新時代のシェフを訪ねて7 ENO si MARE 小林一貴さん presents by 亀屋食品株式会社


これからの日本のイタリア料理業界を担ってゆく若手シェフの半生と、思い入れの深い一皿にまつわるストーリーをご紹介する連載「新時代のシェフを訪ねて」
7回目は、江ノ島にあるENO si MARE(エノシマーレ)の小林一貴さん(41)にお話を伺いました!

海辺の街、楽しさ広がるイタリアン


片瀬江ノ島駅からわずか1分、川沿いで一際目を引く真っ白な建物の2階にあるのが2024年6月にオープンしたばかりの「エノシマーレ」だ。地中海を思わせる明るい店内はもちろん、テラスに出れば海辺の広い空と潮風に包まれて、リラックスした時間を過ごせる。

▲コンセプトは「毎日食べられるイタリアン」。南イタリア料理を軸にバラエティに富んだ手頃な小皿料理やパスタを、ワインと共に気兼ねなく楽しめる。観光地のにぎわいから離れてゆったりと食事ができるのもうれしい。

オーナーシェフの小林さんは、中目黒で13年続くミラノピッツァの名店「イルボスケット」のオーナーでもある。20代の頃は都内のリストランテやトラットリアで経験を積み、イタリア人や先輩シェフからイタリア各地の料理とピッツァを学び、30代を目前に独立した。
▲「これ絶対おいしい!と思うものを出して、一人でも多くの人に喜んでもらえれば。そしてなにより楽しんでほしいですね」と話すオーナーシェフの小林一貴さん(41)。明るい人柄が声や笑顔からにじむ。

そろそろ世代交代、と考えていた矢先、この物件を紹介された。「元々江ノ島は好きな場所だったんです」小林さんにとって江ノ島は若い頃にサーフィンを楽しんだ思い出の地、迷いはなかった。南イタリア料理の店にしたのは、立地のイメージだけでなく、かつて勤めた店の魚好きな料理長の元で、毎日のように魚を扱っていたことも大きい。


そんな小林さんが紹介してくれたのは「トラパニ風カルパッチョ」。カルパッチョといっても、シチリア現地のそれはマリネに近いもの。そのスタイルを踏まえ、今回は金目鯛を主役に、赤タマネギやアーモンド、レモンオイルなどを使って、皿の上にシチリアらしさを表現した。


ちなみにこのトラパニ風を含めてカルパッチョは5種類、毎日仕入れる魚も日替わりで5種程度あり、それぞれの組み合わせを自由に選べる。この店ならではのおもしろさだ。「今日のおすすめはスズキで、合わせるワインは……」などと会話も生まれる。


「おいしいものを食べたいときに思い出してもらえるような店でありたい」と、飾らず自然体で語る小林さん。好きな場所に店を構え、これまでの経験を生かして、店を続けられることの楽しさとありがたさを、はしばしで口にしていた。小林さんに会うために足を運ぶ人もじわじわと増えているようだ。江ノ島を訪れたら、ぜひ訪ねてみてほしい。


〈レシピ〉



トラパニ風カルパッチョ
サルデーニャ産の塩で締めて厚切りにした金目鯛はうま味が引き立ち食べ応え満点。ハーブ類やレモンオイルの爽やかな香りに、トマトの酸味と甘み、アーモンドの食感がアクセントに。白ワインがあれば、もう最高!

材料(1人分)

・金目鯛(刺身でも代用可能) 60g
・赤タマネギ 20g程度
・アーモンド 2粒程度
・チェリートマト 2個
・フルーツトマト 1個
・バジル 小2枚程度
・マイクロベビーリーフ お好み
・ディル お好み
・塩(サルデーニャ産) 適量
・白コショウ 適量
・レモンオイル 小さじ2+仕上げ用適量
・エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル 大さじ1
・ジェノヴェーゼソース 小さじ1
・タマネギドレッシング(タマネギ、フレンチドレッシングをブレンダーで混ぜたもの) 大さじ2

下ごしらえ
1)三枚おろしにした金目鯛を、両面に塩を振り掛けて10〜20分置く。

2)キッチンペーパーで水分を拭き取る。
3)鮮度保持給水紙で包んで真空パックをする(キッチンペーパーとチャック付きポリ袋でも代用可能)。

4)冷蔵庫で半日〜1日置いておく。
5)4で寝かせた金目鯛を冷蔵庫から金目鯛を取り出し、ガスバーナーで皮面を軽く炙る。ご自身で捌いた場合は、炙った後に小骨を取り除く。

6)再び冷蔵庫に入れて冷ましておく。

作り方
1)赤タマネギを薄くスライスし、エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル(分量外)に20〜30分程度漬けて、辛味抜きをする。

2)アーモンドを包丁の側面で軽く潰して刻む。
3)下ごしらえした金目鯛を冷蔵庫から取り出し、水気をキッチンペーパーで拭い、皮目を下にして1cm程の厚さで斜めにそぎ切りする。

4)ボウルに3を入れ、塩、白コショウ、レモンオイル小さじ2、エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル大さじ1でマリネしておく。
5)チェリートマト、フルーツトマトを1cm程の幅でカットする。
6)4のボウルに、1の赤タマネギ、2のアーモンド、5のトマト、ちぎったバジル、ジェノヴェーゼソース、タマネギドレッシングを入れて和える。

7)6を皿に盛りつけて、上にマイクロベビーリーフ、刻んだディルを載せる。

8)仕上げにレモンオイルを回し掛けて出来上がり!

ポイント
シチリアのマグロの厚切りにレモンを絞ってオリーヴオイルで和える食べ方がイメージの元となっています。そこから野菜と一緒に魚を楽しめて、日本人にも食べやすく、ワインに合う一皿に仕上げました。
魚を塩で締めて寝かせる方法は、イタリアの保存食や江戸前寿司にも通じるもので、水分を抜くことで、魚のうま味を引き立たせることができますよ!




ENO si MARE(エノシマーレ)
0466-60-3091
神奈川県藤沢市片瀬海岸2-8-17 リバーサイド
https://enosimare.owst.jp/



文:宮丸明香 写真:遠藤素子

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