント加える料理で、前菜としても、パンを添えて主食にもなる便利なひと皿だ。
イタリア政府公認添乗員。世界遺産の町アルベロベッロで会社員として勤務する傍ら、自宅にてチーズと郷土料理の教室「南イタリアチーズ&料理教室」を主宰。オリーブオイルソムリエとチーズテイスターの知識をベースにプーリアの食を探求する日々を送る。
材料
発酵リコッタチーズ入りカボチャの煮物(4人分)
・カボチャ | 1.2kg | 皮つきの状態の重さ |
---|---|---|
・ニンニク | 1片 | |
・タマネギ | 100g | |
・塩漬けケッパー | 30g | |
・オイル漬けアンチョビ | 18~20g | |
・塩水漬けオリーヴ | 100g | |
・塩 | 少々 | |
・コショウ | 少々 | |
・オリーヴオイル | 100ml | |
・リコッタ・フォルテ | 大1~1.5 |
作り方
下ごしらえ
- タマネギは皮をむき、3~5mm幅に切る。
- カボチャは皮をむき、種を取り除いて2~3㎝角に切る。(写真a 参照)
作り方
- 鍋にオリーヴオイルを入れ、皮をむいたニンニクを1片まるごと入れて香りが出るよう弱火にかける。(写真b 参照))
- 次にタマネギを加え、ゆっくりと混ぜながらやや強めの弱火で炒める。ここでタマネギを焦がさないように注意する。(写真c 参照)
- タマネギがしんなりしてきたら、ケッパーとアンチョビを加える。(写真d 参照)
- アンチョビがオリーヴオイルに溶けたら、ニンニクを取り出す。(写真e 参照)
- カボチャとオリーブを鍋に入れ、混ぜながら、やや弱めの中火で1分程度加熱する。その後、蓋をして15分弱火で煮る。必要があれば、途中で数回かき混ぜる。(写真f 参照)
- カボチャを煮ている間にフライパンでパンを焼く。トースターがあれば、パンに焦げ目がつく程度に焼いておく。(写真g 参照)
- 最後に、塩とコショウで味を整え、リコッタ・フォルテを加えて軽く混ぜる。アツアツを皿に盛り付け、パンを添えれば完成。(写真h 参照)