マンマのレシピ

マンマの紹介

  • チンツィア・デパウリス(Cinzia De Paulis)さん
  • ラツィオ州ポメツィア市在住
  • 【得意料理】ナスのパルミジャーナ

お料理説明・背景

まるで大草原内の一軒家ともいえる地に住んでいるチンツィア。斜向かいには大統領の夏の狩猟用避暑地があるという、森に囲まれた地である。パイロットを引退した夫の趣味は、園芸と家庭菜園、そして養蜂というだけあり、チンツィアはいつも周囲の畑から採れた新鮮な野菜を使って料理をする。なんという贅沢さだろう。

夏の代表的な野菜といえば、やはりトマトである。40度近い気温になることも稀ではないローマ。8月は出来るだけ火を使わずに料理をしたいというのが主婦の本音である。そんな8月の最中に汗をかきながら仕込むのが、自家製トマトジュースだそう。

自家製トマトソースではなくトマトジュース? と思ってしまったのだが、実はジュースを煮詰めたものがソースなのである。最初から煮詰めすぎずにジュースにしておくと、さまざまに応用が効くという。
「それにね、凝縮されたトマトソースを好む人ばかりとは限らないのよ。例えば私はね、煮詰めすぎずにサラッとしたソースの方が好きなの。特に夏場はね」 そう言いながら、赤の可愛らしいキッチンツールで、サラッと煮込んだサンマルツァーノを濾し始めたチンツィア。

トマトプレッサーイタリアの一般的な家庭にあるようなステンレスの濾し器ではなく、赤のちょっとおしゃれなトマトプレッサーはリガモンティ社のもの。通常のステンレス製のタイプは、力を入れながら濾す必要があるため、トマトのカスが器具にみっちりと張り付いてしまう。これは、使用後に洗うのがひじょうに面倒なのだ。ところがこちらは様相が異なる様子。力も入れる必要もなく、スムースに皮と液体に分けている。出てきた皮を何度も濾すことにより、好みの濃縮度に調整することも可能。キッチンに置いておくだけで絵になる、デザインもすぐれものである。

貯蔵食料室こうしてチンツィアは1年の半分以上をこの自家製トマトジュースで過ごすのだという。どれくらいの量の瓶詰めをするの? という私の問いには、いっぱいすぎて分からないとのこと。ご本人も把握できない量の保存食料が、彼女の貯蔵食料室には眠っているのである。トマトジュースだけではなく、自家製ジャムや乾燥トマトのオイル漬け、きのこやパプリカのピクルス風などなど。これぞ家庭菜園の醍醐味といった趣の貯蔵室なのである。

トマトジュースを使って仕上げてくれたのは、ローマ風ポルペッテ。ローマ発祥のいわゆるミートボールである。かつては庶民料理の最たるものであったポルペッテ、実は残りもののボッリートを再利用するために作られたものだったそう。それが時代とともに簡素化されて、ひき肉を使用するようになったのだとか。

フレッシュオレガノとドライオレガノあっさりしているのにひとつ食べだしたらやめられない。老若男女がことごとく病み付きになるその理由は、隠し味のハーブにあるのかもしれない。

夏のおもてなしにぜひお試しあれ!

レポート:平賀 つぐみ(Tsugumi Hiraga)
日系航空会社にて国際線CAを12年、その間2年程フィレンツェに料理留学したのを機に料理の世界に目覚める。イタリア料理以外にも懐石料理、ヴェトナム料理を学ぶ。2008年に渡伊。コルドンブルーでの非常勤講師を経て、自宅でイタリア家庭料理教室を主宰。 現在はオンラインレッスンにて世界中の日本人の方々へレシピをお届け中。 Instagram(@roma_italy_tsugumi)

材料

ローマ風ポルペッテ (4~5人分)

・サンマルツァーノトマト1kg
・合挽肉600g
・卵2個
・パルミジャーノ・レッジャーノ40gすりおろしたもの
・パンの白い部分100g
・分葱5,6本
・ニンニク1片
・バジルの葉数枚
・オレガノ4,5本乾燥でも可
・オリーヴオイル大さじ2
・ペペロンチーノ適量
・塩小さじ2

本レシピで使用した『トマト・プレッサー』は赤くてかわいいイタリアキッチンツール「Pomo d'oro(ポモドーロ)」からお求めいただけます。

作り方

下ごしらえ

  1. 硬いパンは15分ほど水に浸けて柔らかくしたのち、外側の茶色の部分は取り除き、水気をしっかりと切りながら絞っておく。(カンパーニュのようなパンが入手できない場合には、耳を取り除いた食パンを細かく切って代用可能。)

作り方

  1. サンマルツァーノは上部の固くて白い部分は取り除き、残りは4等分に切る。(写真a 参照)
  2. 1をステンレス製の鍋に入れ、最初は中火で沸騰直前になったら弱火にし、完全に蓋をしない状態で40分煮込み、やわらかな状態になったら火を止める。(写真b,c 参照)
  3. トマトプレッサーで濾す。皮は3度濾すと濃縮なパッサータになる。(写真d 参照)
  4. ボウルに合挽肉と塩を入れ、分葱をカットしながら加えたら、下ごしらえしたパンの白い部分、卵とパルミジャーノ・レッジャーノも順に加える。(写真e,f,g 参照)
  5. 手でこねるようにしながらしっかりと混ぜ合わせたら、直径5cmほどに丸める。(写真h,i 参照)
  6. フライパンにオリーヴオイルとニンニク、ペペロンチーノを入れ弱火で点火し、ニンニクのよい香りがしてきたら、3のパッサータを加える。(写真j,k 参照)
  7. さらにオレガノ(今回はフレッシュと乾燥の両方)も加え、沸騰直前になったら、端から9のポルペッテをひとつずつ加える。(写真l,m 参照)
  8. ポルペッテの上に手でちぎったバジルを載せ弱火で40分、最初は蓋をしながら、後半は蓋を外して加熱する。(写真n 参照)
  9. パッサータが半量以下になってとろみがついたら火を止める。(写真o 参照)
  • a. サンマルツァーノを切る
  • b. 鍋に入れて煮込む
  • c.やわらな状態になった火を止めるら
  • d. トマトプレッサーで濾す
  • e. 合挽肉に塩と分葱を入れる
  • f. パンの白い部分を加える
  • g. 卵とパルミジャーノ・レッジャーを加える
  • h. しっかりとこねる
  • i. 直径5cmほどに丸める
  • j. オイルとニンニク、ペペロンチーノを入れる
  • k. 香りがしたらパッサータを加える
  • l. オレガノを加える
  • m. ポルペッテを加える
  • n. バジルを載せ加熱する
  • o. ソースが半量以下、とろみがついたら出来上がり

お料理ポイント

ポルペッタは途中で一度ひっくり返しますが、あとは触らずに放置してゆっくりじっくりと加熱します。最初から蓋を外して加熱するとすぐに水分が蒸発してしまうので、最初は蓋をしながら、後半から蓋をとり余計な水分を飛ばすように煮込みます。