お料理説明・背景
2010年2月に発行した創刊号の特集がリグーリアだった。それから8年後の2018年に再びリグーリアの特集を組むことにして、ジェノヴァの地を踏んだ。
特集では何種類ものペスト・ジェノヴェーゼを取材した。同じ料理でもそれぞれに個性がでるもので、初めて食べる驚きのものから、ザ・定番までさまざまだった。そして当然ながら皆、自分のレシピがいちばんだと思っているのだ。
今回紹介するマンマ、タマラさんは、黒のコックコートをまとい、坊主頭にタトゥーというかなりファンキーな出立ちで迎えてくれた。でも、そんな彼女も3人の子供を育てているれっきとしたマンマ。父親のフラビオさんとアグリトゥリズモを運営し、料理からアグリの業務までこなすパワフルな女性だ。でも、取材中に時折見せる仕草が、見た目とはとてに裏腹にチャーミングで印象的だった。
ペスト・ジェノヴェーゼのレシピとして彼女が作ってくれたのは、ノンナ(おばあちゃん)から習ったというニョッキ。フワッと軟らかくモチっとしたニョッキと香りの強いペストがいいコンビネーション。以下は本誌vol.35に掲載した記事をここで紹介したい。
フラビオさんが父親から受け継いだ畑でバジルを作るようになって30年が過ぎた。この場所にも畑を持つようになったのは10年ほど前で、その隣にアグリができたのは4年前だ。アグリを始めた理由を聞くと、「わかるだろう、このお腹を見てくれよ。おいしいものが好きだからさ」と笑った。アグリの建物の横に広がるバジル畑を管理しているのは、基本的にはフラビオさん一人。ビニールハウスで育てるよりも香りが強くなるから、露地栽培することがこだわりだ。6月末から9月にかけて同じ苗から6回収穫ができ、収穫時には茎の軟らかい部分までを刈り取って契約先のペスト工場へ運んでいる。土の状況が安定しないことが悩みで、できる限り薬剤を使わずに自然な状態で育て続けたいと試行錯誤している。
一方、最初は少し緊張気味だった娘のタマラさんは、料理から部屋掃除、事務仕事までアグリの中の仕事はなんでもやっているのだそう。「子供が3人もいるし大変だけれど充実しているわ。父には感謝ね」と言いながら表情がやわらいだ。「自分のやりたいことができて、娘とも一緒にいられるなんて、これ以上の幸せはないよ」その言葉を聞いて、タマラさんが作ってくれたペストのニョッキがよりおいしく感じられたのは言うまでもない 。
文:児玉魔由子 写真:遠藤素子
ジェノヴァの夏
家庭でもレストランでも、至る所で、あのバジリコ味のペストを味わい尽くす。さらには誇り高きリーグレの生み出す、選りすぐりの名産品の数々を取材。さあ、リグーリア、ジェノヴァの旅へどうぞ!https://italiazuki.com/?p=30552
材料
ペスト・ジェノヴェーゼ(作りやすい量)
〈ペスト・ジェノヴェーゼ〉 | ||
---|---|---|
・松の実 | 30~40 | |
・ニンニク | 1片 | |
・バジリコ | 3つかみ程度 | |
・粒塩 | 1つまみ | |
・パルミジャーノ・レッジャーノ | 100g | |
・ペコリーノ | 100g | |
・エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル | 大2 | できればタジャスカ種のオイル |
〈ニョッキ〉 | 8人分 | |
・ジャガイモ | 1kg | |
・セモリナ粉 | 300g | |
・卵 | 1個 | |
・塩 | 少々 |
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作り方
ペスト・ジェノヴェーゼを作る
- 松の実とニンニクを油分が出るまでよくすり潰す。(写真a 参照)
- 1にバジリコと粗塩を加えてさらにすり潰す。(写真b,c 参照)
- パルミジャーノ・レッジャーノとペコリーノを加えすり潰しながら、エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイルを加えて滑らかになれば出来上がり。(写真d,e 参照)
ニョッキの作り方
- ゆでたジャガイモを熱いうちに潰す。
- 1にセモリナ粉を加えて粉っぽさがなくなるまで混ぜる(こねない)。(写真f 参照)
- 2に卵と塩を加えよくこねる。
- 3をだいたい4等分に分けたら棒状に丸めて伸ばす。(写真g 参照)
- 一口大に切ってバットに広げておく。(写真h,i 参照)