マンマのレシピ

マンマの紹介

  • マリーノ・アンジェローニ(Marino Angeloni) さん
  • サルデーニャ州オルビア在住
  • 【得意料理】魚介料理

お料理説明・背景

今回は、特別に編集の方に許可を頂き、バッボ(お父さん)のレシピです。
なぜかと申しますと、料理を教えてくれるのが、サルデーニャ島北東部の海沿いの町、オルビアの貝類の漁師のマリーノだからです。漁師が家庭で作る料理って大変興味が湧きませんか?マリーノの家では、肉料理は奥様のロゼッラさんが担当、魚料理の時はマリーノが作るそうです。サルデーニャでは意外にも、料理が得意なお父さんは少なくありません。

マリーノは、アサリや牡蠣、マテ貝など、貝類の漁師。そのため、今回のレシピは、サルデーニャ島の名物のパスタのフレーゴラを使った、海の幸のフレーゴラをご紹介いたします。

フレーゴラ fregola は、フレーグラ fregula とも呼ばれます。フレーゴラは、サルデーニャの方言のサルド語のフレーグラのイタリア語での呼び方ですが、サルデーニャの人々は、人によって、フレーゴラと呼ぶ人とフレーグラと呼ぶ人がいます。生粋のサルデーニャ人のマリーノは、フレーゴラと発音していますので、今回はフレーゴラという呼び方にしたいと思います。

フレーゴラの名前の由来は、擦るという意味のフレガーレ fregare から来ています。手作りをする場合は、粉を両手で擦るようにして小さな丸いパスタをつくるからです。
フルッティ・ディ・マーレのフレーゴラの時は、アサリとムール貝、そしてイカ、この3種類を入れるとおいしくできあがる、とマリーノ。もちろんエビやスカンピを足しても良いです。でも、明確なきまりがあるわけではなく、魚屋さんで手に入ったもので構わないとも。

マリーノが朝、とったばかりというアサリとマテ貝。この2つは養殖ではなく、天然もの。そして、ムール貝は漁師仲間からその日の朝、譲ってもらったものという新鮮な材料。
コンチェッシオーネ(認可)を持っているオルビア湾のすぐ近くで育ったマリーノは、子供の頃から友達とアサリをとったりしながら遊んでいたそうです。35年前は、アサリはもっとたくさんあって、値段もとっても安くて、庶民の食べ物だったけれども、今はかなり高級品になってしまったと言います。

現在オルビアで流通しているアサリの種類は大きくわけて、Tapes decussata とfilippina の2種類があります。Tapes decussata が地中海原産のアサリ。filippina の方はアドリア海やインド洋、太平洋に起源をもちます。Tapes decussata は生産量がとても少なく、市場にでまわっているもののほとんどは、filippina種ですが、Tapes decussataの方が小粒ながら風味は各段に良いです。

対して、ムール貝はロシアとウクライナ戦争で少し値上がったけれども、ずっと庶民の食べ物という位置づけはかわりません。マテ貝は、一時、ほぼ全滅してしまったのだけれども、今は少しずつ収穫量を取り戻しています。

マリーノは、貝の話になると話が止まりません。今は、2012年から始めた牡蠣の養殖が楽しくて仕方がない様子で、携帯電話の中の写真もほぼ全て牡蠣の写真ばかりで、奥さんのロゼッラさんが呆れるほど貝の漁師の仕事が大好き。生まれ変わっても、この仕事をしたいと熱く語ります。一人息子のフランチェスコはお父さんの仕事を手伝っているけれども、将来はどうするかまだ決めていない様子。仕事はやはり情熱がないと続かないから、それは息子がそのうち決めることとマリーノは言っていますが、期待している気持ちが伝わってきます。

小さな粒上のパスタのフレーゴラは、リゾットのように作ります。そのため、パスタが海の幸のブロードをたっぷりと吸い込み、味わい深い一皿。マリーノは、少しブロードがフレーゴラにかぶるくらいのブロード多めのフレーゴラが好きと言っており、筆者の好みともぴったり。とりたての貝類を用いたフレーゴラは、今まで食べたどのレストランのフレーゴラも霞んでしまうほどおいしかったです。是非、ご家庭でも新鮮な材料で作ってみてください。

レポート:加藤 佐和子(Sawako Kato)
イタリア・サルデーニャ州公認観光ガイド。2004年からサルデーニャ島在住。2016年にサルデーニャ州公認観光ガイドライセンス取得し、「サルデーニャガイド」を設立。サルデーニャ島での現地ガイド、アテンドの他、サルデーニャ島に関する調査、執筆、各種アレンジなどを致しております。サルデーニャ島の食とワインツアーも行っております。 https://sardegnaguida.com/

材料

海の幸のフレーゴラ 4人分

・フレーゴラ350g
・アサリ1kg
・ムール貝1kg
・マテ貝1kg
・イカ1杯
・トマト缶100g
・エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル適量
・ニンニク3片
・イタリアンパセリ一束
・ペペロンチーノ適量
【魚のブロード】
・スコルファノ1尾カサゴなど
・ニンジン2本
・セロリ4本
・タマネギ1個
・水3L

作り方

下ごしらえ

  1. ニンジン、セロリ、タマネギ、スコルファノと水を深めの大きな鍋に入れ20分ほど煮て魚のブロードを作っておく。(写真a 参照)
  2. アサリは砂抜きをしてきれいに洗う。(写真b 参照)
  3. ムール貝のビッソを取り除き洗う。マテ貝をナイフで開け、水で流しながら指できれいに砂や黒い部分を取り除く。(写真c 参照)

作り方

  1. 鍋にエクストラ・ヴァージン・オリーヴオイルを少々入れ、ムール貝と手でつぶしたニンニク(1片)を入れ、ふたをして火にかけ、ムール貝を開かせる。(写真d 参照)
  2. 別の鍋にアサリを入れ、エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイルをかけ、手で押しつぶしたニンニク(1片)を加え、アサリを開かせる。(写真e 参照)
  3. アサリとムール貝をザルで漉してブロードをとる。身を殻から外す。(写真f,g 参照)
  4. フライパンにエクストラ・ヴァージン・オリーヴオイルを少々いれ、マテ貝を入れ、身が自然にとれてきたら、殻をとって半分に切る。(写真h 参照)
  5. イカを適当な大きさに切り、ニンニク(1片)とイタリアパセリはみじん切りにしておく。(写真i 参照)
  6. 広めの大きな鍋に、エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル、5のニンニク、イタリアンパセリ、ペペロンチーノを入れ、火にかけたら、マテ貝のブロードを入れ、切っておいたイカを入れて、炒める。(写真j,k 参照)
  7. マテ貝、フレーゴラの順に加えて2~3分炒め、オイルと魚介エキスのうまみをしっかりと絡める。(写真l 参照)
  8. トマト缶のトマトを100g程度入れる。(写真m 参照)
  9. アサリとムール貝のブロードを少しずつ入れる。ただし、ムール貝のブロードはかなりしょっぱいので、味見をしながら入れる(すべて入れない)。(写真n 参照)
  10. 魚のブロードを足しながらかきまぜ、リゾットのように仕上げていく。(写真o 参照)
  11. フレーゴラがほぼ煮えたら、殻をとったアサリとムール貝を入れる。(写真p 参照)
  12. 最後に、殻付きのアサリとムール貝を飾って出来上がり。(写真q 参照)
  • a. 魚のブロードを作る
  • b. アサリを砂抜きして洗う
  • c. マテ貝を開け黒い部分を取り除く
  • d. ムール貝とニンニクを火にかける
  • e. アサリとニンニクを火にかける
  • f. アサリとムール貝をざるで漉す
  • g. エキスも全てざるで漉す
  • h. マテ貝を入れ火を通す
  • i. イカを適当な大きさに切る
  • j. ニンニクをパセリを入れ火にかける
  • k. マテ貝のブロードを入れイカを加える
  • l. マテ貝、フレーゴラを入れ炒め合わせる
  • m. トマトを加える
  • n. アサリとムール貝のブロードを少しずつ入れる
  • o. 魚のブロードを足しながらリゾットのように仕上げる
  • p. 殻をとったアサリとムール貝を入れる
  • q. 最後に、殻付きのアサリとムール貝を飾る
※写真クリックで拡大写真が閲覧できます。

お料理ポイント

魚のブロードは前日に作っておいてもよい。フレーゴラを作るお鍋は、深い鍋だと混ぜるのが大変なため、広めのあまり深くない鍋がおすすめ。今回は、海の幸のフレーゴラですが、お肉のソースや野菜、ポルチーニと言ったきのこなどのフレーゴラもおいしいです。