お料理説明・背景
ダニエラさんは、6歳と2歳の子供をもつ現役子育て世代。州中部の小さな町から州都のバーリへお嫁にきて、小学校の先生として働くワーキングママでもある。幼い頃からボーイスカウトに通い、今もなお隊長を務める面倒見のよいしっかり者だ。そんな彼女の日常は時間との闘い。小さな子供を抱えながらなんでもこなすため、ここ数年で時短料理が得意になった。
今回、彼女が紹介するのが、プーリア州をはじめイタリア全土で冬によく見かける野菜フィノッキオを煮込む手軽な料理だ。寒い冬に心と体がほっこりと温まる「フィノッキオのスープ」。簡単に作れて、大人から子供までみんなが喜ぶ人気のレシピ。ダニエラさん曰く「時間が惜しい現役世代のマンマにこそ、ぜひ作ってもらいたいわ」と忙しい人へイチオシの一品である。
平野が多いプーリア州では年間を通して野菜や果物の栽培が盛んだ。フィノッキオは、ここで晩秋から冬に食べられるポピュラーな野菜。日本語ではウイキョウ、英語ではフェンネルと呼ばれ、日本では野菜というよりハーブとして知っている人が多いだろう。最近は日本でもイタリア野菜が多く栽培されるようになり、このフィノッキオを味わう機会が増えている。
タマネギと長ネギを掛け合わせた見た目で、独特の甘く爽やかな香りがする。味はさっぱりとして生で食べるとみずみずしく、セロリや白菜のようにシャッキシャキ。この食感がたまらなく病みつきになる。プーリアの家庭ではメインディッシュ後の口直しとして、フレッシュなフィノッキオをみんなでむさぼり食べる。他にはサラダの具材として活用するマンマも多い。もちろん加熱してさまざまな料理にも化ける重宝な野菜だ。
フィノッキオは熱を加えると独特の芳香が倍増し、瞬く間にキッチンいっぱいに広がる。この香りを嗅ぐとなんとも食欲を刺激されて仕方がない。今回紹介するスープも煮込んだフィノッキオを主食として食べる香り高いひと皿だが、物足りないときは小さなパスタを入れてスープパスタにしてもよい。さらにボリュームを出すなら、牛ひき肉を炒めて加える裏技もある。その時の気分やお腹の具合で調整できるので便利極まりない魔法のスープともいえるだろう。
湯気がたちのぼるスープを家族みんなではぁふはぁふと口いっぱいに頬張る。冬の寒さのなかスープのぬくもりを感じると、自然と体がほぐれていく開放感に満たされるに違いない。決して高価な食材を使った料理ではないが、何ものにも代えがたい家族の喜ぶ顔が見られるお手軽なひと皿だ。尚、プーリア州では12月8日から1月6日まで続くクリスマス期間の整腸料理としても人気。日本では年末年始の飲み会や正月料理で疲れた胃袋を癒すにもってこいだろう。
イタリア政府公認添乗員。世界遺産の町アルベロベッロで会社員として勤務する傍ら、自宅にてチーズと郷土料理の教室「南イタリアチーズ&料理教室」を主宰。オリーブオイルソムリエとチーズテイスターの知識をベースにプーリアの食を探求する日々を送る。
作り方
下ごしらえ
- フィノッキオは茎を切り落とし、鱗茎(白い部分)のみにして水洗いする。その後、芯の硬い部分をのぞき2~3cm角に切り、ボウルに入れてさらに水洗いする。 (写真a 参照)
- ニンジンは皮をむき、1~1.5cm角に切る。