遭遇率90%!イタリアでホエール&ドルフィン・ウォッチング?! 生物学者とクジラ・イルカの棲む海の“1日調査員”
イオニア海の秘密
イタリア半島の「土踏まず」をイオニア海といいます。イオニア海。みやびな名前に比べて海リゾートとしては若干、軽視されがちですが(当社比)、「脛」、「ふくらはぎ」との決定的な違いがありました。それは圧倒的に水深が深いこと。「土踏まず」(=ターラント湾)は、平均で4000m、最大5270mに達するイオニア海への玄関なんです。地図を眺めると内海っぽい「土踏まず」ですが、もう外洋と呼んでも差し支えないのではないでしょうか。差し支えますでしょうか。
そんなわけでターラント湾は、イタリア随一、いや世界を見ても有数の多種多様なイルカ・クジラの棲む楽園なのでした。驚くべきことに、そのなかにはマッコウクジラも含まれます。
史上最長のクジラの化石、マテーラで発見の謎
マテーラとなにか関係が?と思われるでしょうが笑、現時点で史上最長26mのクジラの化石(一部)が発見されているのが、何を隠そうマテーラ市のサン・ジュリア―ノ・ダム湖の湖畔なんです(『ナショナル・ジオグラフィック』より)。今では、マテーラから一番近い海岸でも48㎞先ですが、それがまさに「土踏まず」のイオニア海。イタリア半島が隆起するやいなやの太古の化石ですが、「にしても、なんでマテーラで?」とうすぼんやり思っていた疑問が氷解しました。
最新のカタマランボート・タラス号に乗り込んで「1日調査員」体験
そのターラント湾の海洋哺乳類の調査と保護を目的に、若き海洋生物学者たちのチームが情熱的に活動をしています。幸いなる哉、イタリア。調査船をホエール&ドルフィン・ウォッチングに解放することで、調査費用を持続的にペイしつつ、市民への啓発でも大成功しているんです。2020年分はすでに予約が取れない人気ぶりです。船長兼案内役の二人はともに、海洋生物学者。専門家の案内というのも、参加費が調査・保全活動の一助になるというのも嬉しいですよね。
研究者チームが双眼鏡で群れを探します。出航から50分近くが過ぎた頃、遠くに、近くに、右舷にも左舷にも、30~40頭ほどのハナゴンドウの群れが出現!
ターラント湾には、推定150頭ほどのハナゴンドウが定住しているとみられます。他に3種のイルカの定住も確認されていて、遭遇率が高い順に、1位スジイルカ、2位マイルカ、3位ハンドウイルカ、4位ハナゴンドウ。
この近さ!「タラス号」は、研究者が群れの位置などを目視するための6mの物見塔、静かなエンジンを搭載など、調査とホエール&ドルフィン・ウォッチングに特化した機能を備えています。
10ノット(時速18.5㎞)で進むボートなんか、おちゃのこさいさい。「わざと」スピードダウンして並走してみせたり、ボートの真下を泳いでみせたり、完全にわれわれが遊んでもらっています。
観察のあとは、大人も子どもも、研究者を囲んで海洋哺乳類と「我らが海」のお勉強。英語通訳スタッフもいます。
一定の好条件が揃うと、水中マイクを下ろして、音声データの収録が始まります。われわれは物音を立てないようにして協力。こんな作業に立ち会えるのも「一日調査員」体験ならではです。
ハナゴンドウは、①ホイッスル音(餌の情報交換)、②クークーという鳴き声、③クリック音の3つを発しています。チームは「声」の分析から、特に一頭のメスのハナゴンドウを特定、追跡調査しています。鳴き声にはなんと地域性(方言)があることも分かってきています。
しばらくはターラント湾熱にやられる、すばらしい体験でした。
JDC Jonian Dolphin Conservation
【ホエール・ドルフィン・ウォッチング「1日調査員」体験】
所要時間めやす:5時間(群れの位置、遭遇の有無、天候に大きく左右されます。)
費用(調査寄付金)
大人50€/人
4~11歳の子ども 25€/人
3歳以下 無料
クーラーボックスの飲み物のサービスを含む(水、ソフトドリンク各種、ロゼワイン)
※ボートは最新の「Taras号」と「Extraordinaria号」の2艘ありますが、定員があるため予約必須です。
※悪天候が予想される場合、前日に欠航の通知があります。