お料理説明・背景
フリウリのナターレはパネットーネではなく、グバーナ。同州を代表する……というよりは、特に同州内フリウリ地方を代表するお菓子です。いわゆるハレの食べ物ですので、年末年始のこの時期はもちろん、パスクア、結婚式やお祝い事にはグバーナが用いられています。
発酵させた生地にレーズンやナッツ類をたーっぷりとのせ、それを渦巻状にクルクルと巻いた独特の形。見た目にも実際にもいかにもおいしさがギュッといっぱい詰め込まれた、満ち足りた豊かさが感じられることからでもあるのでしょう。
そして、グバーナと同様に親しまれているのが「ストゥルッキ」。全くの別名ですが、これはいわゆるグバーナの変形版。材料も全て一緒です。小さく球状に丸めた詰め物を発酵した生地で一口大に包んで油で揚げます。結婚式や子供のお祝いの席で配られるコンフェティとして、この地方ではこの揚げ菓子を使うのです。
土地の人々に深い馴染みのあるこの菓子は、ひと昔前までは各家庭で作られていたお菓子でしたが、その手間のかかる手順から、現在ではお店で購入するのが常識のようになっています。地元では、グバーナ専門店(グバナフィーチョ)も何店か点在しており、皆それぞれに各人で好みの店があります。生地の味わい、または中身の具材の配合やその状態……と結構口うるさく品評しあったりするものです。
今回、同レシピを紹介してくれたヴァレーリアさんは、グバーナの発祥の地と言われている、サン・ピエトロ・ディ・ナティゾーネで生まれ育ちました。ナティゾーネ川が流れる小さな集落でスロヴェニア国境が目と鼻の先にあります。彼女のマンマも事あるごとにグバーナをせっせと焼いていたと言います。
彼女自身はもともと地元の小さな会社で会社員として働いていたのですが、ある時一念発起し、すでに店構えのあったグバーナ専門店「グバーナ・デッラ・ノンナ」という店をそのブランドとともに引き継ぎます。1998年のこと。そしてこの店を拠点とし、グバーナを地域内だけではなく、イタリア国内各地で、また国外に至ってもこの地元の伝統菓子を広める活動が始まりました。
今まで足を運んだのはカナダ、フランス、ベルギー、オーストラリア等の国々。2年前には、もともとあった店舗を完全に製造と倉庫にし、そしてその場所から数軒先にあったバールを、素敵な自身の店舗として新改装し、さらに進化を遂げています。新店はすぐにも近所のお馴染みさんの休息場所に、そしてこの地を訪れるドイツやオーストリアからの自転車ツーリング者達の立ち寄り場所となり、多くの利用客を相手に常に忙しく働き続けるスーパーパワフルなマンマです。
とは言え、最近は2人の小さなお孫さんの世話もこなすノンナ(おばあちゃん)としての役割も増え、ブランド名である「グバーナ・デッラ・ノンナ(おばあちゃんのグバーナ)」のイラストに、名実ともになんだか似てきたかな……。
ヴェネトおよびフリウリを中心に、通訳、翻訳、地元マンマの料理レッスン及び生産者訪問コーディネイト、そして野菜を中心とする農産品の輸出業などの活動を行う。 ブログ『パドヴァのとっておき』にて料理や季節のおいしい情報を中心に、日々のできごとを発信中。
作り方
下ごしらえ(詰め物)
- 干ブドウはグラッパに浸して柔らかくしておく(最低1日以上)。
- クルミ、アーモンド、アマレッティ(またはビスコッティ)はそれぞれ細かく砕いておく。
- 松の実をバターで炒る。
- 干しブドウと2、3の材料、砂糖、バニラエッセンスを混ぜ合わせ、休ませておく。
- このまま1~2日おき、馴染ませる。(写真a 参照)
生地を作る
- 牛乳と砂糖を合わせ、ビール酵母を溶かし、約10分おく。
- 別のボウルに溶かしたバター、植物油、卵、塩ひとつまみ、レモンの皮を合わせる。
- 1の牛乳で溶かした酵母を合わせる。
- 分量の粉を合わせ、全体を滑らかな生地になるまで約20分しっかりとこねる。
- ボウルに入れ、布を被せて寝かせる。生地が約2倍の大きさになるまで発酵させる(約2~3時間)。
作り方
- 発酵を終えた生地約550g分を長い楕円形になるように麺棒で伸ばす。(写真d 参照)
- 詰め物500g分を伸ばした生地の上に広げる。端を1cm分ほど残して均一に広げる。(写真e 参照)
- 手前から向こう側に向かって生地を詰め物とともに巻いていき、棒状にする。(写真f,g 参照)
- 巻き終わりが下側になるように調整し、それをさらに渦巻状になるようにクルクルと巻いていく。(写真h,i 参照)
- 先端は指で押しながら口を閉じ、この巻き終わり部分も生地の下側になるように入れ込むようにして、形を整える。(写j,k 参照)
- 耐熱の丸い型に入れさらに約2~3時間かけて発酵させる。(写真l,m 参照)
- 180℃のオーブンで約45分焼く。(写真n 参照)