マンマの紹介
- シルヴァーナ・トゥセ(Silvana Tuse) さん
- アブルッツォ州ファーラ・フィリオルム・ペートリ在住
- 得意料理:料理は得意。働きながら2人の子どもを育てあげたシルヴァーナ。家庭でも登場する伝統料理は自身の母親から学んだものがベースにある。学生時代、夏休みを利用してレストランで料理人として働いた経験もある。市販のものより好きだから、とピザやパンも手作りする。
お料理説明・背景
6月のある雨上がりの夕方、お隣に住むシルヴァーナが庭でゴソゴソしている。何をしているのかと尋ねると「カタツムリを拾っている」と言う。夜になるともっと出てくるから一緒に拾おうと誘われたので、夕食の後、再び懐中電灯を持って庭に出てみると確かにそこら中にカタツムリが発生している。少し気が引けるが、植え始めたばかりの夏野菜の葉を食べ荒らすので、農作物の天敵だと言い聞かせて拾い集める。半時間もするとスーパーの袋がカタツムリでいっぱいになる。何日か掛けて200〜300匹を集め、脱走しないよう蓋ができて通気性のいいカゴに入れて、日陰に置き、最低でも4〜5日は葉野菜を遣りながら糞を出させる。
カタツムリ料理は特に季節を限定した料理ではないが、シルヴァーナの母は毎年8月15日の聖母被昇天の祝日とクリスマスにこのカタツムリ料理を作ってくれたそうだ。夏場は雨が降れば難なくカタツムリが見つかるが、冬場はオリーブの木の幹にできた穴に手を入れてカタツムリを探したそうだ。まだ暖かい時期は穴の中には蛇がいる可能性もあるので、まず枝を差し込んで蛇を巻き取るか、水を入れてカタツムリが出てくるのを待つ。
お祝いの食卓に特別な料理を振る舞おうと奮闘するマンマの姿を想像すると胸が熱くなる。また、細かな下処理に膨大な時間を割く今回のレシピからは、少しでもおいしく食べられるようにという母の心遣いが伝わってくる。そんな母の味を引き継ぎ、シルヴァーナも夏に1度はカタツムリ料理を作り続けており、家族たちも「チャンマイケ」と親しみを込めて呼ぶそれを楽しみにしている。レストランでもめったにお目に掛かれないし、引き継ごうとする若い人も少なく、作り手が減る一方の料理をこの機会にレシピに残せてよかったと思う。
食べ方だが、手前の方は爪楊枝や小さなフォークで突き刺して食べ、奥に詰まった分は殻に口を付け勢いよく吸うと、ポロッと出てくる。最初の工程で殻の先端に穴を開けるのはこのためだ。
ちなみに、海側の町では通称「海のカタツムリ」と呼ばれる料理がある。これは海に生息するつぶ貝の一種で、トマト煮込みにして食べるのが一般的だ。小粒なので粒を味わうというよりは、貝の旨味を含んだソースをパンに付けるなどして楽しむ。今回の大地のカタツムリ料理に比べ下処理も簡単で、海辺のレストランではよく見かける。
2002年のアブルッツォ留学をきっかけに、現在は大阪とアブルッツォの2拠点生活を行う。関西を中心に都市計画コンサルタントとして地域ブランディングに携わる傍ら、SNSや寄稿などを通して州の魅力やくらしを発信している。
材料
アブルッツォ風 大地のカタツムリ料理(完成形で約90個分:1人10~15個くらいは食べられる)
・カタツムリ | 約200個 | |
---|---|---|
・酢 | 適量 | |
・粗塩 | 適量 | |
・ローリエ | 2~3枚 | |
・オリーヴオイル | 適量 | フライパンに入れた際カタツムリが浸る程度 |
・白ワイン | 180ml | |
・ニンニク | 1片 | |
・イタリアンパセリ | 5~6枝 | |
【詰め物(カタツムリ以外)】 | ||
・パンの柔らかな部分 | 400~500g | |
・ニンニク | 2片 | |
・チーズ | 100~150g程度 | |
・イタリアンパセリ | 5~10枝 | |
・ミント | 2枝 | |
【トマトソース】 | ||
・セロリ | 10cmほど | |
・ニンジン | 約5cm | |
・ニンニク | 1片 | |
・ピーマン | 2~3個 | |
・バジル | 2~3枝 | |
・トマトソース | 約500ml | |
・熟したトマト | 適量 | あればお好みで |
・水 | 約500ml | |
・塩 | 適量 |
作り方
下ごしらえ
- 収穫したカタツムリを涼しい場所でレタスなどの餌をあげながら最低3日以上かけて糞を出す。(写真a 参照)
- スプーンの底で殻の先端を2~3度軽く叩きヒビを入れナイフで5mm程度円形にくり抜く。(写真b 参照)
- 2のカタツムリを溜めておいた水に入れ20~30分放置する。生きているものは動き始める。(写真c 参照)
- 3~4回水を入れ替えて殻についた汚れを洗浄する。(写真d 参照)
- 4のカタツムリをザルに上げ、粗塩と酢を入れた容器に入れ泡や粘りを出させる。(写真e 参照)
- 泡と粘りがなくなるまでさらに4~5回水を替えながらゆすぐ。(写真f 参照)
- 鍋にお湯を沸かし、ローリエを入れてカタツムリを湯がく。沸騰後15~20分加熱する。加熱の際、アクが出て来たら取り除く。(写真g 参照)
- お湯を切り爪楊枝などを使って身を取り出し、糞が入っている腸の部分は取り除く。(写真h,i 参照)
- さらに酢と粗塩で洗ってすすぐ。(写真j 参照)
- 殻は2で開けた穴に破片などが残っていたら取り除き、すすいで乾かしておく。(写真k 参照)
- フライパンにカタツムリとカタツムリが浸る程度のオリーヴオイル入れ弱めの中火で加熱する。(写真l 参照)
- 蓋をして小1時間ほど、時折白ワインを足しながら、しっかり火を通す。(写真m 参照)
詰める
- パンは手で適当にちぎり、ニンニク、イタリアンパセリ、ミントはみじん切りに、チーズはおろしておく。(写真n 参照)
- 12のカタツムリをオリーヴオイルごと13と混ぜ合わせる。(写真o 参照)
- 殻に詰め物→カタツムリ→詰め物→カタツムリ→詰め物の順に指で押し込みながら詰める。(写真p,q 参照)