お料理説明・背景
サルデーニャ島北東部、ガッルーラ地方を代表する郷土料理、ズッパ・ガッルレーゼ(ガッルーラ地方のズッパ)をご紹介させていただきたいと思います。
ガッルーラ地方の人は、単にズッパと呼ぶことも多いズッパ・ガッルレーゼ。イタリア料理といえば、地方ごとにちょっとずつレシピが違うように、ズッパ・ガッルレーゼも村ごとにレシピが違い、用いられるパンや肉、火の通し方も村々によって違います。サルデーニャ島のガッルーラ地方の人々とズッパの話になると、皆、私の家や地域では、このように作ると大変盛り上がります。もちろん、皆、自分の家や村のズッパが、世界で一番おいしいズッパだと確信していることはご想像の通り。今回は、筆者の住むモンティ村のズッパ・ガッルレーゼ、ズッパ・モンティーナ(モンティ村のズッパという意味です)をご紹介したいと思います。
ズッパ・モンティーナは、広げて一晩乾かしたパーネ・フィーネ、サルデーニャ語ではパーネ・ラードゥ(pane ladu)、「薄いパン」という意味のパン(写真:焼き立てのパーネ・フィーネ。今回は数日たったものをさらに一晩乾かした状態で使う)を用いて、オーブンで焼かないのが特徴。多くのズッパ・ガッルレーゼは最後にオーブンに入れて焼き上げます。そして羊肉のブロードと、ペレッタと呼ばれる、温めると伸びるチーズを使います。また、小さなカゼイフィッチョ(チーズ製造所)でしか見つけることのできない、チーズのオイルという意味のオッズ・カーズ(ozzu casu)を入れます。
ズッパ・モンティーナを教えてくれるのは、友人のフランチェスカ。パン屋さんの他に、家族で小さなワイナリー Cantina Perandria を持っています。モンティは、サルデーニャ州で唯一のDOCGワイン、ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラDOCGの有名な産地であるため、特に、白ワインはとてもおいしい。赤ワインも、このあたりだけの土着品種なのですが今はあまり栽培する人の少なくなった、カリカジョーラ品種で作るなどのこだわりを持っているカンティーナ。リンバーラ山を望む眺めのよいワイナリーに宿泊施設を作ったところ、宿泊するお客さんから夜ごはんもここで食べたいというリクエストから自然に、家族が飼っている豚や家庭菜園から取れる野菜を使った郷土料理を振舞うようになりました。
ズッパを作るとなったら、フランチェスカのマンマのトニーナさんも張り切って登場。モンティのズッパは大鍋で作る料理。ズッパを作るとなると自然と人が集まります。
夏にはセレブがバカンスを過ごすコスタズメラルダで有名なガッルーラ地方ですが、美しいビーチから数キロのところにも羊や牛がゆったりと草を食んでいる風景に出会います。ガッルーラ地方は歴史的には魚料理よりも肉やチーズ、そしてパンの食文化。モンティの有名なカンティーナ・ソチャーレができる前には、モンティでも小麦を栽培していました。ズッパ・ガッルレーゼは、昔は焼いてから少し日数がたって固くなったパンを捨てないための料理でした。このようなことが、ガッルーラ地方でズッパ・ガッルレーゼが生まれた背景にあります。
ブロードをとるために使ったお肉は、セコンドとしていただきます。前日から煮込んだお肉は、また、滋味深く、とろけるようにおいしい。
サルデーニャ島北東部ガッルーラ地方の郷土料理のため、たとえば、サルデーニャ島の他の地域に住んでいるイタリア人でも、知らない場合があるようなサルデーニャの地方料理をイタリア好きの皆さまに「イタリア好き」でご紹介できることをとても嬉しく思います。また、ズッパ・ガッルレーゼはふつうのレストランではほとんど見かけないメニューですので、まさに、サルデーニャの家庭料理。是非、ご家庭で試してみてください。
イタリア・サルデーニャ州公認観光ガイド。2004年からサルデーニャ島在住。2016年にサルデーニャ州公認観光ガイドライセンス取得し、「サルデーニャガイド」を設立。サルデーニャ島での現地ガイド、アテンドの他、サルデーニャ島に関する調査、執筆、各種アレンジなどを致しております。サルデーニャ島の食とワインツアーも行っております。 https://sardegnaguida.com/
作り方
下ごしらえ
- パーネ・フィーネを広げて、乾燥した場所で一晩、乾かしておく。 (写真a 参照)
- 大きなお鍋に、適当な大きさに切った羊肉、丸のまま、もしくは半分に切ったタマネギ、ニンジン、セロリ、トマト、水、塩を入れ、2時間ほど煮込み、ブロードを作っておく。 (写真b 参照)
- ペレッタチーズを削り、みじん切りにしたパセリを混ぜておく。 (写真c 参照)
作り方
- 大きめのお鍋の中心に細めのボトルなどを置き、最初にオッズ・カーズを入れる。(写真d 参照)
- 手で小さく割ったパーネ・フィーネをザラザラしている面を上に向けて並べる。(写真e 参照)
- ペレッタ(下ごしらえ3)をかける。(写真f 参照)
- オッズ・カーズ、パーネ・フィーネ、ペレッタの層を3~4回繰り返し、最後にボトルを取る。(写真g 参照)
- ブロードを漉す。(写真h 参照)
- 煮え立ったブロードをまず、ボトルがあった中心の穴の部分から注ぐ。(写真i 参照)
- パンがヒタヒタになるまでブロードを少しずつ入れ、お鍋を弱火にかけ、木べらで軽くパンを押しながら、ブロードをしみ込ませる。(写真j 参照)
- ペレッタチーズがとろけて、ブロードがふつふつとしたら出来上がり。(写真k 参照)