お料理説明・背景
南イタリア・プーリア州でパワフルに生きるマンマ、フィロメーナさん。今回、彼女が紹介してくれるのが、フレッシュチーズが主役の時短料理「リコッタチーズとレモンのパスタ」。パスタをゆでる間にチーズクリームを用意して、2つを合わせるだけで完成するという手軽さが魅力。一年を通して食べられるが、特に暑い夏はキッチンに立つ時間を減らすためにマンマ達が作る定番料理だ。
プーリアの食卓に欠かせないモノのひとつにフレッシュチーズがある。温暖な気候のプーリアでは保存食に値する長期熟成チーズは必要なく、年間を通じて主にフレッシュチーズが食べられる。日本でも有名になった巾着状のブッラータをはじめ、モッツァレッラ、リコッタ、プリモサーレなどプーリア人の食卓には毎日のようにご当地チーズが並ぶ。
それもそのはず。田舎のイメージがあるプーリア州はイメージそのままで、どこの街からも車を走らせると30分も経たないうちに乳牛に出くわす。それだけ放牧に従事する家庭がまだ多い。今回の主役であるリコッタチーズもフィロメーナさんが酪農家の友人からいつも仕入れている自家製だ。距離にすると自宅から車で5分という近さ。その鮮度の高さは疑う余地もないだろう。
フレッシュチーズの達人が多いプーリアでは、皆必ず行きつけのチーズ屋がある。一口にチーズといってもミルクの味や塩加減が店ごとに微妙に異なる。鮮度と信頼は買い物時のキーワードで、その日作られたチーズを顔が見える生産者から分けてもらい、“いつもの安定したおいしさ”を家庭で楽しむのがささやかな幸せなのだ。
フィロメーナさんに話を戻すと、料理名人として知られる彼女は夏に2カ月ほど田舎にある別荘に滞在する。彼女曰く「ここでは自然の時間軸で物事が進み、その偉大な自然の前では人間は小さな存在だと気づかされるの。日頃の奢りを取り払い、生かされていることに感謝する期間よ」。この暮らしを30年以上続けているから、いつも人にやさしい気持ちで接することができるそう。
そんな彼女を慕って別荘にはたくさんの友人や親戚が押し寄せる。そこで振る舞われる料理のひとつが、リコッタチーズとレモンのパスタ。彼女が母から受け継いだかまどで作る手料理は、どこのレストランでも食べられない愛おしいご馳走となり人を笑顔にする。
尚、この料理にあわせるパスタは必ずショートパスタを選ぼう。プーリア定番のオレッキエッテもよいが、表面に溝があるタイプのリガトーニなどもOK。リコッタチーズとナツメグ、レモンの組合せはさっぱり&爽やか。今まで食べたことがない味がクセになり、気づかないうちにペロリと完食するだろう。
イタリア政府公認添乗員。世界遺産の町アルベロベッロで会社員として勤務する傍ら、自宅にてチーズと郷土料理の教室「南イタリアチーズ&料理教室」を主宰。オリーブオイルソムリエとチーズテイスターの知識をベースにプーリアの食を探求する日々を送る。
作り方
下ごしらえ
- パスタをゆでるため、鍋に水と塩を入れて沸騰させる。
- レモンは水洗いしてキッチンペーパーで水気をとる。
作り方
- 沸騰した鍋にパスタを入れ、表示どおりにゆでる。(写真a 参照)
- レモンの皮をすり下ろす。表面の黄色部分のみを削り、苦みがある白い部分まで削らないように注意する。(写真b 参照)
- リコッタチーズをボウルに入れる。(写真c 参照)
- フォークでチーズを粗くつぶす。(写真d 参照)
- (4)のボウルにパスタのゆで汁を加える。(写真e 参照)
- さらに混ぜ、もったりとしたクリーム状にする。(写真f 参照)
- (6)にゆでたパスタを加え、チーズが全体に絡むように手早く混ぜ合わせる。(写真g 参照)
- すりおろしたレモンの皮を加える。(写真h 参照)
- 次にナツメグを入れ、よく混ぜる。(写真i 参照)
- 皿に盛り付け、仕上げにレモンをすり下ろしたら完成。(写真j 参照)