お料理説明・背景
トスカーナの秋の楽しみと言えば、キノコ狩りと栗拾い。今年もおいしいものをたくさん食べられる、食欲の秋が到来しました。トスカーナでのポピュラーな栗の食べ方は焼き栗で、暖炉の火でじっくり栗を焼いて食べたり、街角でも焼き栗が販売されていたりしますが、トスカーナには栗のお菓子も存在します。その代表格が「Castagnaccio(カスタニャッチョ)」。カスタニャッチョというユーモラスな響きのネーミングは、カスターニャ(イタリア語で栗のこと)に由来します。
秋になるとトスカーナの八百屋やスーパーでは、以前紹介したトスカーナの伝統菓子「schiacciata con l’uva(スキアッチャータ・コン・ルーヴァ)=ブドウのスキアッチャータ」と並んでカスタニャッチョも店頭に並ぶようになります。
カスタニャッチョの材料となる栗粉は10月頃からスーパーで手に入るようになり、その他にも栗のクレープやクロスタータ、マフィンなどに使われます。
私の生まれ故郷である三重県には「黒餅」という、餅米に黒砂糖を搗き込んで作る餅のお菓子があり、私の大好物でもあるのですが、カスタニャッチョは色と形が黒餅に似ています。なので、私にとってカスタニャッチョはなんとなく親近感の湧くお菓子なのですが、当然のことながら黒砂糖と栗では味は異なります。ただ、どちらのお菓子も、うっすらさりげなく感じる程度のほのかで素朴な甘みが共通点。黒餅が手に入らないイタリアで、黒餅が恋しくなったら食べるのがこのカスタニャッチョなんです。
カスタニャッチョの見た目は茶色ですが、主原料の栗の粉は真っ白です。栗の粉に水とオリーヴオイルを加えて焼くとあら不思議、見事な茶色に変色します。
「最初に言っておくけど、私は料理を教えるのが苦手よ! 私の料理はすべて目分量で、材料を事前に量ることなんてないから。だから、分量を伝えようがないのよ。」
豪快に笑いながらそう話すのは、今回カスタニャッチョを教えてくれたジュゼッピーナさん。そんなわけで、ジュゼッピーナさんが材料を事前に量ることは一度も無かったため、すべて後から材料の使用量を私が計測するといった形での取材になりました。
ジュゼッピーナさんは、フィレンツェから40kmほど離れたピアン・ディ・スコ出身で現在はフィレンツェで暮らしています。これまで数多くのイタリアのマンマを取材してきましたが、ほぼ全員がトスカーナ伝統料理のレシピ本を愛用していましたが、ジュゼッピーナさんは「そんなの持ってない無いわよ」とのこと。
カスタニャッチョは砂糖を使わない、栗の甘さのみのお菓子なので、レーズンを入れないとさらに甘みはなくなります。レーズンを加えるかどうかはそれぞれの好みによるので、自分好みにアレンジしてみてくださいね。かなり甘さ控えめのお菓子なので、トスカーナ名産の「ヴィン・サント(vin santo)」という甘いワインと一緒に食べるのがお勧めです。
栗粉とエクストラ・ヴァージン・オリーヴオイルと水をただ混ぜて焼くだけ、という超シンプルで簡単なカスタニャッチョは、お菓子作りが苦手な人でも作るお菓子。ただし、新鮮な栗粉を使うことがポイント。一度に沢山焼いて好きなように切り分けられるので、突然人数が増える可能性のあるホームパーティーでのおもてなし用にも便利。見た目に可愛らしくラクに持ち運びもできるので、手土産としても重宝しますよ。
「カスタニャッチョ」に欠かせない”栗の粉”について、栗生産者に聞きいたコラムも掲載していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
https://italiazuki.com/?p=46972
元静岡朝日テレビ報道記者。2012年からフィレンツェ在局FMラジオにレギュラー出演中。FIATジャパン公式サイトや週刊新潮等でライターとして活動中。世界40カ国旅行。イタリアで起業、オンラインショップ&ブログ「AmicaMakoイタリアンスタイル」を経営。
作り方
下ごしらえ
- オーブン耐熱トレイに分量外のオリーヴオイルを塗っておく。(写真a 参照)
- オーブンを180度に予熱しておく。
作り方
- ボウルに栗粉と水と塩を入れる。(写真b 参照)
- 泡立て器で混ぜる。(写真c 参照)
- エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイルを加えて、さらによく混ぜる。(写真d 参照)
- 全体がよく混ざったら、生地を耐熱トレイに入れる。厚みが1cm以上にならないよう、5~7mm程度の薄さになるように注意する。(写真e,f 参照)
- 松の実を上から全体にまんべんなく行き渡るようにふりかける。(写真g 参照)
- 180度に熱したオーブンで20分ほど焼く。(写真h 参照)
- 一度オーブンから取り出し、ローズマリーを全体にパラパラとふりかけて再びオーブンへ入れる。(写真i 参照)
- さらに20~25分ほど焼いて、表面がこんがり焼けたら完成。(写真J 参照)