お料理説明・背景
クリスマスの時期になると、トラーパニのパスティッチェリアのショーケースを賑わすのがイチジクのビスコッティ。イタリアのクリスマスは12月8日の通称「インマコラータ(正式名称はImmacolata Concezione)で聖母マリア様の母アンナが無原罪でマリア様を懐妊した日)」から始まります。この時期になると、家ではマンマがせっせとこのビスコッティを作るのが恒例!
今ではパスティッチェリアでも、家庭でも作られるトラーパニの伝統菓子となったイチジクのビスコッティですが、実はトラーパニ近郊の山の上の街エリチェの修道院で生まれた修道院菓子なのです。
イチジクと言えば聖書の最初に出てくる植物の固有名詞。エデンの園で、アダムとイブが食べてはいけないと禁じられた「善悪を知る知識の木」の実を食べて、神さまから隠れたときに、自分の裸を隠すために使ったのがいちじくの葉でした。その他、色々なシーンで聖書に登場するイチジクは、キリスト教にとっては重要な意味を持ち、また古くから存在していた木であり、果物であることが分かります。イチジクの原産地はアラビア南部や南西アジアと言われていますが、地中海沿岸では古代エジプトの時代から植わっていたとされ、地中海性気候がイチジク栽培にとても合っていたのだと。実際、現在でも田舎のおうちの庭には必ずイチジクの木があり、夏になると蜜があふれるイチジクがたわわに成っている光景をあちらこちらで見かけます。
今回、イチジクのビスコッティを教えてくれたパオラさんのお宅にも、大きなイチジクの木が2本。8月になるとイチジクを収穫して、二つに割って干します。ある程度、乾燥したら2つのイチジクを引っ付けて、糸をとおして大きな首飾りのように丸くして、納屋に干して冬まで保存します。
「昔は甘いものはとっても貴重だったのよ。だから、夏の恵みをクリスマスのお祝いの時まで保存していたのよ。」
このレシピは、エリチェで修道院菓子を作っていた方から直接教わったレシピをパオラさんが自分好みに仕上げたレシピ。庭になるオレンジの皮のすりおろしを加えてさらに風味をアップさせたとおっしゃっていました。生地にセモリナ粉が入るのもシチリアらしく、サクサクに仕上がります。
「シチリアには季節ごとに様々な食の風物詩があるけれど、夏の干しイチジク作りは大切な行事の一つなのよ。なにせ、クリスマスのお菓子に必ず必要だからね!」
パオラさんは子供たちが実家に戻ってきたときに、このビスコッティをおいしそうに食べる姿を見るのが毎年楽しみだそうで、大切な家族のために毎年せっせとイチジクを干して、ビスコッティを作るのです。
2023年もそろそろ終わりに近づき。今年もマンマイチジクのビスコッティが楽しみなシーズンがやってきます! アイディア次第で色々な形を作ることができます。ぜひオリジナルな形を作って楽しんでくださいね!
2005年よりイタリアの南の島、シチリア島在住。力強い大地の恵みと美しい大自 然にすっかり魅せられ、シチリアに残ることを心に決める。現在、シチリア食文化を研究しつつ、トラーパニでシチリア料理教室を開催。また、シチリア美食の旅をコーディネートする「ラ ターボラ シチリアーナ」の代表&コーディネーターとしてトラーパニで活動中。 シチリア美食の旅をコーディネート「ラ ターボラ シチリアーナ」
作り方
下ごしらえ
- バターを1cm角に切る 。(写真a 参照)
- セミドライイチジクの枝の部分を包丁で取り、1/4に切る。(写真b 参照)
作り方
- 生地を作る。ボウルにバターと牛乳以外の材料を入れ軽く混ぜる 。(写真c 参照)
- 1にバターを加え、指先ですり混ぜるようにして他の材料となじませる 。(写真d,e 参照)
- 牛乳を2回に分けて入れ、手で握るようにして全体をまとめたらラップをして冷蔵庫で1時間休ませる。(写真f,g 参照)
- リピエーノを作る。材料を全てフードプロセッサーに入れ、滑らかになるまでまわす。(写真h,i 参照)
- 取りだしたらひとまとめにして4等分し、直径2cm×16cmの棒状に成形する。(出来上がりは4本)。(写真j 参照)
- 4等分した生地を打ち粉をした台の上に載せ、麺棒を使って横16cm×縦10cmの長方形になるように伸ばしたら5を中央に載せる。(写真k 参照)
- 生地の長い方を、リピエーノを包むように向こう側から転がして最後を指でしっかりと押さえ、とじ目が下面になるように置き、上から軽くつぶして平らにする。(写真l,m 参照)
- 形成した生地を4等分に切り、上に包丁で切り込みを入れる。(写真n 参照)
- ビスコッティの表面(切り込みがあるほう)にカラースプレーをつけ、オーブンシートを敷いた天板の上に並べる。(写真o,p 参照)
- 180度のオーブンで約20分、軽く色が付くまで焼く。(写真q 参照)